amarey
2024-11-08 05:10:13
4274文字
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🐈🐟🥼

TKさんへ。ステ博とルメ博のはぴはぴサンドイッチしたかったんですが、力不足ですみません。

ドクタードクター ステインレスは焦っていた。
「う、うそだろぉ……
「それはこっちが言いたいくらいだよ」
 目の前でロックロックは呆れた溜息を吐き、クロージャに至っては愉快そうにけらけら笑っている。
「え? 知らなかったの? そんなこと知らないオペレーターがこの艦ロドスにいることが驚きだよ」
 目の前で頭を抱えて悶えるステインレスはクロージャのそんな煽りは耳に入らない。入る余裕がない。だってそんなことに気を配る時間は既にない。
「とは言え、あたしもさっき知ったんだけどね。今日ドクターに遊んでもらった子が話してたの聞いたよ」
「プレゼントあげたって言ってたねぇ」
 俺だってあげたいプレゼントは幾つもあるし、その中からとっておきをあげるつもりだ!
 その場にいない子供に対抗するようで、それこそ子供じみた感情が渦巻き、話に割り込みたくて仕方なかった。しかしはたして実現できるのだろうかと考えて、ステインレスは黙り込んだ。
 時計の針を見つめる。どれだけ見つめてもとっくに暮れた日は戻らないし、明日までの猶予も増えない。
 そしてこの事実をいま知った自分と、もう一人が知っているのか、知っていて黙っていたのか。そのことをひとまずは明らかにしなくてはいけない。
 しかし知らなかったと告げたとき『知らなかったんですか……』と驚愕と落胆、そして哀れみをまっすぐに向けられてしまいそうで少しツライ。
 
 明日がドクター恋人の誕生日だなんて重要事項、どうしていまの今まで知り得なかったのだろうか。



 ルーメンは悩んでいた。
 今日が終わってしまう。明日が来てしまう。いや、明日が来ることは何よりも喜ばしく、そして特別な日であることもルーメンは知っている。
 知ってしまっている、が正直な認識であり、それにより苦しみ、気が付けば医務室に篭ったまま今日が終わろうとしている。
 
 明日はドクター恋人の誕生日だと言うのに、どうして何もできずにいるんだろう。
 
 鬱々としているくらいなら、今すぐに執務室へと駆け込んでしまえば良い。きっと困ったことにまだ灯りは着いているだろう。
 そんなことを考えていると廊下の奥から慌ただしく駆けてくるフェリーンの男がいた。
 声と腕を上げてルーメンを呼ぶのは、同じ人を同じように愛しているもう一人の青年だった。
 渡りたい河川に助けとして現れた船であり、頼みの綱でもあるとルーメンは内心安堵の息を吐いた。ステインレスは目の前で立ち止まるとどちらも口を開いた。
「あのさ」
「あの」
「「明日」」
 ぴたり、と互いに同じ言葉を呟き、そして互いに気不味そうに見つめ合ってしまった。
 困ったように笑い、ステインレスが先行を取る。
「が、ドクターの誕生日って、俺さっき知ったんだけど……知ってた?」
……どうしてあなたは知らないんですかぁ〜」
 フェリーンの言葉にルーメンは思わず泣きそうな顔をしてしまった。
===
 ステインレスもルーメンもドクターが好きだ。
「んで? 偶然カルテで誕生日を見ちゃったから、申し訳ないって?」
「はい……ドクターから教えてもらったわけではない事なので、それを僕が知ってることにするのは良くないと思ったんです……
「まぁ、気持ちはわかんなくはないけどよ……確認するタイミングはありそじゃね?」
 そしてお互いの抱いてる感情をお互いに、完全とは言い難くも理解はしたいと思っている。
 ドクターがそうなのだから。
「あなたこそ今までドクターに聞く機会はあったんじゃないですか?」
……だよなぁ!」
 ルーメンもステインレスも状況からすると相手を出し抜くことはできたらしい。但しその行為を良しとするかと言えば、自分自身を許しはしないだろう。
 医務室にて始まった反省会はひと通り落ち着き、次の議題に移った。
 すなわち、あと少しの時間の後に訪れるドクターの誕生日について。まだ明日一日があるとは言え現状は何も用意ができていない。
「ならせめて……一番乗りに、気持ちを込めて誕生日を祝いたくありませんか?」
「ああ、そうだよな。でもな……
 ルーメンのささやかな想いでそう提案すると、ステインレスは苦々しい顔を返す。
「もう祝ったヤツがいるんだよ! 今日! プレゼント付きで!」
「今日!? プレゼントまで!? そんな……
 霹靂が落ちたかのように衝撃を受けてルーメンは震えた。負けたくないとステインレスは立ち上がり、二人は励まし合いながら執務室へと向かって行った。



 ドクターはちょっと不貞腐れていた。
 でもそうだったのだと理解したのは執務室の机から離れて扉が開いた直後だった。
 特に何も無い日。いつも通りに仕事をこなしていただけ。気付けばそろそろ日付が変わりそうなだけ。
 ただ少し、寂しい気持ちが胸の奥に滲んでいたのはどうしてなのか、わかっていた。
 例えば仕事で悩んでいる時に「根を詰めすぎないでくださいね」と心配しながら優しく叱ってくれるエーギルの青年であったり。
 例えば残業をしているときに「腹減らね?」と夜食を持ってきて一緒に食べながら気遣ってくれるフェリーンの青年であったり。
 いつも来れるわけじゃないとは理解している。来てくれたら嬉しい。でも来ないと寂しさを感じる程度に二人の存在が心を占めているようだった。
 こなすべき仕事の目処をつけ、仕方なく今日を終えようと執務室を出たとき、ドクターは扉の両隣に一人ずつ、膝を抱えて座る青年達を見た。いつからかわからないが座り込み、ドクターがこの扉を開ける時を待っていたように見える。
 聞きたいことは色々あったが、唇から滑り落ちたの疑問ではなかった。
……ふふっ」
「なっ」
「どうしていきなり笑うんですか……?」
 不本意そうにフェイストは声を上げ、ジョディも眉を下げて問う。
「だって……
 寂しさが何処かへ飛んでいく。不貞腐れてちくちく尖っていた心の棘は一気に抜け落ちてしまったらしい。
「こんなところで仲良く膝を抱えてるってことは、誰のことを考えて困っているのか、わかってしまうからね」