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椎那わたる
2024-11-11 00:28:37
4115文字
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魏嬰は押し掛け黒狐
ノリと勢いと思い付きで書いてみました。Pixivの夏休み創作チャレンジに参加していた作品です。
最後のお題はみんな大好きかもしれない(?)現代AU忘羨です!!
幼い頃の夏の思い出。それは成人した後も忘れることのない、不思議な出来事だったりするもの。
偏頭痛持ちの藍忘機の前に現れたのは、ケモ耳の生えたあやしい男。黒狐の魏嬰と名乗る彼の正体は一体…!
続きはこちらで連載していきます(Pixiv版は1話のみ残し削除予定です)
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2
カラコロと下駄を鳴らし、隣で歩いているひとの横顔を見上げる。
黒い着物と長い黒髪、紅い髪紐が風に揺れている。側頭部に狐面をななめに被り、口元に笑みを湛えたその人の顔はあまりにも綺麗だった。
「
…
うぇいいん」
「ん?」
「これから何処に向かうの?」
「そうだなぁ
…
きっと良い場所だよ」
にこやかに笑うその顔は、邪気など一切感じないもので。子供の自分にも分かるくらい、その人は『いいおばけ』なのだと感じた
笑顔の後、続いた言葉は何と言っているのか分からない。次第に霞みがかって、私の意識から消えて行った。
× × ×
「
……
」
呆然と見つめているのは、あの男の顔ではなく天井だった。
藍忘機は側頭部に痛みを感じつつも、幼い頃に体験した出来事を思い返す。時折夢にまで出てきて、彼の頭痛のタネになっている。あの男が何者かは未だに分からないが、「うぇいいん」と言う響きの名前を呼んでいたのは確かだった。
「うぇいいん
…
君は一体、何者なんだ」
その日の出来事は誰に言っても信用されず、兄でさえ「一人で外に出てはいけないよ」と咎めるだけだった。12歳の夏に起きて以来、20歳を越えた今でもなお鮮明に憶えている。
確かあの日も今日と同じく、朝から蒸し暑い夏の日だった。偏頭痛持ちの藍忘機は朝が弱く、起床時間は早いがその後暫くぼぅっとしている。体内エンジンを掛けるのに時間が掛かってしまう為、布団から出るのは起床して暫く経過した後だ。
(あの日、私たちは何処に向かっていたのだろう)
せっかくの休日ではあるが、今日もいつもと同じように早起きしてぼんやりと数十分そのまま座り、頭痛が引いてきた頃合いでようやく立ち上がる。仕事のない日はより動きが緩慢になり、ゆっくりとした動きのまま洗面台に行き顔を洗い口を濯ぎ、キッチンに向かった。
「あ。おはよう、藍湛!」
「
……
」
キッチンのダイニングテーブルに腰かけ、こちらを見ているひとりの男。
頭部から狐らしき黒いケモ耳、臀部からはふさふさの黒い尻尾が生えて、さも当然であるかのように藍忘機へと挨拶をした。紅い縁取りの刺繍を施された黒い道服に身を包み、黒髪を頭頂部でポニーテールにした20代前半と思しき人物だ。
今時珍しい古風な装いに、今日は10月31日だろうか...と一瞬首を傾げる。そもそも何故オートロック式のマンションの一室に侵入できたのであろうか。
「あの
…
どちらさまでしょうか
…
?」
「つれないなぁ!俺だよ俺!うぇいいんだよ!」
新手の直下型オレオレ詐欺かと思いつつ、そう名乗った狐男の向かいの椅子に座る。今は難しく考えるのをやめた。
「
…
うぇいいん
……
」
「そう!その顔は、もしかして憶えてない
…
?」
「
……
」
その名前を今さっきまで呟いていたのだから、忘れる筈はない。しかしあの日の彼に、狐耳と尻尾は生えてはいなかった筈だ。
「
…
私の知っているうぇいいんは
…
狐面と、妖艶な雰囲気の
…
」
「あぁ、それそれ。それも俺だよ」
「???」
頭の周りに「?」を浮かべる藍忘機と、にこにこ笑い続けるうぇいいん、こと狐男の魏無羨。
ふたりの奇妙な再会は、その後に起きる奇妙な出来事のはじまりに過ぎなかった。
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