バラ肉
2024-10-15 11:16:09
11034文字
Public
 

永遠を示そうよ!(🐞アリ前提のモブ→アリ)

モブ(スパイ)に引っかかって、強さの秘訣を語る筈が下品な話題をふられるアリスちゃん。

※モブ目線でモブ→アリ
※『永遠を誓おうよ!』の続編
※最後ははちゃめちゃにハピエン
(口調が迷子ですみません)

私はスパイだ。
活動歴も長く、自分ではそこそこ腕利きだと自負している。
そんな私はいま、上層部からの依頼でオメガ星へと侵入捜査に当たっていた。なんでも『戦闘民族である彼等は、いつか必ず母星の脅威となる。なので侵略される前に彼等の強さの秘密を探ってこい』と元老院の偉い手から直々のお達しらしい。

オメガ星。
かの星の戦士の強さは確かに強大だ。特に、最近代替わりした当主はたった数年の内にとんでもない力を手に入れたと聞く。更には頭領である彼へ続くよう親衛隊なるものも結成され、近隣の星への影響力は未だかつてない速さで大きくなっていた。
かく言う私も、今までに何度も修羅場を潜ってきたとはいえ、最初この話を聞いた時は冷や汗を禁じえなかった。

そうして、噂通りの猛者だらけの星に侵入して、緊張の日々を過ごすこと数年。
『流浪の超人研究家』という都合のいい設定で調査活動を開始した私は、並行してマメに地域との交流を交わしていたおかげか。存外早く彼等の生活に馴染むことが出来た。
そもそも、職業はスパイではあるものの、実は私も超人の端くれ。母星ではいくつかの称号(タイトル)を所持しており、自画自賛にはなるが、実力も決して低くはない。その気になれば超人レスラーとして十分やってこれただろう。なのにどうしてスパイに?と言われればーーー(割愛)という理由だ。
なので、力を好む種族であるオメガの民にとって、私と言う強者の存在は比較的受け入れやすかったのかもしれない。中でも、交流の一環として子供達のスパーリングの練習相手となったのが大きかったのか。
キラキラ輝く目をした彼等に「あのおじちゃん、つよいんだよ!」と言われた日から、私は怪しい旅人からオメガの良き友人へと変わったのである。

そんな私は、日頃の行いが功をなしたのか。
潜入捜査◯年目を迎えた今日、とうとうオメガ宗家の当主であるオメガマン・アリステラとの対面まで漕ぎ着くことができた。
対談内容はもちろん、『オメガの強さの真相を知る』ことだ。
直球と思われるかもしれないが、今の私の肩書は『超人研究家』。決して違和感はない理由だろう。
実際、ダメ元でアポイントを取ったときも「オメガの至宝の素晴らしさを広めるにもちょうどいい機会だ」と2つ返事で快諾されたものだ。

こうして、オメガの至宝ことオメガマン・アリステラと対面することになった私は、出迎えられた絢爛な部屋の中で、彼の姿を見た瞬間———まるで全身の血が沸騰するような興奮を覚えた。
先にも言った通り、私も一端の超人である。相手の超人強度の度合いを肌で測ることは難しく無い。だからこそ分かる。この男の力は異常だと。

……で、貴様がオレの強さについての話を聞きたいと?」

凶悪なマスクの下から覗く剣呑な視線は鋭く、まるで檻に入れられた高貴な獣を連想させた。豪奢なソファの上で足組しながら、手の甲に顎をおいてこちらを見つめる姿はまさに傲慢な君主そのもの。
知らずに冷や汗が浮かんだのもしょうがない。
だが、こちらもプロの調査員である。

……マリキータからはそう聞いていたが、違うのか?」
入口に立ったままのこちらを不審そうに見つめる相手に対し、私は緊張を悟られないように一歩足を踏み出した。

「これは失礼いたしました! 貴方様のあまりの圧倒感にすっかり魅入っておりました」
慇懃に頭を下げれば、「……そうか」と感情の取れない吐息が零れる。
気分を害したか? 反射的に冷や汗が浮かびかけたものの。
「そこに突っ立ったままではろくに話もできないだろう。座って楽にしたらいい」
「あ、は、はい!」
そう言って彼自身の前にある椅子を顎で示す姿に、ほんの少し拍子抜けしてしまった。見た目からして「手短に終わらせろ」などと冷徹な対応をされるとばかり思っていたのに、予想外の気遣いに戸惑わずには居られない。
おずおずと指定された一人掛け用ソファに座れば、「ちょっと待っていろ」と入れ替わりで立ち上がったかと思いきや、彼の両手にはティーセットの乗ったトレーが。

「悪いが、今回の件は……ものによっては長い話になるかもしれん。だから、これでも飲みながら、気長に聞いてほしい」
言いながら手ずから紅茶を注ぐ姿に、私はそれこそ面食らってしまった。
きっと本来なら「オメガの至宝にそんな!」断らないといけない。……にも関わらず、「熱いから気をつけてくれ」と余りにも自然に差し出すものだから、つい素直にソーサーごとカップを受け取ってしまった。
また、水面から漂う茶葉のいい香りに誘われて、おずおずと飲んだ紅茶の味はこれまた絶妙で。

……っこんなに美味いのは初めてだ!」

たまらず零した感嘆の声は、きっと素が出ていたに違いない。
こんな屈強な戦士が、まさかこれほどの腕前とは。流れるような動きに見惚れしまったのもこれなら合点がいく。
「そ、そうかッ! オレの好きな銘柄で申し訳ないが、気に入ってくれたなら嬉しい」
やや照れたように細くなる目に、私は後押しするようにブンブン頭を上下に振った。
仕事柄数多くの地に訪れることの多い私の舌は、我が事ながら大分肥えている。その私が唸る味を出した。つまり、お世辞でもなんでもなくこの男の淹れた紅茶は絶品なのだ。
「もちろん!」
思わず大声になってしまった私に虚を突かれたのか。
「なら……おかわりもあるから、好きに飲んでくれ」
小さな声で返された申し出に私はついつい大きく頷いていた。

と、同時に、自分の中の彼の印象がガラリと変わったことに驚く。
見た瞬間は全身が震えるような畏怖と恐怖を感じたのに、応対する彼の気遣いはまるでどこぞの貴族の令嬢のように慎ましやかで的確だ。
見た目は、確かに今も変わらず恐ろしい。大柄な体躯に、背中に背負った禍々しいオメガハンド。頭部を包む無機質なマスクは不気味の一言。全身を覆う白と黒と紫の装いはまるでヘビのように冷たい印象をもたせる。
きっと百人中百人は彼に姿に怯えを覚えることだろう。
だが、彼の所作と心配りはそれすらを上回る優しさに満ちていた。

「オレはあまり口が上手な方ではない。だが、聞かれたことには誠心誠意応じよう。オメガの代表として、この星の向上として、なんでも聞いてくれ」
真剣な目でこちらを見つめる瞳に嘘はない。
「研究家」と称する相手と話すことはすなわち、何かしらオメガの民に貢献できる知識を返してくれることに繋がる筈だ。
彼の眼差しにはその希望が満ちていた。
それが最初から嘘だなんて端から疑ってもいない。寧ろ、逆に自分の星を追い込むための道具になるなどきっと思いも寄らないだろう。
眩しいくらいの真っ直ぐさに、チクリと胸が痛む。しかし、任務は任務。私は努めて偽りの仮面を自分に張り付かせた。

「では、質問させてください。貴方は一体どうして———

そして、表向きは強さの秘密を解明するため。
実際にはその脅威を分析して対抗するため。私はオメガマン・アリステラへと質問を始めたのである。

結果、その過酷な少年時代から、突然の力の変異。自らの特性への自覚と理解。また、更なる力を得るための自己研鑽の日々……等と言ったここに至るまでの話を彼の口から聞いた私は、あまりにも突拍子のないオメガの民の特性に何度舌を巻いたことか。余りにも次元の違いすぎる話に頭が追いつかない、なんて初めての経験である。
しかし、咄嗟に飛び出た疑問に対しても、嫌な顔一つせずに答えてくれるアリステラの態度は真摯そのものだった。私は頭で分かるのを諦めた反面、こんな彼だからこそ逆境の中で見事に咲き誇ったのだと感心した。
と、同時に私には彼の話の中でよく出てくる名前に引っかかりを覚えてしまう。
一番多く出ていたディクシアこと『オメガマン・ディクシア』は彼の双子の弟だから当然の話だ。むしろ彼の半生を語るには欠かせない人間であろう。
だが、次によく出てきた名前に私はなんとも言えない気持ちを抱いてしまった。
「マリキータとは、六鎗客の中でも……
「マリキータの奴に何度も……
「その度にマリキータからは」
一体何度彼の口から名前が出たであろう、『マリキータ』ことマリキータマンに関しては、もちろん調べはついている。
八角形リングではアリステラが現れるまでは敵なしだったこと。アリステラ親衛隊ことオメガ・ケンタウリの中でも一、二を争う実力者であること。また、アリステラへの忠誠心は自他共に認めるもので、自称右腕を名乗っていること。
実に多くの情報が入っている。
ちなみにこれらは意図して調べたことではなく、居酒屋で飲んでいた際に得た物だ。
酔っ払い客の恋人がマリキータマンの追っ掛けらしく、いつも彼の話題で嫌になる、と盛大にボヤくのに対し「うちもそう!」「俺も俺も!!」と盛り上がっていたのは今でも鮮明に覚えている。その際、上記以外にも随分と女性ファンが多いのだなと心の底にメモしたものだ。
そんな女に軽そうな男の名を連呼するアリステラに、私は些かモヤっとしてしまった。何より、彼の名を口にする時の眼差しの優しさが妙に気になる。

正直に言えば、面白くなかった。

このほんの短時間の間に、私は目の前のオメガマン・アリステラという男に随分と惹かれていたようだ。なので、肉親である弟はさておき。『マリキータ』と柔らかな声で放つ度に、心がささくれ立ってしょうがなかった。

あらかたオメガの至宝の力の根源を聞き出した私は、ここでほんの少し意地悪な質問をすることにした。

「ところで、オメガの民は男性妊娠ができると聞きますが……もし、貴方が次世代を設ける際はそのような選択もありと思いますか?」

「は……?」

オメガの民が男性も妊娠が可能なことは近隣の星の間でも有名な話だ。
過酷な環境で宇宙に送られた彼等の一族は、少しでも出生率を上げるために男性でも妊娠できるように自分たちの体を弄り、研究し、やがては仮腹なるものを腹に人工的に生成するまでに達した。
おかげでオメガの危機的状況は緩和し、むしろ『名の知れた超人の祖先はこの時に男腹から生まれた子供だった』と都市伝説まであるのだ。

なので、正直強さを求める彼が、強き子供を拵える可能性が高いと噂の男性妊娠に対し、どのような感想を抱いているのか。素直に聞いてみたかったのもあるが、何よりその潔癖そうな顔が性的な話題にどう反応するのか見たかった。
さあどう出る?
これまでの会話から怒鳴られることはないとたかを括った私は、相手の出方を見た。

すると、しばしの沈黙の後。

私は目の前の仮面からモアアッと湯気が立つのを見てしまった。「え!?」と思った時には、マスクから覗く瞳が酷く揺れていて。狼狽しているのが見て取れる。それにしても、これは余りにも過剰な反応だ。

……もしかして、ご検討中でしたか?」

知らずに漏れた言葉に他意はなかった。しかし、肩をビクッと揺らす様は「はい、そうです」と言っているのと変わらない。そのあからさまな反応に、まだどちらかとも聞いていないにも関わらず———私は彼が出産する方だと確信した。

つまり、この男には雄のつがいがいる。

オメガの至宝と敬われている男が。
屈強な体と冷たい仮面で他者を圧倒する男が。
また、そんな見た目とは裏腹に身の内には暖かい魂を秘めた男が。

「ッ———!?」

実は誰かのオンナだという事実に、頭をハンマーで殴られたような衝撃が起こる。
そして意識した途端、私は自分の下半身が熱くなったことに気付いた。

「いや、その……男が出産することは、オメガの民として代々伝わってきたことであり……それはつまり、宗家当主として受け継ぐべき伝統の一つと同じ、とオレは思っていて。だから……

しどろもどろな言い訳は、逆に肯定しているのと変わらない。

……つまり、貴方には誰かの子供を産む覚悟があるんですね?」

「っそれ、は……!」

核心をつく台詞に分かりやすく言い淀む姿は、もう答えを聞くまでもなかった。
目線を泳がせる瞳は羞恥に満ちていて、きっとマスクが無ければ可哀想なほど赤面した素顔が顕になっていたはずだ。太ももの上に置いた手が、手持ち無沙汰にソワソワと腰布を弄っている。
まるで恋人の存在をバラされた生娘のように。
……ッ」
嗚呼、彼にはリングの上以外でも、その腰布の下の逞しい腿を開く相手がいるのか。
黒いタイツに包まれた肌を暴き、分厚い臀部を両手で押し開き、本人同様慎ましい秘部に醜い肉棒を押し込む相手がいるのか。
考えれば考えるほど腹に湧き起こる負の感情が整理できない。
スパイとしてあれだけ感情コントロールの訓練をしてきたにも関わらず。

「へえ。オメガの至宝様は、もうとっくに男の味を知っているんですね?」
「っ!?」

抑えきれなかった暴言が、戸惑う顔を見てますます拍車をかける。

「強い子供を成すためならば、貴方は何度男の精液を腹に受けたんですか? それとも、上の口でも?」

「きっと大層立派なモノをもっているでしょうに……使う役目がないのは何とも勿体無い。しかし、オンナには不要の長物ですからねえ」

「出産後、その乳も出るのですか? なら、貴方の男に赤子が吸いやすいように、乳首を予め大きく育ててもらわないといけませんよ?」

次々と出る失礼な発言に合わせて、目の前の男の体が強張っていくのが分かる。
それもそうだろう、産まれながら高潔な立場の人間だ。きっとこんな下賤な言葉を浴びせられるのは初めてに違いない。ましてや彼にとってはかなりセンシティブな内容である。何も知らない他者に踏み込まれるなんて想像すらしたこと無い筈だ。

「貴方の処女膜を破った男が誰なのか、とても気になる……さぞかし、いいモノを持っている相手だったのでしょう?」

「ッな、ん、だと……ッ!」

我ながら、なんとおぞましいセリフだ。
彼とお相手のどちらも侮辱する言葉へ、流石に黙ってはいられないと思ったのか。

「貴様……言うに事欠いて、なんという下衆なことを……!」

グッと握りしめた拳に合わせて、ブワッと部屋の空気が殺気立つ。
仕方ない。遠回しと言えど、体だけで選んだと言われたようなものだ。
当主たる自分が「出産しても良い」と大きな決意をする足るほど大事な番を、会ったばかりの異星の民に貶された。見過ごせないのは当たり前の感情である。
しかしこの時の私は、彼が相手を思いやること自体が酷く心をざわつかせた。
だからか、私の口からは謝罪の代わりにいやらしい言い訳が飛び出てしまう。

「おや? 私はいいモノと言っただけですよ? それは力や技術、超人としての腕前や知性など色々な面を含めて『いいモノ』と称したつもりなのですが……貴方は一体どのように解釈されたのです?」
「それ、は……っ」
上手く逃げ道を作った言い方をした自覚はある。案の定、こちらの言い分に口篭る彼からは、さも自分の想像を恥じるような空気が漂っていた。震える体は、綯(な)い交ぜになった怒りと羞恥を抑えるためか。
その恥辱に塗れた眼差しに、私はゴクッと唾を飲み込んだ。下着に締め付けられた股間が痛い。鋭い視線が劣情に潤んだ時から、私の性器はまるで若者のように張り詰めていたのだ。今も、必死に言葉を探す姿に先走りが滲む。

「図星みたいですね? これじゃあまるで……貴方自身が、男に抱かれるのを求めているようだ」
「ッなん、だと……
「雄の肉を喰らうことを知っているからこそ、そんなはしたない連想をしてしまう。……違いますか?」
「ばっ……バカな! そんな理屈があってたまるか!」
「でも……貴方のその濡れた瞳は、男を誘うメスの目ですよ?」

ほら……
私はそこで、自分の足を大きく開いた。
ドクドクと脈打つ屹立はズボン越しでも分かった筈だ。

「なッ……ど、どうして……ッ?」

戸惑いながらも凝視する視線に背筋がゾクゾクする。
どうして? 男がこうなる理由なんて一つしか無い。
私は徐に立ち上がると、股間の肉棒をそのままに彼との境になっているテーブルを避けながら、その側へと近付く。

「そりゃあ、当然、貴方にそそられたからに決まってるじゃないか?」

見せつけるように股間に手を這わせながら、信じられないと大きくなる瞳に自分の姿を確認した瞬間。


「アリステラに醜いものを見せるな。クズが」

「はぁ? ……ッぐは!!??」

私は首に急激に締められるのを感じた。
そして、殺意をありありと表した罵声と共に強くなる圧迫に、酸素不足の体が呆気なくその場に崩れ落ちる。結果、床に這いつくばった私はアリステラの元に駆け寄る第三者の足を見つめる他なく。



「ま、マリキータ! お前、不意打ちでこんなこと、やり過ぎじゃっ!?」
「アリステラ……見てみろ。俺の胸のマークを。ロールシャッハが見透かした通り……こいつは◯◯星のスパイだ」
「確かに、これは……
「何より、“俺のアリステラ“に散々辱めるようなことを言いやがって! ましてや、こんなお粗末なモノを見せて……クソッ、忌々しくて、いくら殺しても足りないぜ!!」
「お、おいっ。そこはそんなに怒る問題じゃ……
「アリステラ! いくらお前の言うことでも、その点をおざなりにするのは許せないぞ!」



二人の言い争いをぼんやりと聞きながら、私は歯痒さを感じながらも意識を失った。