扉の向こう側へとドクターの姿が見えなくなると同時に、ムリナールは再び深く息を吐いた。
腕に残る感触。抱き止めた身体、その柔らかさに眉を顰めた。
いくら種族が異なると言ってもこれほどなのか、それともドクターが内勤ばかりだからか。
「
…………」
どちらかと言えば幼い頃の姪達に近いとも言える。それでもクランタの身体付きよりも遥かに軟弱で脆弱、いとも簡単に折れてしまいそうな頼りなさだった。
『なにも
……』
そのとき、隣の部屋から聞こえたひとことに耳が反応をしてしまった。
『
――抱きしめなくても良いだろぉ
……』
聞き耳を立てたつもりは無くとも飛び込んできたそれ。
抱き留めた際の手触りと体温を思い返している際に届いた、羞恥が混じる声と言葉。
誰もいない執務室、他者のいない部屋はしんと静まっており些細な物音でも響くくらいだ。
聞こえるとわかって言ってるのか、そうでないのだとしたら迂闊にも程がある。
そしてそんな言葉ひとつで感情を揺さぶられてしまう自分自身にも、ムリナールは呆れてしまった。
誰もいないことは理解しているがそれを隠すように手で口元を抑えた。
うめきそうになる喉を、眉間に力を込め、息を呑み、そして深く息を吐いた。
「
……おっしゃる通りだ」
あつい。顔面の熱を自覚する。
自身の行動の不用意さを恨んだ。
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.