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Hizuki
2016-12-27 00:29:04
5552文字
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FF14
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英雄は光に消える
【FF14】オル光。世界が平和になった後の話。ちょっと暗めの話。男女どちらでも取れるようにしたつもりです。
1
2
中央ザナラーンから、東ザナラーンへ。
キャンプ・ドライボーンで少し休憩を挟み、そこにいた冒険者達に話を聞いてみたけれど、別段有力な情報は得られなかった。
次第に日が落ち、黒衣森に入った頃には空に星が瞬いていた。
昨日騎士を黒衣森で見かけたという噂が広まっているのだろう、トランキル、クォーリーミル、どちらのキャンプにも人の姿は少ない。
辺りを少し回ってみるも、広がり始めた雲が月を隠してしまい、思うように調べられなくなってしまった。
「
…
これは昼間に来た方がいいか」
人が集まる酒場にも情報はなく、店を出たところでふぅと息を吐いた。
今日の調査を諦めて、グリダニアへ戻るための道を進む。
テレポで戻れば一瞬ではあるけれど、どこに情報があるか分からないし、もしかしたら
…
ということもある。
南部森林を抜け、中央森林に入った途端、雰囲気がいつもと違うことに気付いた。
警戒を強め、辺りに目を凝らす。
雲で薄暗い木々の間で何かが揺らいだ。
ついさっきまで気配はなかったはずだ。
護身用のナイフを抜いて、正体の知れない存在の襲撃に備える。
…
そうか、これが例の。
影に気付き、反応するよりも先に声が耳に届いた。
「
…
久しいな」
聞こえてきた声に辺りを見回す。
―
あの日から『生きて聞けることはない』と思っていた声。
足音が背後から聞こえ、慌てて振り返る。
月を隠していた雲が流れ、枝と葉の合間から銀色の光が差す。
差した光がエレゼン族の長耳の影を地面に作り出した。
逆光でまだ顔はよく見えない。
ゆっくりとこちらに近付いてくる。
被っていた漆黒のマントのフードを脱ぐと、剣の刃のような銀色の髪が光を受けて輝いた。
左手が顔へ伸び、目元を覆っていた仮面を外す。
クルザスの晴れ間のような蒼い瞳。
「やっと見つけた
…
」
―
その顔を忘れるはずがない。
自分が唯一本当に愛した彼の姿
―
。
「オル、シュファン
…
?なん、で
…
」
「迎えに来たのだ」
名前が口から零れる。
自分の手からナイフが滑り落ちた。
「証拠、は
…
」
深く息を吸って心を落ち着かせて、証を問う。
それでも声が震えた。
気を張っていないとこのまま倒れてしまいそうだった。
性質の悪い悪戯の可能性がない訳ではない。
はたまた自分の弱さが招いた幻影ということも有り得る。
今目の前にいる彼が本当に彼だという確信が持てなかった。
「
…
以前、手紙を置いていったな」
彼は懐から日に焼けて変色している一枚の封筒を取り出した。
封筒に宛名や差出人の名前はない。
彼が中のカードを手にすると一気に文字が浮かび上がった。
―
この手紙は
…
。
どれだけ前になるだろうか、それは間違いなく自分が彼の碑の前に置いたものだった。
特定のエーテルが伝わった時だけ可視化する特殊なインクで書いたもの。
反応するのは自分のエーテルと
…
オルシュファンのエーテルだけ。
『いつか、英雄として戦わなくていい世界になったら、迎えに来て欲しい』
見慣れた自分の字で、そう書かれていた。
人のエーテルは余程のことでもない限り変わることはない。
手紙の内容が見えるということは、目の前にいる人物が本人であるということを意味している。
目の前の出来事に頭の処理が追いつかず、耐え切れなくなって膝から地面に崩れ落ちた。
「本当に
…
?」
「ああ、お前の望みだったからな」
あの手紙を書いた頃、本当にオルシュファンに届くなんて思っていなかった。
ただの自己満足。
だからこそわざわざ手間をかけて、特定のエーテルにだけ反応するインクの製法を探し出してまで手紙を書いた。
もし他の人に見られたとしても、ただの白紙の手紙に見えるように。
「お前はエオルゼアのために十分戦った
…
」
視線を合わせるように、オルシュファンが地面に膝をついた。
斜めに貫通した痕が残る盾がマントの間から見える。
身に着けている装備は違えど、自分の知っているオルシュファンに違いなかった。
「この世界に『英雄』はもういないのだろう?」
「戦わなくて、いい
…
?」
「あぁ」
英雄はいない。
オルシュファンの言葉に背負っていた荷物が全て下りたような気がした。
こんなに穏やかな気持ちになったのは一体いつ振りだろう。
まるで、冒険者として歩き出した頃のようで。
吹き抜けた風が自分の身に纏っていたローブを取り払った。
「
…
そっか」
張り詰めていた空気が解けていく。
混乱するウルダハを逃れ、クルザスの彼の元に助けを求めた日のことを思い出した。
イシュガルド教皇庁で助けられたあの日、そしてニーズヘッグを討ったあの日。
何度も繰り返し彼には助けられてきた。
「騒ぎを起こしていたのは
…
」
「すまない、私だ。お前を探していたのだ」
オルシュファンの手を借りて立ち上がり、身体に付いた土を払う。
問いに返ってきた肯定の言葉に、この騒ぎも次第に終息していくだろうと一安心する。
「まさかここまで騒ぎになるとは思わなかったが
…
」
「今のご時勢ならそうなるでしょ」
顎に手をやり、真面目な顔でそう口にしたオルシュファンに思わず小さく噴き出してしまう。
何も大きな事件がない今、小さなことでも世界を巡れば大騒ぎになる。
「
…
やっと笑ったな」
笑った、と言われ、英雄を降りてから今まで笑ったことがあったのかと思い返す。
陰として動き始めてからは、気付かれないようにと感情を控えることが多くなった気がする。
「やはりお前は笑顔がイイ」
夕焼けの中、解けない鎖のように心を縛った言葉が、今度は閉ざした心を解いていく。
昔みたいに笑えるようになるだろうか。
オルシュファンと雪の家で過ごしていた頃のように。
「行こう、オレと共に」
地面をオルシュファンが蹴ると、その身体は空中へと浮かび上がった。
自分の背丈ほどの位置に留まり、もう一度手を差し出される。
迷うことなく彼の手を取ると、そのままふわりと同じ高さまで引き上げられ、暖かい光が身体を包んだ。
腰に携えた剣が抜かれる。
月光を受けて、刃が煌めいた。
彼と共に行く、ということの意味。
オルシュファンの顔に不安の色が差す。
このままでは一緒には行けないから。
何も怖くはない。
大きく頷いて、ゆっくり目を閉じた。
世界を救った英雄は式典での発表通り、エオルゼアを去った。
その隣にはかつて英雄を護った、銀剣の名を持つ騎士の姿。
英雄や騎士、肩書きは意味を為さない。
二人を引き離すものはもう何もなかった。
ただ、光の中で穏やかに笑う二人の姿があった。
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