エス
2024-10-18 14:21:04
18846文字
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東京卍會総長代理と愉快な仲間たち

グッバイフォーエバーチンポ。


 大抵どんな組織でも、禁じられている事はある。法律など片っ端からぶち破っているような、暴走族でもある。例えば、東京卍會は内輪揉め御法度である。外部に関してはこれでもかと喧嘩を売るくせに、内部ではNGなのだ。だがそれで日々平和に過ごしているかと言えば、そのような事は勿論ないわけで、内輪揉め厳禁だと注意をすれば、意見の相違です等と小賢しい言い訳をする者も現れる始末。でも結局やっている事は暴力を振るうタイプの喧嘩なので、止める人間が必要になる。しかも、立場が上の人間ほど平気で揉める。話し合い? 殴り合いの方が早い、よし殴る。このノリで。よって止めるのは更にその上の人間の役割になるわけで、東京卍會総長代理の胃は痛みを訴えていたのである。
「アッ、大寿君! 丁度いい処に!」
「断る」
 柴大寿の判断は早かった。焦った様相で現れた総長代理の姿を見て、即断ったのである。嫌な予感しかしなかったのだ。柴大寿は新参者である。元々は東京卍會所属ではなかった。黒龍なるチームのトップを張っていたのである。しかし抗争で敗れた結果、軍門に降ったのだった。それで分かった事は、このチーム、矢鱈と問題が多い。これである。確かにトップの佐野万次郎は強者なのだが、その男に唯々諾々と従うかと言えば、割と従わない人間が大多数だった。我が強い人間の宝庫だったわけである。その中でこの総長代理は、苦労性だった。立場としては上から二番目の癖に、性分がパシリなのである。
「まだ何も言ってないんですけど!?」
「面倒事だろ、どうせ」
 しかしどんな不良相手でも、真っ向から目を見て話す気概は持っていた。柴大寿はお世辞にも人相がいいとは言えない。一度睨みをきかせれば、大抵の人間は怯んだ。だが花垣武道には然程に効果がないのだ。
「単刀直入に言います。三途君と灰谷蘭君をぶちのめしてくれませんか」
「仕方ねえな」
 秒でやる気になったのだった。非常に分かりやすい。面倒事は御免だが、暴力を振るう許可が出たのである。後の事は知らない。理由などどうでもよい。頼まれたのは、ぶちのめす事だけだ。まあそれくらいなら、と、軽い気持ちで大寿は請け負ったのだった。
 武道の先導で向かった先にはギャラリーが出来ていた。その中心では、確かに伍番隊の隊長と捌番隊の灰谷蘭がそれはもう楽しそうに暴力を振るっていたのである。
「取り敢えず二人の顔何発かぶん殴ってくれません?」
 半眼の棒読みで武道が言えば、おう、と、軽く大寿が返事をした。肩を回して歩き出す。人間ブルドーザーの出陣である。基本内輪揉めはご法度であるが、総長代理の許可が出たなら何ら問題はない。後で文句を言われても、総長代理の命令だと言えば、大抵許されるわけである。お手軽だった。
 互いしか見えていなかった暴力真っ最中の二人も、流石に気付く。何せ自分たちより大きな人間が堂々と入り込んできたのである。二人は訝しみ、その一瞬の間が命取りだった。何と言っても柴大寿には怯む理由がないのである。最初はゆっくりと歩いていたが、直ぐに足にスピードを乗せると先ずおさげの方へと突っ込んだ。防御が間に合わない。この男、デカい形の癖に、速さもそれなりである。額に一発拳が入る。周りで見ていた人間が、一斉に肩を上げ、身を縮めた。単純に痛そうだった。灰谷蘭が仰け反った隙に、今度はもう一方へと腕を振った。なぎ倒すように横から顔に向けて拳を当てる。横っ面に当たるかと思われたが、側頭部だった。どの道、体勢を崩すことに違いはない。何発か当てるつもりだったが、一発で静まり返ってしまった為、大寿の動きも止まった。返ってくると思っていた攻撃が、なかったのだ。突然襲ってきた暴力に、解せない、と、言う顔で二人は座り込んでいる。痛みか、疑問か、兎に角顔を顰めて柴大寿を見上げたのだ。
「オイ、内輪揉めは御法度だろ!」
 そうして、静寂は壊れたのだ。但し、完全にオマエが言うなだった。吠えたのは、伍番隊の隊長である。
「先に揉めてたのはそっちでしょ!」
 大寿の後ろから、ひょっこりと武道が顔を出す。完全に扱いが壁。もし不意に攻撃が飛んできても此処なら安全である。
「伍番隊はいいんだよ!」
「いいわけねえだろ。大体何でこんな事になったんですか」
「だってさァ、代理」
 未だに顔を顰めたまま、気だるげに蘭が口を開いた。
「この睫毛、存在がムカつくんだもん」
「こっちの台詞だわ死ねおさげ」
「オマエおさげ似合わねえもんな」
「絶対テメェより似合うわ自信しかねえわ」
「ハァ? だったらどっちが似合うか競ってやんよ」
「いやそれ、誰が白黒つけんですか」
「じゃあ女装してどっちが多くナンパされるか」
「それ勝って嬉しいですか」
「そのまま声掛けられて輪姦されてこいよ」
「アッ、勝つ自信ない感じ? そりゃそうだよな、オレの方が美人だもん」
「ハァ? オレが勝つわゼッテェ勝つわ、東卍で一番可愛いのオレだもんな、武道?」
「あのさ、それ本当に勝って嬉しい?」
 三人の会話を聞きながら柴大寿は虚無を背負っていた。不良と可愛いと美人がイコールで繋がらなかったのだ。当然である。
「オイ柴大寿、東卍で一番可愛いのはオレだろ」
 しかも巻き込まれた。問いかけた三途春千夜の顔は、否定したら殺すと言わんばかりだった。白雪姫に出てくる魔女が脳裏に浮かんだ。今柴大寿は、魔法の鏡なわけである。つまり出すべき答えはノーだった。
「コイツだろ」
 果たして魔女は姫を殺すだろうか。柴大寿が、別の人間を指さした。
「えっ、オレ!?」
 姫こと、花垣武道が驚いたのと、三途春千夜が顔を顰めたのと、灰谷蘭が目を丸くしたのはほぼ同時だった。突如として齎された一瞬の静寂の後、大寿ではなく春千夜を見て武道は言った。
「いや明司君、コイツがいたわ……って、顔止めてくんない」
「コイツがいたわ」
「口で言えって事じゃないから」
 顔を顰めたのは不快ではなく、思い至らなかった自分を詰っていた模様である。三途春千夜は魔女ではなかったのだ。
「えっ、可愛い?」
 だが此処で流れに疑問を抱いた人間がいる。
「は? 可愛いだろ?」
 すかさず春千夜は武道の首に腕を回し、灰谷蘭に見せびらかしたのだった。正に特別の距離感だった。幼馴染である。つまり、若干、ちょっと、身内の欲目が働き過ぎていたのだ。因みにこの身内の欲目、伝染病である。気付けば皆かかっている恐ろしい病だった。蘭がその事を知るのはもっと後である。
「いや、普通だろ」
 今はまだ平然と、武道を前にして即座に蘭が言った。その感情の籠らない一言を聞いて、武道は驚きを露わにしたのだ。
「灰谷蘭君てナルシストイカレポンチかと思ったら真っ当な感性持ってるんです、ア痛」
 蘭が武道の頭に拳を振り下ろしたのはほぼほぼ言い切った後だった。本人に悪気が一切ないナチュラル悪口を前に、春千夜は顔を背けたし、大寿は空を見上げた。
 余談だが、この呼び名が広まり、灰谷蘭のニックネームがナルシストイカレポンチになるのは秒だった。その内略してナルポンになり、最終的にチンポになった。ただ、チンポは呼ばれた方は勿論の事、口にした方にも少なからずダメージがあり、早々に廃れたのだった。グッバイフォーエバーチンポ。
 場にいた全員の耳にナルシストイカレポンチが渦巻きそうになった時、正に消さんとするようなタイミングで第三者の声が響いたのだ。
「また揉め事か?」
 しかも真っ当な内容だったものだから、全員が安堵したのである。登場したのは東京卍會総長、佐野万次郎だった。因みにこの男が現れると、段々人が増えていく怪現象が起きる。流石の求心力である。海外製の掃除機も驚きの性能。
「聞いて下さいマイキー君! 三途君と灰谷蘭君が殴り合いを!」
 救いの神が現れたと見るや否や、武道は即座に報告した。隠す意味がないので。しかも一応自分で沈静化を図ったのである。だったらもう褒められて然るべきくらいの頭であった。東京卍會総長代理は人に甘い部類であるが、その総長代理を周りが甘やかすのでこうなるのである。特に総長。特別扱いを全く隠さない総長は、代理の頭を悩ませているであろう二人を睥睨したのであった。これに慌てたのは、伍番隊の隊長である。佐野万次郎の面倒くささとヤバさは幼いころから理解していた。
「いやオレの話を聞いてくれマイキー。このナルシストイカレポンチ、武道を可愛くないって言うんだぜ!」
「えっ」
 聞いた武道が素で驚きの声を上げた。ちょっと、聞いてた話と違うので。おさげがどうのこうの言っていた筈である。突然自分が渦中に駆り出され、啞然とする他なかったのである。つまり、思考停止した武道より、代理過激派の総長の動きが早いのは当然だった。
「そいつは聞き捨てならねえなあナルポン。誰のタケミっちが可愛くないって?」
「えっ」
 次いで驚いたのはナルシストイカレポンチである。急に一方的に悪者にされている上に、速攻で略されたのだった。ナルシストイカレポンチの受け入れが早すぎてついていけなかった。
「チンポ?」
 しかもナルシストイカレポンチが呆気に取られている間に、林田春樹が結論を出してしまった。
「ちげーよパーちん! ナルシストイカレチンポだろ!」
 林がすぐさま訂正したものの結局チンポだった。こうしてチンポは誕生したわけである。伝言ゲームの比ではないスピード感が此処にはあったのだ。
「よう、灰谷チンポの弟」
「被弾エグすぎるってマジ……
 何故此処へ来てしまったのか。灰谷チンポの弟こと、灰谷竜胆は世界を恨んだ。何か人が集まってんな、面白そう。そう言う軽い気持ちで踏み入れてはいけなかったのだ。不良が雁首揃えて血みどろじゃねえタイプの地獄出来る事あるんだな、なんて思っていた。そう、灰谷兄弟にとって、地獄だった。恐らく、因果応報の類である。因みに、ナルシストイカレポンチの部分を訂正する気はなかった。弟の目から見ても、ナルシストイカレポンチだからである。
「って言うか、別にオレ、可愛くないですし、可愛いと思われたくもないですし」
 此処から更にどうやってナルシストイカレポンチを弄ってやろうかと画策する最悪の空気の中、現実に引き戻したのは総長代理だった。酷く面白くなさそうな顔をしている。ナルシストイカレポンチの流れを作ったのが自分だとは理解していない顔である。寧ろ発端が自分である事すら既に忘れていた。所詮、その程度だった。
「オレが育てたのに、可愛くないわけないだろ」
 顔を顰める武道に向かって堂々と言い放ったのは、三途春千夜だった。どうやらこの男、魔女ではなく良いタイプの継母らしい。他人事の体で、大寿は思ったのだ。未だに脳内が白雪姫だった。百歩位場から取り残されている。
「どっちかって言うと、オレが明司君を育てた気がする」
「だからオレ可愛いだろ」
「いや、えっと、うん……
 武道は考えていた。どうしてこんなに自己肯定力化け物に育ってしまったのだろうと。こんな筈ではなかったのだ。でもどういう手はずだったかと言うと、ノープランだったわけなので、なるべくしてなったのだった。どうしようもない。
「結局さァ、代理は、オレとそこの睫毛どっちが可愛いと思ってんの?」
「なんで?」
 突然話に割り込んできたナルシストイカレポンチに咄嗟に武道は聞き返した。問われる理由が全く分からなかったので。後はっきり言えば、男、それも不良を可愛いと思う観点がなかった。不良は可愛くない。以上。
「待って、これ、東卍で誰が可愛いかって話? じゃあオレだろ」
 しかももう一人飛び込んできたものだから、いっそどっかのチームが乗り込んでこないだろうかと願ったのである。羽宮一虎が自信たっぷりに前に出たのだった。競うところ間違ってない? 武道は内心で問うた。口を挟む気にもならなかった。
「ウチのイザナだって負けてないぞ!」
「いやカクちゃん、何でも推せばいいってもんじゃないからね?」
「だってよ、タケミチ、部下たるものいつでも大将が一番だってアピールしねぇと駄目だろ」
 内容を深く考えずに取り敢えず名前を上げる行為を見て、黒川イザナが額を押さえていた。悪気はないのだ。いや、悪気がないからより悪かった。後々、鉄拳制裁と説教のダブルパンチは疑いようもなかった。
 兎に角、東京卍會誰が一番可愛いか選手権、名乗りを上げたのは、花垣武道、三途春千夜、灰谷ナルシストイカレポンチ、羽宮一虎、黒川イザナと相成ったわけである。勝手に巻き込まれている者もいるわけだが。
「じゃあ、一番はオレだとして、二番を決めるって話だな?」
 しかも堂々と総長が一番を宣言したものだから、全くやる意味などなかった。自分が一番可愛いと思ってる暴走族のトップ嫌だな。割と満場一致の感想である。
「因みに決める意味は?」
「ない!」
「やめましょうよ」
 総長代理のド正論に、反論の余地などない。そう、思われた。
「じゃあタケミっちは、誰が可愛いと思ってんだよ。オレ以外で」
「えっ」
 ストレートに問われ、武道は返答に窮した。しかも、オレ以外で、と、しっかり釘を刺されたわけである。佐野万次郎と答えることは読まれていた。一番害がないので。
「えっ、えー」
 誰の名前を出せば一番すんなりと終わるのか。武道は周囲を見渡した。誰も可愛くなかった。それはそうである。喧嘩に明け暮れ暴走行為に日々を費やす悪い人間の集まりである。それでいて、一体組織の中で誰が一番可愛いかを話し合っている最中である。滅茶苦茶だった。
 悩んだ挙句、武道は心を決めた。
「し、柴、大寿君、です……
「えっ」
 突然巻き込まれた柴大寿は、柄にもなく素っ頓狂な声を上げた。それはそうである。どう考えても自分の名が上がる場面ではない。
「なんで?」
 だが平然と総長は問うのだ。先ず驚くべきではないだろうか。周囲の感想である。
「あの、犬猫に、餌付けしたりして……そう言うところが……
 決して目を合わせまいとするかのように、武道は斜め上を見ながら言った。疚しいと言わんばかりの態度だった。大寿は首を横に振った。どうにも、記憶にない振舞いである。犬猫に、餌付け?
 因みにその犬猫、身長百七十センチ超えの不良である。
「へえ、隊長そんなことしてんだ? 確かに可愛いとこあるじゃねえか」
 この男、犬猫その一である。
「野良か? 飼ってやればいいだろ。ペット禁止か?」
 この男、犬猫その二である。
「それホントに柴大寿? 他人の空似じゃない?」
 此処で弟が真っ当に突っ込んだ。ただ、他人の空似だとしたら、この男に似た背格好が他に存在する事になる。普通に嫌である。余談であるが後日この話を全面的に信じた場地圭介が、柴大寿にこっそり猫の餌を渡す珍事が起きた。何も言わず受け取れよ、等と言って餌を置いて行った場地圭介は大層男前だったが、猫に心当たりがない大寿は心底困ったのである。使い道がなかった。
「オイ、代理」
 漸く、大寿は適当な事を言うなと注意しようとした。だが、途中で遮られたのである。
「って事は、大寿はタケミっちを可愛いと思ってて、タケミっちは大寿を可愛いと思ってるわけじゃん? 付き合っちゃえば?」
「なんて?」
 言いながら武道は思った。この男、面倒になってきたな、と。話のまとめ方が雑すぎて、誰でも察するレベル。いっそもう纏まらなくていいので解散して欲しい。全隊員共通の願いになりつつある。
「でもその場合、オレが認めねえと駄目だから、先ずオレに頭下げろよな」
 今し方、付き合っちゃえば? 等と、軽く言ったばかりである。許可とは一体。柴大寿は死んだ目で空を見上げ、どうすればここから逃れられるかを考え出した。ただ、残念ながら精神的な疲労により、最早真面な思考回路ではなかった。そのとち狂った人間ブルドーザーの出した結論が此方である。
「おとうさんむすこさんをぼくにください」
 完全な棒読みだった。武道は同情してしまった。あの柴大寿がこんな事を口走る等、東京卍會ヤバいな、等と思っているが、割と元凶の大半を担っているのも花垣武道である。人間、己の事は良く見えないのだ。
「その心意気や良し! ケンチン相手してやれ!」
「えっ」
 しかも面倒になった挙句、副総長に丸投げである。突然巻き込まれた龍宮寺堅は困惑を隠そうともせず言った。
「しゃあねえなあ……かかってこいよ、タケミっちが欲しいならな!」
 この男、佐野万次郎に巻き込まれ過ぎて、考えるより先に乗ってしまう悪癖があった。シンプルに可哀想。憐れんでいるのは三ツ谷隆である。どう考えても乗らない方が早く終わるのに、考えるまでもなく乗ってしまうから長引くことを理解していたのだ。後勝手に、乗った方が面倒ではないとも思い込んでいる。逆である。乗らない方が面倒事から遠退くわけである。だから大抵龍宮寺堅は渦中にいた。最終的に絶対に巻き込まれる男なのだ。
 別に花垣武道は要らないが、と、思いながら何となく臨戦態勢になる柴大寿と、別に持ってってもらって構わねえけど、と、思いながら言ってしまった手前、何となく構える龍宮寺堅。只何方も表情は渋かった。乗り気でないのが丸わかりである。
「なァ、東卍て大抵こういうノリ?」
 溜息を堪える三ツ谷へと話しかける影有り。
「残念ながら、これが通常なんだよな……
「マジか……馴染めっかなオレ……
 そう言いながら、腕や首を回す姿はどう見ても参戦する気満々に見えた。三ツ谷は思った。既にオマエは中枢にいるだろ、灰谷チンポ。内心でサラッとチンポ呼ばわりである。だが、口に出さない分別はあった。相手がどうこうというより、自分が汚れるのが嫌なのだ。灰谷蘭がチンポなのは一向にかまわないが。
 仕方なく始まった殴り合いに周囲から歓声が上がった。
 視界の端で、大抵の物事の元凶である花垣武道が小声で、勝手に解散してもいいかな、と、参謀に相談しているのが見えた。さっさとしろ。三ツ谷は内心で発破をかけたのである。三ツ谷の心が通じたのか、武道が息を吸ったのが見えた。よし、やれ。
「あ、アタシのために争わないでェ!!」
「違ぇだろ!!」
 武道の声より大きな怒号が三ツ谷の口から飛び出した。これが東京卍會の平和とは程遠い日常である。