Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
Hizuki
2016-10-24 20:29:06
5791文字
Public
FF14
Clear cache
昔話は蜜月を語る
【FF14】エス光。3.3メインシナリオの軸から大きくズレた上で、3.4IDグブラ幻想図書館ハードの内容を含む話です。注意書きをご覧になった上でどうぞ。
1
2
3
人間用の薬がほとんどないというのは事実だ。
だが、薬になるものがない訳ではない。
元々怪我の治癒は早い方だった。
邪竜と刃を交えた時の傷もそんなに長く残ってはいなかった。
それでも戦い続ける限り傷は負う。
自身へのものは極力避けることができても、誰かを庇ってといったものは避けようがない。
足元からは絶えず規則的な呼吸が聞こえている。
こんな状況の相棒の側を離れるのは心苦しいが、やむを得ない。
起こしてしまわないように静かに距離を置いた。
そして、夜空へと羽ばたく。
簡易だがモーグリ達に造らせた壁で風は防げているはずだ。
遥か遠くまで見渡せる高さまで上がると北の外れの方へ向かう。
近くまで飛ぶとこの場所にはまずない雲綿の灯りが光る島が見えた。
目印代わりなのだろう。
モーグリ達曰く、資源が埋まっているらしいのだが、大きな岩の塊が積み上がっていて採れない、ということらしい。
島をぐるりとひと回りし、一際頑丈そうな塊に目をつけると、そこに向かって勢いよく突っ込んだ。
衝撃が全身に走る。
何度も繰り返しているうちに岩は鱗を削り、痛みは徐々に鋭いものへ変わっていく。
夜が次第に薄れ、朝日が昇り始める頃には粗方の岩は崩れ去り、何かの原石と思われるものが光っていた。
これくらい小さくなっていれば、あいつらでも何とかできるだろう。
もう一つ地面に紅く光るものを見つけると、相棒を残してきたドラゴンズエアリーに戻った。
広間は出てきた時と変わりはなく、気配が一つ。
そっと地に足を着けると、できるだけ静かに相棒の側に戻る。
「おはよう」
昨夜とは違うはっきりとした声が聞こえた。
やはり起こしてしまっていたか。
「起きたらいないから、ちょっとびっくりした」
「悪い」
こいつが起きるまでには戻るつもりでいたが、自分の方が遅かった。
いや、こいつが早かったのか。
身体を起こすと俺の前に座った。
ゆっくりではあるものの、もう動けることに相棒の回復力を思い知らされる。
「もう動けるのか」
「うん、大丈夫
…
って」
はっと何かに気付いたように目を見開く。
視線の先には前足があった。
「エスティニアン、その傷は
…
」
「少しぶつけただけだ」
「すぐに手当てを
…
」
心配そうに傷を覗き込む。
他人の心配よりも、自分まずは自分の心配をしろというに。
「手当ては後でいい。それより、飲めるか?」
「え?」
何を言われたのかわからない、というようにぽかんと俺の顔を見上げる。
「竜の血が薬になるのはお前も知ってるだろう」
一時的に身体能力を引き上げる錬金薬には竜の血を素材に作られたものもある。
使い方を誤れば、竜の眷属と化す危険性も孕んではいる。
だがこいつならば、それはほぼないと見ていい。
「ここには人間の薬なんてないからな」
「
…
そのためにわざわざ?」
「
…
別件のついでだ」
余計なことを知られたくなくて、ふいと視線を逸らす。
そうだ、これは『ついで』だ。
「
…
ありがとう」
竜の血が人間を救ったという話はいくつもあるらしい。
自分が人間だった頃には気にも留めなかったことだが、ここで暮らす奴らの話を聞いてそういうこともあったのだと知った。
俺の前に膝を付き、相棒が前足に顔を寄せる。
気遣うように視線をこちらに送るのを見て、こくりと頷いた。
柔らかいものが鱗に触れるのが分かる。
丁寧に周囲を拭き取るように動く舌がくすぐったい。
ピリッと痺れるような痛みが走り、確かにそこに触れているのだと実感する。
「
…
痛い?」
「大丈夫だ」
身じろいだのが伝わったのか、心配そうに問う。
俺の返事を聞くとまた傷に舌を這わせた。
しばらくして再び痛みが止んだ。
傷口を見ながら、何か考え込んでいるようだ。
「どうかしたか」
「
…
『ドラゴンになった少年』みたいだなって」
問いに返ってきたのは随分と懐かしいものの名だった。
イシュガルドでは有名な子供向けの童話。
攫われた子供がドラゴンに襲われて崖下に落ち、隠れるために入った洞窟で出会ったのはいじめられていた小さなドラゴン。
助け合ううちに友人になり、そして空を飛んで家に帰ったという話。
俺も幼い頃弟と一緒に読んだ記憶がある。
だが、何故今それが出てくるのか、理由が分からない。
血が飛ぶような物騒な話ではなかったはずだ。
そういえば改めて考えれば、子供はドラゴンになった訳ではない。
話のタイトル自体が不自然だということに気付く。
「ある日、心優しい羊飼いの少年は奴隷商人が雇った男達に拉致されてしまう」
ふっと浮かんだ俺の疑問を他所に、相棒が目を閉じ語り始める。
「少年を奴隷商人に届ける道すがら、男達はドラゴンに襲われてしまった」
奴隷商人という不穏な単語に覚えはない。
「男達に襲いかかったドラゴンは少年の友達だった。危機を知ったドラゴンは少年を助けるために来た」
竜と人が共存する話。
それも、竜が人を助ける話。
「けれど、戦いの途中で少年は崖の下に落ちてしまった。ドラゴンは重傷の少年に自分の血を飲ませた」
言っていたのはこれのことか。
「すると、少年は竜の眷属となってどこかに飛んでいった
―
」
語り終えた相棒が目を開く。
その視線と重なり、小さく頷いた。
「知っている話とは随分違うな
…
。それを一体どこで?」
「グブラ幻想図書館に初版本があった」
相棒が口にしたのは低地ドラヴァニアにあるという叡智の集う地。
それを聞いてすっと引っ掛かりが解けていく。
広く知れ渡った話は、後で変更されたものなのだと納得する。
「
…
なるほど」
「内容が内容だけに民衆に広めたくなかったんだろうね」
「だろうな」
『ドラゴンになった』というのはそういうことだったのかと。
竜詩戦争が終結した今でさえ、この話が受け入れられるようになるのに時間がかかるのは見えている。
戦争の真っ只中で、竜が人間を助けたという話があれば異端だと切り捨てられていたことだろう。
「
…
ドラゴンになったらどうしよう」
冗談のようなことを神妙な顔でぼそりと呟く。
本気だとは思っていない。
「
…
その時はここにいればいい」
「そっか」
こんな所に留まっていていい人間ではない。
それでも、もしもがあるのなら共にあって欲しいと願うのは俺自身が今の姿だからだ。
自分が人間側に歩み寄れないのなら
―
。
「さ、エスティニアンも手当てしないと」
姿が変わる様子はなく、少し安心する。
自分から言い出した手前、何かあったらどうしたものかと考えていた。
慣れた手つきで俺の傷に薬を塗り、布を巻いていく。
相棒の手当てに使ったものの余りを使い、あっという間に終わらせてしまった。
これはまた追加を頼んでおかなければならんか。
「平和になって冒険者辞めたらここに住もうかな
…
なんてね」
「
…
何もないぞ」
薬などの片付けをしながら突拍子のないことを何でもないように告げる。
何を言っているのか、その言葉を理解するのに少し時間を要した。
皇都から離れ、いるのはほぼモーグリとドラゴン、何をするにしても不便な地。
そんな場所に住もうなどとは、普通の人間の考えることではない。
「エスティニアンがいる」
口にしたのはやはり俺の名で。
呆れ半分、嬉しさ半分。
「それに住めば都っていうし」
「
…
好きにしろ」
この傷が癒えたら、またこいつは旅に出る。
共に在ることを望まないわけではないが、過剰な期待はしない。
相棒の立場を考えれば何があるとも知れないし、そもそも竜と人では生きる時間が違いすぎるのだから。
だが、相棒の言葉が本気だったと知ったのはまた別の話─。
1
2
3
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内