Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
柩木
2024-11-13 23:03:51
5320文字
Public
崩壊:スターレイル
Clear cache
丹穹|寂しさを舐め合おう
丹穹Webオンリー「もっと!恋の探求!一意専心」書き下ろし作品。
丹穹が、お互いを恋しく思った時に見せる行動。
1
2
【穹が丹恒を恋しく思う時】
穹の姿が消えていることに気付いたのは、作業がひと段落した時だった。
依頼がないから資料室に居座らせて欲しいという珍しい穹の願いを断る理由もなく。ひと区切りつくまではあまり相手は出来そうにないと一応宣言した上でそれぞれの時間を過ごしていた。
資料室に穹がいる時は彼が小休止のタイミングを計ってくれる。作業に没頭するあまり、度々時間感覚を狂わせている丹恒が寝食を忘れないよう声を掛けてくれたり、その延長で背後から抱きついて来たりするのだが、今回はそれが全くなかった。つまり丹恒に気付かれないよう何も言わずに出ていったのだ。今更ではあるが、それが分かった途端に罪悪感が込み上げて来て、丹恒は片付けもそこそこに資料室を後にした。
常日頃から無遠慮に絡んでくる穹が何を言うでもなく姿を消した時というのは、だいたい一人で星を追いかけている。そしてこういう時の穹はスマホを見ていない上に気が付かない
――
あえて無視しているのかもしれないが
――
事が殆どなので、丹恒は心当たりがある場所を探して歩くことになる。アンカーを使えば過去降り立った星にも行動範囲が及ぶものの、経験上、丹恒には穹が列車の中にいるという確信があった。
適当に歩き回り、道中すれ違ったパムやなのか、姫子やヴェルトにも穹の姿を見なかったか尋ねた。すると、ラウンジで見かけた。廊下ですれ違った。食堂で窓の外を眺めていた等と、皆がバラバラの場所をあげる。どうやら穹はあちこち歩き回っているらしい。
とりあえず、一番最新の目撃情報である食堂へ向かう事に決めた。食事の時間から外れる今なら、食堂車を訪れる人は少ないだろう。一人になるには適切かもしれない。
「は、
――
」
他車両と食堂車を隔てる扉を開けた瞬間、目的の後ろ姿を見つけ、安堵の息が漏れた。
白いテーブルクロスが掛けられた四人掛けのテーブル席。列車の内装に合うよう、赤を基調としたアンティーク風の椅子に穹は座っていた。背を向けている為表情は見えないが、彼は窓の外に視線を向けつつ、手は空中にある何かを掴もうと動く。丹恒の目には何もないように見えても、穹の視界においてはそこに星があるらしい。
突如現れて瞬くのに、手を伸ばしても掴むことは出来ない。掴んだと思って手を開いてもそこには何もないのである。そういう性質の星なのだと以前話してくれた。
いつまでも扉を塞いでいてはいけないと、さほどない穹との距離を徐々に詰めていく。直ぐ側まで近付いたつもりなのだが、穹は丹恒に気が付かない。ならば声をかけるか。いやしかし何と言って話しかければ。
普段じゃ迷わないような事に迷って、穹が座るテーブルに何も置かれていない事に気付いた。
「
……
何か飲むか」
名を呼ぶでもなく唐突に背後から話しかけたからか、穹は弾かれたように振り向くと啞然とした顔で丹恒を見つめた。ここにいるなんてありえない。そんな、まるで幽霊の類いでも見てしまったような顔をしている。
「あ、作業終わった、のか? もっと掛かると思ってたけど」
「終わらせてしまいたいところまでは済ませた。ただ、集中し過ぎてお前が資料室を出て行ったのに気付かなかったが。悪かったな」
「え、あ。いや、俺も声かけなかったし!」
しどろもどろになっている穹を見ているのは面白くもあるが、若干可哀想にもなって来たので再度何か飲むかと尋ねた。すると「えっと、丹恒が飲みたいのを俺も飲む」という答えだったので、コーヒーで構わないかと一応了承を取る。趣向品と呼ばれるものに好ましさを覚えた経験が乏しいが故の確認だった。今もただ飲み慣れているという理由だけでコーヒーを選んだが、もしこれで穹の気分でなかったら
――
と思ったものの、コクコクと頷いた穹に一人安堵する。
列車でドリンクを用意するのは簡単だ。サーバーの下にカップを置いて、ボタンを押せばあとは機械が勝手に豆を挽いて淹れてくれる。列車での旅をより快適にしようと努力を欠かさないパムには感謝だ。
最早星穹列車の名物になりつつある姫子のコーヒーとは違った、万人受けするであろうごくごく一般的な味わいのそれを二人分。白いカップに注いで席に戻った。
「ミルクは一つ、角砂糖は二つ。だったか」
「うん。ありがとう」
「同席しても?」
「当たり前じゃん」
本人に許可を取って穹の隣に腰を下ろした。穹の前には色が薄くなったコーヒーを置いて、自分の前には黒いコーヒーを置く。湯気が立つ黒い水面を傾けて一口含めば、その温かさに気分が少し穏やかになった。
だが、隣からは物言いたげな視線が刺さる。横目で見た穹は怪訝そうに丹恒をじっと見つめていた。
「正面に座った方が話しやすくない?」
カウンター席ならまだしも、四人掛けのテーブル席で隣り合うように座るのは確かに珍しいかもしれない。会話が目的なら対面に座るのが一般的だろう。
しかし丹恒には会話以外の目的があった。
「俺がここに座っていれば何も言わずにどこかへ行くなんて出来ないだろう。だからここでいい」
穹が席を離れたい時、丹恒に声をかけなければ絶対に動けない位置取りを意識したのだ。だから今は隣に座るのが正しい。
「丹恒
……
。黙って出ていったの、実は結構根に持ってるだろ」
「そんな事はない」
「本当に?」
寂しい時程、穹は一人になりたがる。丹恒自身も騒がしい場所は得意と言えないが、穹のそれとはまた違うような気がするのだ。放っておけばもうここには帰ってこないような気がして、無理矢理にでも隣を埋めてしまいたくなる。
丹恒の思惑を聞いた穹は何も言わずに椅子をずらし、元々そんなになかった隙間を更に埋めた。二人掛けのソファに並んで座るよりも体を密着させてくる。
「まぁいいや。迎えに来てくれる俺の彼氏めっちゃ優しい、ってことで」
「
……
どうだろうな」
「せっかく褒めたんだから意味深なセリフはやめよう」
穹がどこにも行かないよう外堀を埋める恋人が果たして優しいと言えるだろうか。
そんな疑問を持てる程度に、自分はまだ理性的なつもりである。
1
2
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内