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Hizuki
2018-07-29 22:53:05
13201文字
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夏の思い出に熱を添えて
【グラブル】四騎士アイドル現パロ。ラジオの公開録音に行くことになったグランの話。ジクグラまではいかないけどちょっとジークさんからのサービスあり。基本都合のいい展開しかない。何でも食べられる人向け。とにかく長い。
1
2
…
毎度のことではあるけれど、楽しい時間が過ぎるのは早い。
アンコールも、その最後の曲も全てが終わってしまった。
再度公開録音の放送日の案内と、今日の感想を全員が1人ずつ話して。
「それではラジオで、またどこかでお会いしましょう!今日のお相手はドラゴンナイツのランスロットと!」
「ジークフリートと」
「パーシヴァルと」
「ヴェインがお送りしましたー!みんな、またなー!!」
全員がステージの袖にはけても拍手は鳴り止まない。
少し間を開けてステージの照明も弱くなり、モニターにはドラゴンナイツのエンブレムと『本日のイベントは終了いたしました』の文字。
そしてイベント終了のお決まりのアナウンスが流れる。
『パーシヴァルだ。今日は楽しんでもらえただろうか。皆の心に残るものであれば幸いだ』
終演のアナウンスは毎度メンバーの誰かによるものなのだけど、今日はパーシヴァルさんのようで。
「パー様!」とファンの歓声が上がる。
『忘れ物に注意するように。そして気をつけて帰ってくれ』
『パーさんやっさしぃ!』
『うるさいぞ駄犬』
茶化すように混ざるヴェインさんにパーシヴァルさんが一喝。
その様にまた笑いが溢れ、外側から徐々に人の波が動き出す。
とはいえ外の人はまだ多く、観覧席側の人達はまだもうしばらく動けなさそうにない。
一度腰を下ろして休憩している人、あるいは周りの人と今日の興奮を共有している人と様々だった。
「楽しかった!あ、でもグランはまだこれからですもんね!」
同じように隣で一息ついていたルリアが嬉しそうに言った。
大事に鞄の中にしまっていたさっきの封筒を取り出した。
そう、これからなのだ。
「う、うん
…
」
「人の流れが落ち着いたら、出てすぐのところの広場で待ってます!」
「い、行ってくる
…
!」
イベント終演後に来るようにと指示されたテントに向かうと、もう既にスタッフの人が待機していていた。
首から下げているパスを確認され、「当選者の方ですね、どうぞ」と迎えられる。
「お、来た来た!こんばんは!」
「今日は来てくれてありがとうな。改めておめでとう!」
中に通されて早々にヴェインさんとランスロットさんに出迎えられた。
…
本物が目の前にいる。
かわいい、と惚けていたところでハッと我に返った。
失礼のないようにしなくちゃ、と慌てて頭を下げる。
「こ、こんばんは!よろしくお願いします!」
「いきなり取って食ったりはしない。安心しろ」
「ファンと話ができるいい機会だ。こちらこそよろしく頼む」
続けて聞こえてきた声に顔を上げると、そこにはパーシヴァルさんとジークフリートさんもそこにいて。
あっ無理カッコいい本当カッコいい。
イケメンに囲まれてドキドキするなんて女の子だけだと思っていたけど、そんなことはないと身をもって思い知らされる。
「む、先程よりも顔が硬いな。もっと気を抜いていい」
僕の顔を見たジークフリートさんがそう言った。
この4人を目の前にして緊張しない人が一体どれだけいるというのだろう。
どう考えても緊張しない方がおかしい。
「それをお前が言うか、ジークフリート」
「ジークフリートさんも結構撮影の時、顔硬いよなー?カッコいいけどさぁ」
「確かにカメラ回ってない時の方がいい顔してるってことありますよね。ほら今とか」
「そうか?」
「そうそう」
パーシヴァルさんの言葉に同意する2人を見ながら、言われてみればそうかもとちょっと納得する。
ライブブルーレイの特典映像にあった控え室での様子や、ミュージックビデオのメイキング映像を見るに、自然体というか、別のカッコよさがあるような気がした。
もちろん、実際のステージ上の姿や完成された映像もカッコいいことに変わりはないのだけど。
「
…
ちょっと、分かるかも」
「ほらやっぱりー!」
「あっ!」
思わずぽろりと零れた言葉をヴェインさんに拾われる。
「やっぱり微妙な違いとか推しだと分かるよな?」
それに食いついてきたのはランスロットさん。
ランスロットさん自身がジークフリートさん推しであることはファンの誰もが知っている。
「は、はい。何となく、ですけど
…
」
「お、ジークフリートさん推しかぁ」
「さっきのアンケートに書いてあった」
あのアンケート、メンバーに見られてたんだ。
変なことは書いた覚えがないから大丈夫なはず
…
。
緊張で文字が歪んで読みにくいことを除けば。
「だそうだが、ジークフリート?」
パーシヴァルさんが同意を求めると、ふうむ、とジークフリートさんが唸る。
「でもどのジークフリートさんもカッコよくて好きです
…
」
あっ言ってしまった
…
。
でも本当のことだから仕方ない。
「ありがとう。ファンからどのように見られているのかというのは参考になる。硬いというのなら善処しよう」
さっきステージの下で封筒を受け取った時とは違う微笑みを向けられて、また心臓がぎゅっとなる。
多分同じことを思っているジークフリートさん推しの人は多い。
自然体の露出が増えたらそれこそ倒れる人が出るんじゃないだろうかと、少しばかり心配になる。
「じゃ、写真撮りますか!今日のメイン!」
ヴェインさんがパンと手を打った。
僕がいる場所が広く開けられていたのはそのためだ。
荷物を側のテーブルに置かせてもらっている間に4人が打ち合わせを始める。
「ジークフリートは前に」
「それは当然だろ」
「分かった」
「ランちゃんも前で、パーさんと俺が後ろだな。はい主役はここ!」
あっという間に並びが決まったようで、周りを4人に囲まれた。
左側にヴェインさんとランスロットさん、そして右側にパーシヴァルさんとジークフリートさん。
カメラに収まるようにしなきゃいけないから自然と距離が詰められていく。
今の距離でも十分近いのにどうやら収まりきらないようで、カメラを持ったスタッフさんからもう少し近付くようにと指示を出される。
「ほらほら笑って!」
イベント会場の写真撮影会ではよくあるカメラ。
光るフラッシュ、切られるシャッター。
すぐにカメラから出てきた写真はまだ白い。
「やっぱ5人で写るにはポラロイドじゃちょっと小さいよなぁ」
「ランちゃんの携帯ってカメラいいやつじゃなかったっけ?」
「あ、そうだ。俺の携帯そこにあるんで、もう1枚だけ撮ってもらっても?」
ランスロットさんの一言でもう1枚写真を撮り、近すぎる距離にドキドキしっ放しの心臓を落ち着かせるために深呼吸をして。
ようやく落ち着いてきたと思ったら今度はパーシヴァルさんに声をかけられる。
「サインするからもう少しだけ時間をもらえるか」
「はっ、はい!」
奥に寄せられたテーブルでペンを選んでいるランスロットさんとヴェインさんの姿が目に入った。
2人は幼馴染なのだという。
ああ、本当に仲がいいんだなぁとしみじみしていると、いつの間にか隣にはジークフリートさんが立っていた。
また心臓が騒がしくなる。
「そのポスターは?」
撮影の前にテーブルに置いた僕の荷物を指してジークフリートさんが尋ねた。
「あ、会場の物販で
…
CD持ってるけどポスター付いてくるって言うから
…
」
イベントの物販で売られているのは何もグッズだけではない。
もちろん過去に発売されたCDや映像ソフトもラインナップに含まれている。
そういう場合、大抵何かしらイベント限定特典が付いてくるというパターンが多い。
「そうか。あまりそういう手段で数を上げるというのは俺個人としては好ましくないのだが
…
すまない。この場で話すことではなかったな」
ジークフリートさんが表情を僅かに曇らせる。
詳しいことは分からないけれど、売れているという数字がなければ次の活動に繋がらないというのは分かっている。
だからこそ僕も手が出せる範囲でドラゴンナイツ関連は買い集めているわけで。
実際ドラゴンナイツは売れているし、今のところ問題はないのだと思う。
例え既に持っていたとしても特典が目を引くものであれば手を出してしまうのがファン心理だ。
ダブったものは保存用にすればいい。
「ファンとしてはすごく嬉しいですよ?もらえるのメンバーソロのポスターだったし
…
」
特に今回はこの場で買っている人が多かった。
それもそのはず、大抵特典で付けられる販促用のポスターは4人の集合柄であることが多い。
にも関わらず、今回の特典で付けられていたのは各メンバーソロのポスターだった。
しかも恐らくファン内人気1位のThe Dragon Knightsの衣装となれば、欲しい人はそれはもう数多いことだろう。
確か一部のショップの店頭に貼られていたもので、そのポスターの前には常時人だかりができていたのを覚えている。
バラの花を手に佇む姿はとても優雅で。
「誰のを?」
「じ、ジークフリートさんです
…
」
推しだという話はしているし、誰のものかというのは気付かれているような気がする。
僕の口から出た名前に、ジークフリートさんが口元を緩ませた。
「ふむ
…
開けても構わないか?」
「ど、どうぞ
…
?」
ポスターを開けて一体何をしようというのか。
意図が分からないまま、ジークフリートさんはするりと袋からポスターを抜いた。
「ランスロット、ペンはあるか?」
「ありますよ
…
ってこれ今日の物販に付けてたポスターじゃ?」
いつの間にか側に来ていたランスロットさんに確認しながら、ジークフリートさんはテーブルの上にポスターを広げる。
胸元が崩された黒の正装、バラの花束を手に立つジークフリートさんの姿。
金色の縁飾りを施された白いコートがなびいている。
「ああ、わざわざ買ってくれたそうでな」
「そうなのか、ありがとう!」
そう言ってランスロットさんが差し出したペンの束から金色のペンを取って、キャップを外した。
筒状に戻ろうとするポスターをランスロットさんが押さえる。
ここまで来れば何が起きるのか考えるまでもなかった。
「名はグラン、だったな」
「は、はい!」
黒の背景に金色の文字が書き加えられていく。
僕の名前と今日の日付、そしてジークフリートさんの名前。
「不要な話もしてしまったからな。少しばかり『さーびす』だ」
「あ、ありがとうございます
…
!!」
「他の者には内緒だぞ?」
人差し指を立てて唇に添える。
悪戯っぽくそう言われ、思わずくらっと倒れそうになった。
会場で付けられていた特典が唯一無二のものになる。
さすがにこれはこのまま貼るなんてできないし、まずは飾るための額を買わなければ。
…
このサイズだと一体いくらするんだろう。
「このジークフリートさん格好いいんだよなぁ!俺もこのポスター欲しい
…
」
「本当ランちゃんはジークフリートさん好きだよなぁ」
事務所に余り分ないかな、と呟いたのを聞き逃さなかった。
確か物販分は4人とも全部なくなっていたような気がする。
「ジークフリート、写真のサインあとお前だけだぞ」
「ああ」
同じ金色のペンでサインをもうひとつ。
浴衣姿の4人と写る僕、そしてサインが書かれた写真がそこにあった。
ペンのインクを乾かしてから透明な袋に入れて、ジークフリートさんから手渡される。
「これからも応援してくれると嬉しい」
「い、一生付いていきます
…
!」
これだけのことをしてもらって離れる理由なんかない。
みんな素敵な人で、元から大好きだったけど、もっと好きになった。
「ふ、随分大げさだが、そこまで言ってもらえるのはやはり嬉しいものだ」
「俺達はファンの応援あってこそ、だからな!」
パーシヴァルさんとヴェインさんが続く。
「家に帰るまでがイベントだぞ。帰り道、気をつけてな」
「はい!今年の夏一番の思い出です
…
! 本当にありがとうございました!!」
ランスロットさんにも念を押される。
最後に全員と握手をしてテントを後にした。
終演後の物販に並んでいる人がまだそれなりにはいたけれど、人の数は大分減っていた。
撤収作業も始まっていて、邪魔にならない場所を通ってルリアが待つ場所に向かった。
僕に気付いたルリアがこっちに向かって手を振る。
「ルリア、お待たせ」
「おかえりなさい、グラン!生ドラゴンナイツどうでした?」
ルリアに感想を聞かれ、ついさっきまでのことを思い返す。
直接話して、一緒に写真を撮ってもらって。
「すっごくカッコよかった
…
倒れるかと思った
…
」
「ふふ、よかったですね!写真、見せてもらってもいいですか?」
震える手で受け取った写真を渡すと、ルリアが「はわ
…
カッコイイです
…
」と感嘆の声を漏らす。
「まさかグランが当たるとは思いませんでした
…
」
「僕だって思ってなかったよ
…
」
もう今年の夏は運を使い切った気がする。
下手に出歩くと今日の反動を受けてしまうんじゃないだろうか。
新学期まで約1ヶ月、宿題をきっちり終わらせて、バイト以外はできる限り大人しくしていようと心に決めた。
「誘ってくれて本当にありがとう
…
。近いうちにちゃんとお礼させてね。何がいいか考えておいて」
「え?大丈夫ですよ!今日出店で色々買ってもらっちゃいましたし」
「あれくらいじゃ今日のお礼には足りないよ」
「うー
…
分かりました、考えておきます!じゃあ帰りましょうか!」
イベントの感想を話しながら、ルリアと並んで帰路に着く。
思い出の証はしっかりと僕の手元に残り、それらを見る度に今日のことを思い出してしまってしばらくは落ち着けそうにない。
こうして今年の夏一番のイベントが無事に終わった。
そして数日後。
バイトから帰ると、珍しくポストに手紙が入っていた。
どこからかと封筒を見れば、記されていたのはドラゴンナイツのラジオを放送している局の名前。
僕の住所をどこで、と考えたけれど、確かアンケートに記入欄があったことを思い出した。
部屋に戻って封を開けると中に入っていたのは写真と便箋。
折り畳まれていた便箋を開けば、書かれていた名前に目を疑った。
手紙の差出人は何とランスロットさんで、要約すると、この間撮った写真のお裾分け、ということらしい。
そういえばランスロットさん、自分の携帯で撮ってもらっていたなと思い出す。
大事に飾ってある写真とほとんど同じではあるものの、より綺麗で大きな写真。
とはいえ、まさか印刷して送ってもらえるなんて誰が思うだろう。
ちゃんとお礼の手紙を出さなくちゃと、テーブルに置いた写真を見ながら考える。
写真を手に取った瞬間、何かが落ちた。
どうやら写真は2枚あったらしい。
2枚あることに首を傾げながら、裏向きにフローリングに落ちた写真を拾い上げた。
瞬間、写っていたものに思わず悲鳴を上げる。
「ひっ!?」
…
そこに写っていたのは、口元を緩めたジークフリートさんとガチガチに緊張して顔を赤くしている僕で。
しかも撮られている角度からしてヴェインさんとパーシヴァルさんが写真にサインを書いている時くらいに違いない。
いつの間にこんな写真撮ってたんだあの人!!
一瞬で沸騰したかのように顔が熱くなる。
恥ずかしい、けれど嬉しいことにも変わりはなくて。
当分直視できそうにないこの写真共々、鍵の付いた箱に大事にしまい込んだ。
誰かに見せるわけにはいかないし、見せるつもりもない。
―
ただひとつ確かなのは、当分この写真を直視できそうにないということだけだった。
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