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Hizuki
2016-12-27 00:29:04
5552文字
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FF14
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英雄は光に消える
【FF14】オル光。世界が平和になった後の話。ちょっと暗めの話。男女どちらでも取れるようにしたつもりです。
1
2
蛮神召喚の脅威に怯えることもなく、帝国支配の恐怖に震えることもない世界。
それは夢物語などではなかった。
大なり小なりの各国個別の問題はあれど、世界全体を見るのならば平和になったと言えるのだろう。
人々の顔には笑顔が浮かび、街は活気に満ちていた。
この時が永遠に続くことを人々は願っている
―
。
情報交換を兼ねて砂の家に顔を出し、昼食というには少し遅くなった頃。
何か買って簡単に済ませようかと思っていたが、自然と足がこちらに向いていたのは昔の習慣なのだろう。
通りを右に曲がり、観客を楽しませているミコッテ族の踊り子達を遠目に、左手に見える扉を開ける。
ウルダハの冒険者ギルド、クイックサンド。
時間がずれているせいか珍しく店内に人はまばらで、宿屋受付寄りのカウンター席に見知った後ろ姿がひとつと、正面入口側のテーブル席に冒険者らしき男女が3人いるだけだった。
「あら、いらっしゃい。久し振りね」
この店を切り盛りする主から声がかけられる。
変わらない笑顔と温かい声に心が緩んだ。
「こんにちは、ご無沙汰してます」
入ってすぐのカウンター席を勧められ、その席に腰を下ろした。
「いつものでいいかしら?」
「お願いします」
いつもの、と言われ、今でも覚えてくれていることに嬉しくなる。
今も昔もこの場所はウルダハの冒険者達の拠点であるようだ。
大分魔物達の活動が大人しくなったとはいえ、完全に動きがなくなったわけではない。
店内を見回したところ変わった様子はなく、ウルダハを中心に動いていた頃が懐かしくなった。
後ろの冒険者達は気心の知れた仲間同士なのだろう、賑やかで楽しそうにしている。
客の少ない中、彼らの声はやや大きい気もするが、きっと自分にも同じようなことがあっただろうし、咎める気にはならなかった。
「
…
そういえば聞いたか、黒い騎士の噂」
思い出したかのように男の声がした。
声を潜めてはいるが、客の少ない店内ではあまり意味を為さない。
黒い騎士、という単語に聞き耳を立てる。
「
…
色んなところに出るっていうエレゼン族の騎士ですか?」
「それそれ。昨日俺の贔屓の商人が黒衣森で見たって言うんだよ」
「リムサ拠点のあたしの知り合いも以前ラノシアで見たってさ」
ここ一ヶ月ほど、黒いマントを纏ったエレゼン族の騎士が各国に出没しているという噂が世間を賑わせていた。
最初に目撃情報が出たのはイシュガルド。
そこからクルザス、黒衣森、ザナラーン、ラノシアと各地で見かけたという話が流れ、今となっては規則性もなく日々どこかで目撃報告が上がっているという状況。
「誰かが襲われたとかいう話は聞かないけど
…
ちょっと不気味
…
」
「一体何者なんだろうな」
直接的な被害は未だ出ておらず、ただ姿を見たという話だけが飛び交っていた。
エオルゼアに心残りのある騎士が彷徨っているだけだと言う者もいる。
やはり直近で現れた場所の近辺を探してみる方が手っ取り早いのだろう。
「こういう時に『英雄』がいてくれりゃあなぁ
…
」
―
英雄。
その言葉に自分の身体が強張るのが分かった。
纏うローブは存在を隠すためのもの。
表舞台に『英雄』と呼ばれた存在はもういない。
後に開かれた合同平和祈念式典で、冒険者でもある英雄はまだ見ぬものを求めて旅立った、と人々には伝えられている。
「なら、あなたが騎士を探しに行ったらいいんじゃないの?」
冒険者を諌めるように声を上げたのは、カウンター席に座っていたかつての仲間だった。
賢人ルイゾワ・ルヴェユールの孫、その双子の片割れ。
視界の端に見えていた姿が消え、コツコツと靴音が聞こえた。
「は?」
「今この問題を片付けたらあなたも英雄よ?」
蛮神や帝国、強大な力を持ち人々に恐怖を与えていた存在が『英雄』の手で討たれた。
それはエオルゼアで最も強い力を持っている者が交代したということを意味する。
訪れた平和を喜ぶ人々の中、一部の人間から向けられる視線は警戒へと変わった。
世界が混乱していることを望む者、またその状況を利用していた商人といった者達。
公表された情報を信じていない者の中には、今度は英雄が世界を支配するなどといった世迷いごとを吹聴する者までいた。
式典の準備の最中、そういった者から敵意を向けられ、表から姿を消すことを決めた。
「簡単に英雄って言うけれど、その名前を背負うのはとても大変なこと。あなたにそれができる?」
―
けれど、今も自分はエオルゼアにいる。
表には出回らない問題も多くあるが故に、陰からそれらを片付け、人々の日々を守るために。
真実を知るのは英雄と関わりのあるごく一部の者だけ。
「
…
ちっ。行くぞ」
「あ、ちょっと!」
「うちのリーダーがごめんなさい」
ちらりと後ろの様子を窺うと、忌々しげに店を出て行く斧術士の姿。
引き止めようとする弓術士、そして謝罪の言葉を口にした幻術士の姿が目に入った。
3人が店から出て行くと、彼女は怒りが治まらない様子のまま椅子に腰を落ち着けた。
「
…
ごめんね、嫌な気分にさせて」
「いえ、大丈夫です」
コトリと食器が目の前に置かれた。
おいしそうな甘い匂いが鼻をくすぐる。
クイックサンド名物のクランペット。
ふかふかのパンケーキの上にとろりとバターが溶けている。
いただきます、と手を合わせて、一口頬張ると懐かしい味が口に広がった。
同時に冒険者として各地を駆け回っていた頃を思い出す味。
「黒い騎士、か」
数切れ食べたところで手を止める。
さっきの話を思い出してぼそりと呟いた。
「何か心当たりでも?」
独り言に返ってきたのはモモディさんの声。
さっきの騒ぎのお詫びに、と言って、普段は別料金でトッピングとして提供されているアイスクリームが目の前に置かれた。
甘くひんやりとしたそれがザナラーンの熱気で火照った身体を冷やしてくれる。
「いや、何も
…
」
噂が流れ始め、自分の元へも話が届き始めた頃の目撃場所はグリダニア周辺だった。
最初は黒衣森を彷徨っていた闘神の復活を疑った。
けれど各国での情報が聞こえてくるにつれて、その線は早い段階で消えていった。
「調べに行くんでしょう?
…
気をつけてね」
「ありがとう、ごちそうさまでした」
久し振りの味に食が進み、あっという間にそれを平らげてしまった。
食後のドリンクを飲み干し、代金をテーブルに置いて立ち上がる。
「
…
あら、少し多いわよ?」
「彼女に何か出してあげてください」
向こう側のカウンターに座る彼女はさっきの一件に相当腹を立てているようで、こちらに気付いている様子はない。
なるほど、と頷き、店の主は代金を受け取った。
今度顔を合わせたら改めてお礼をしないと。
そしてウルダハを出ると、昨日目撃されたという黒衣森に向かった。
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