Hizuki
2018-07-29 22:53:05
13201文字
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夏の思い出に熱を添えて

【グラブル】四騎士アイドル現パロ。ラジオの公開録音に行くことになったグランの話。ジクグラまではいかないけどちょっとジークさんからのサービスあり。基本都合のいい展開しかない。何でも食べられる人向け。とにかく長い。



マンションのエントランス、自分の部屋番号のポストを開ける。
うん、いつも通り特に何も届いていない。
元に戻して鍵をかける。
同じようにポストをチェックしているのは、僕の隣の部屋に住んでいるルリア。
少し年の離れたカタリナさんという人と一緒に暮らしている。
夏休みが始まって1週間。
宿題もそこそこに日々バイトに明け暮れていた。
ルリアとはバイトからの帰り道で偶然会い、今に至る。
そしてルリアはといえば、中から取り出した1枚のはがきを手にして固まっていた。

「どうかしたの、ルリア?」
「グラン大変です

不思議に思って声をかければ、返ってきたのは震えた声。
信じられない、という雰囲気がにじみ出ている。
一体そのはがきに何が書かれていたというのだろう。

「当たっちゃいました公開録音の観覧席
え?」
「ドラゴンナイツの!」
ええ!?」

恐る恐るルリアから手渡されたはがきを見れば、『ドラゴンナイツ公開録音観覧席当選のご案内』という文字がはっきりと書かれていた。
ドラゴンナイツといえば今や人気絶頂のジークフリート、パーシヴァル、ランスロット、ヴェインの4人からなる男性アイドルユニット。
歌やダンスだけに留まらず、お芝居にバラエティ、それ以外もマルチにこなす、彼らを知らない人を探すほうが難しいとまで言われているほどの人達。
もちろんデビュー以来僕もルリアも彼らに魅了され、できる限りは情報を集めたり、CDやグッズを買ったりと充実した日々を送っている。
そして半年前にラジオ番組が始まり、公開録音の開催と観覧席抽選の告知があったのが1ヶ月前。
しかもその会場が市内の公園、更には毎年大規模に行われている夏祭りのメインステージでときた。
そりゃ応募しない理由はないでしょうと応募していたのだけど、まぁ僕の方の結果はそういうことなのだろう。

「すごいよルリア!!」

何という強運。
そんな運の持ち主がまさか自分の身近にいようとは。
学校でも応募はしたという話をたくさん聞きはしたけれど、一体どれくらい当選者がいるのか
とりあえずイベント限定のグッズがあるみたいだし、ルリアに物販のおつかいくらいはお願いしてもいいだろうか、なんて考えていたら。

「一緒に行きましょう、グラン!!」
「え、いいの?」

ルリアからの思いもよらない誘いに今度は僕が固まることになった。
僕が、一緒に?

「はい!誰かと行けたらいいなって思ってて、ペア枠で応募してたから当たるなんて思ってなかったけど、当たったらグランを誘うつもりでいたんです!」
「あ、ありがとう!!」

とんでもない倍率になるだろうなという予想はもちろんあった。
だからこそ僕もルリアと同じようにペア枠で応募はしていたわけだけど。

「じゃあ待ち合わせ時間とかどうしましょうか?」
「物販の1時間くらい前には現地にいたいよね」
「ですよねですよね!でもちょっとお祭りも見たいし、少し早めに行きませんか?」

周りに誰もいない時間でよかった。
誰かに聞かれていたらそれこそ大騒ぎだ。
さすがに状況が状況だけにルリアも僕も興奮が隠せない。
何せドラゴンナイツを自分の目で見られる機会なんてそうあるものじゃない。
今回のイベントが終わったら、ちゃんとルリアにお礼をしなくちゃ。
そう強く心に決めて、その日が来るのを待った。







『ということで、このラジオが始まって初のイベントになる公開録音がもう今週末に迫っているわけですが』
『いやぁ、本当楽しみだよなぁ、パーさん!』
『コンサート以外でのイベントは久し振りだからな』
『もう当選者には招待はがきが届いているのだろう?』
『ですね。観覧席にはそのはがきがないと入れないので、くれぐれも失くしたりしないように注意してください』
『お前の部屋なら話は別だろうがな、ランスロット』
『な!俺の部屋は関係ないだろ!それにこの間片付けたから今は綺麗だぞ!』
『今は、か』
『ヴェインが手伝いに借り出されていたな』
なるほど?』
『わああ!ランちゃんもパーさんも落ち着けって!と、ところでジークフリートさん、これ倍率相当高かったって聞いたんだけど?』
『ああ、20倍どころの騒ぎではなかったと聞いている』
『うっわ、すげえ!応募してくれたみんな、ありがとな!』
『どうやらあまりの応募者の数に急遽観覧席の外に立ち見用の場所が別で設けられることになったそうだぞ』
『えっ、それ俺初耳です』
『俺も今日聞いたばかりでな。とはいえ、場所には限りがあるから当日現場の者の指示に従ってほしい』
コホン。えー、では改めて日時と会場のお知らせをパーシヴァルから』
『分かった。まず日時だが、今週末の土曜日、8月







「はわわ本当にすごい人です

早めに観覧席の受付を済ませ、その席に腰を落ち着けて一息つき、辺りを見回した。
見渡す限り人だらけ。
確かに毎年すごい人出だと言われているお祭りではあるけれど、今年は一段と多い。
まぁ今年に関してだけなら、お目当てがみんな同じだというのは分かっている。
その中でも女の人の比率の方が多いのはいつものこと。

「ドラゴンナイツ恐るべし、だね

手元には49番と書かれた番号札。
隣に座るルリアは48番を持っている。
当たっただけでも強運だというのに、まさか席まで2桁台だとは
前から2列目、席こそステージの右端寄りではあるけれど、十分自分の目で見える距離。
ステージ後ろには大型モニターも完備されているから大きな問題はない。
受付の時に配られた札は座席の番号と一致していて、どうやらステージイベントで使うものらしい。
くれぐれも失くさないようにとスタッフの人に念を押された。
無事物販の限定グッズも買えたし、あとはもう公開録音を楽しむだけ。
せっかくのお祭りだからと浴衣を着てきたのも正解だった。
バイト先の7月のイベントで着て、そのままもらえることになった紺色の浴衣。
ルリアも水色の浴衣を着ていて、とても似合っている。
少し動きにくいけれど、やっぱりこういう時でもないと着る機会がない。
会場にイベントの諸注意のアナウンスが流れ、時計に目を向ければ開演5分前。

「あと少しですっ!」

喜びが隠し切れないルリアの弾んだ声に頷いた。
あのステージに4人が立つんだ。
緊張で心臓がドキドキする。
照明が一瞬落ち、一気に明るくなる。
そして、オープニング曲のThe Dragon Knightsが流れ始めると、拍手と共に黄色い歓声が上がった。

「こんばんはー!ドラゴンナイツでーす!」

4人がステージの真ん中に姿を見せ、ランスロットさんの挨拶が響く。
ステージの照明が落ち着き、全員の姿がはっきり見えるようになると一段と大きな悲鳴のような歓声。
それもそのはず、いつものステージ衣装ではなく、私服でもなく、なんと浴衣姿の4人がそこに立っていたのだ。
もうカッコイイしか言葉が出ない。
ランスロットさんは青、ヴェインさんはオレンジ、パーシヴァルさんは赤、ジークフリートさんは藍色の浴衣を身につけていて。
無理、これは無理。
カッコよすぎる。
悲鳴に似た歓声はそう簡単には収まらず、ヴェインさんがどうどうと観客席をなだめる。

「改めましてみなさんこんばんは、ランスロットです!」
「ヴェインでーす!こんばんはー!」
「パーシヴァルだ。まさかこれほどとは
「ジークフリートだ。暑い中皆ありがとう」

挨拶の度に上がる声。
日は大分傾いてきてはいるものの、まだまだ気温は高い。
この辺りの熱気は4人が出てきたことによって一層増した。

「前半はラジオの公開録音、そして休憩を挟んで後半はミニライブです!」
「それと観覧席の者だけになってしまうが、抽選会もある」

ジークフリートさんの言葉に自分の手元の番号札を見た。
なるほど、抽選会。
だから番号札かと納得する。

「もしかしたらレアなものが当たっちまうかも?」
「どうか最後まで楽しんでいってほしい」
「それではですね、早速公開録音から始めたいと思いまーす」

ステージ横のテントから出てきた数人のスタッフが素早くテーブルと椅子、そしてマイクを設置していく。
テーブルが2セット向かい合わせに置かれ、椅子が2脚ずつ並べられる。
左側にランスロットさんとヴェインさんが、右側にパーシヴァルさんとジークフリートさんが座った。
ラジオの公式サイトに上がっている写真と同じ並びだ、と思わずしみじみする。
公開録音にあたっての注意が再度アナウンスされた後で始まった。
オープニングトークもこのお祭りのことから始まり、今のメンバーの衣装の話に移っていく。

「そう、ご覧の通りって放送じゃ分からないけど、今日俺達浴衣なんですよ」
「折角祭り会場でのイベントだからと皆で揃えに行ったんだ」
「今回のイベントの告知を出してすぐだったか?あの日は大変だったな。なぁ、駄犬?」
「その件はほんっとうに申し訳ありませんでしたパーシヴァル様!!」

ランスロットさんが切り出し、ジークフリートさんが続く。
何かあったのがありありと分かるようにパーシヴァルさんが向かいに座るヴェインさんを呼べば、ヴェインさんはテーブルに両手を突いて頭を下げる。
頭をぶつけたのかゴンッという鈍い音をマイクが拾っていた。
普段は『パーさん』と呼ぶヴェインさんが『パーシヴァル様』と呼ぶ様に、ああ、何かあったんだなと会場の全員が察したに違いない。
その様子を見守っているランスロットさんとジークフリートさんの顔には笑みが浮かんでいる。

「携帯の充電忘れてて、連絡取れなくなりまして
「それだけじゃなかったな?」
「ええと道に迷いまして集合時間に盛大に遅刻しました
「はは、あの時は本当大変だったなぁ」
「ランちゃんの電話番号覚えてなかったら本当に辿り着けなかった

ヴェインさんが方向音痴だというのはファンの間ではもうとっくに知られている。
そんなことより、ヴェインさん、ランスロットさんの電話番号覚えてるんだ。
他の人の電話番号なんて携帯の電話帳にしか入ってないし、紙媒体に控えなんて取ってない。
そんな人が多いだろうこのご時勢にランスロットさんの番号を覚えているヴェインさんとは一体。
スマートフォンを覗き込み、電話を受けるジェスチャーをしながら、ランスロットさんが続ける。

「いきなり公衆電話から着信があって、一体誰かと思ったらヴェインの声で」
「俺もランスロットも着付けてもらっている途中で外に出られなくて、まだ私服だったパーシヴァルが迎えに出たのだったな」
「あれ以降はちゃんと寝る前に充電するようにしてます!本当です!」
「それが普通だ、全く」

浴衣から暴露された裏話に会場は笑いに包まれた。
励ますようにヴェインさんの肩をランスロットさんが叩く。
そんな失敗談すらもラジオの話のネタにできるほど、この4人は仲がいい。

「きっと後で公式サイトに写真上がると思うので、今日の俺達の格好はそこで確認してもらえれば、と思います。あ、もしかしたら会場に来てくれた人のレポとかでもう知られてたりするのか?」
「かもしれないな」

何の問題もなく収録は終わり、続けて始まったのはイベントの最初に告知されていた観覧席当選者を対象とした抽選会。
ドラゴンナイツのエンブレムが描かれた箱から数字の書かれた紙をメンバーが順番に引いていく。
景品は過去の販促品だったり、店頭用のPOPだったり、確かに普通に生活しているならどれも簡単には手に入らないようなものばかり。
特にオフで撮られた生写真なんてそりゃレアものなんて騒ぎじゃない。
もちろんその全てにメンバーのサイン入り。
お宝どころか家宝になるシロモノだった。
番号が読み上げられる度に悲鳴が上がる。
当選者はステージ前に向かい、一言二言言葉を交わしてメンバーから直接景品を受け取る。
感極まって泣き出してしまう人もいた。

「抽選会の景品も次が最後だ」

パーシヴァルさんがそう告げると、会場から残念そうな声が上がる。

「最後の景品は今日のイベント終了後、俺達との写真撮影権です!」
「さて、これを引き当てるのは誰だぁ?」

ランスロットさんの口から伝えられた景品に会場内が熱気で満ちた。
掲げられたのは白の封筒。
表面には『ドラゴンナイツ写真撮影権』と書かれている。
写真撮影権ということは4人に直接会えるどころか、写真という形で自分の手元に一生残る。

「最後なんで、ジークフリートさんに引いてもらいましょうか」
「ん、俺か?分かった」

ランスロットさんがジークフリートさんを指名し、箱の中に手を入れる。
一際煽るドラムロール、それが途切れてジャンッと大きな音が鳴った。

「49番!」

そんなものファンなら誰だって欲しい。
とはいえ観覧席の人数を考えたらまず当たるわけがない。
そう思っていたのに。

「はわわ、グラン!グランの番号ですよ!!」

読み上げられた番号をどこか遠いものとして聞いていると、隣に座っていたルリアが僕の肩を揺すった。
周囲の視線がこちらに向く。

「え?ええええ!!!?」

自分が持つ番号を見る。
手にしている札を見れば、確かに『49』と書かれていて。
目を擦ってもう一度見直しても、当然その数字が変わることはない。

「49番を持っている者は手を挙げてくれるか」
「は、はいっ!!」

声が上がらないことを不思議に思ったのか、パーシヴァルさんが呼びかけた。
手を挙げて立ち上がれば、さっきの比ではない視線がこちらに集中する。

「おおー!おめでとうー!!どうぞステージ前へ!」

視線と拍手を浴びながら、ランスロットさんの指示に従って前方へ向かう。
現実味がない。
僕が、ドラゴンナイツと?
ステージ前の階段側まで歩いていくと、僕に気付いた壇上のヴェインさんが手を振ってくれた。
年上の人にこういうのも何だけど、かわいいんだよなヴェインさん。
そして、さっきの封筒を持ったジークフリートさんが僕の前まで下りてきた。
目の前に、ジークフリートさんがいる。
心臓がばくばくする。
だってそりゃ当然だ。
ドラゴンナイツは全員好きだけど、一番好きなのはジークフリートさんなんだから。
その好きな人が今自分の前にいる。
やばい本当にカッコいい。
顔は整っているし、背は高いし、何かの香水なのかふんわりいい香りがする。
ステージ上でのパフォーマンスの時と違って、宝石のような金色の目はとても穏やか。
ただぼんやりと夢心地で憧れの人を見上げていた。

「おめでとう。この後は現場の者からの指示に従ってくれ」
「は、はいあ、ありがとうございます

声をかけられて、封筒を差し出される。
緊張のあまり、喉もカラカラで。
聞こえるか聞こえないかくらいの声でそう返すのが精一杯だった。
割れんばかりの拍手が会場を包む。

「また後でな」

あっ待って無理尊い。
微笑まれてまた心臓がぎゅっとなる。
ああそうだ、これだけじゃないんだ。
このイベントが終わってからの写真撮影権なんだから。
大きくお辞儀をして、受け取った封筒をもう一度見た。

「当選者のみんなおめでとう!これをもって抽選会を終了とさせていただきます!」
「この後は休憩を挟んで後半戦だ。準備が整うまで少し待っていてくれ」

ランスロットさんとパーシヴァルさんのアナウンスを聞きながら自分の席に戻ろうとすると、スタッフの人に呼び止められた。
そういえば指示に従って、と言われていたんだった。
側のテントに案内され、簡単なアンケートの記入依頼と今日の撮影権の説明を受ける。
緊張で文字がうまく書けない。
そしてアンケート用紙と引き換えに、バックステージ用のパスを受け取って首から下げた。
イベント終演後に再度こちらにお越しください、との指示を受け、席に戻った。
その間に休憩時間はほとんど終わっていて、周囲はライブに向けて準備万端といった様相だった。
ミニライブと銘打たれた後半戦はいつものコンサートとは異なっていて、歌に重点が置かれたセットリストになっていた。
さすがに浴衣では普段のようなダンスはできないから、ということなのだろう。
その分ファンサービスが多めで、各方面からの歓声は大きかった。
間に挟まれたMCはラジオのフリートークの延長戦といった雰囲気で、あらかじめ用意されていたテーマに沿って話をするというもの。
こういう話が聞けるのもイベントのいいところだよなぁとしみじみ思う。