麻さばカン
2024-10-24 22:07:21
1312文字
Public DARK SOULS/二次創作
 

それは毒か、栄光か

ラレンティウスの独白形式、不死とほのぼの友情短編小説。

 火継ぎの祭祀場にて、しばらくぶりに顔を見せた彼は亡者と化していた。彼は大体いつもこんな感じだ。最初の内こそ心配したが、亡者なのは顔だけであり自我をしっかり残しているので、逆にいつも通りだと今では安心している。
 今日はどこか疲れを感じさせるが、久しぶりの再会からか、隣に座り込んで話をしてくれた。
 聞けば、時を超えて古の国を探索していたという。にわかには信じられないが、時空が歪んでいるという云われのロードランにおいて、なにも不思議な事ではない。なにより、不思議を体現している彼の話とあらば、疑いようもないだろう。

 攫われた姫、喋るキノコ、深い森。そして「クックック笑いの男は怪しいから気をつけろ」という彼の忠告に、そこはかとない苦労を感じ取り、思わず笑みを零す。
 柔らかな陽射しが降り注ぎ、木々の葉をそよそよと風が揺らしていく。穏やかな時間が流れていた。

 そういえばと、彼は懐から一輪の花を取り出した。橙色の小さな花だ。森の中で群生していたというそれを、自分にくれるという。思わぬ贈り物に驚いたが、感謝を伝え受け取ると、花を掲げて眺めてみる。
 最後に花を見たのはいつだっただろうか。ふと大沼に咲いていた花を思い出す。

 鮮やかな青紫で、まるで夜明け前の暗い空の色のような……

 彼に話すと是非見てみたいと言ってくれたのだが、眺めるだけに留めておいた方がいいこと、強力な毒性ゆえ触るのは危険だということを伝える。少し残念そうにしながらも、苔を食べればいけるんじゃあないかなどと思案する彼の好奇心から眩さを覚える。
 俺には、そんな発想もなかったのだ。自ら毒に手を触れるなど、とても恐ろしい。不死となった今も、それは変わらないのだ。
 まだ見ぬ呪術を求め進んでいたはずの自分は、今やただ、祭祀場で彼の帰りを待ち侘びてしまうだけで……。あの花の毒を、一度も知ることもなく、俺は死んでゆくのだろう。

 黙りこんでしまった俺に、彼は慌てて「忠告通り見るだけにする」と謝罪してくれた。どうやら怒っていると思われたらしい。
 申し訳ないのはこちらの方だ、自らの悩みに耽っていたのだから。

「いや、あんたはどこまでも眩しいんだなって思ってさ」

 彼は首を傾げる。俺は構わずに笑いかけると、ひとつ伸びをした。燻っていた火が、少しばかり燃え上がるのを感じる。
 俺も、往かなくては。更なる呪術を求めて、あの毒の先へ。

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