初音
2023-09-18 09:36:44
3371文字
Public BG/B面
 

アンソロ告知及び大玉文章展示

大玉結婚アンソロを出します! という告知です。この時点で色々無理な方はバックプリーズ。
サンプルの一部と、結婚をテーマにした小話も一緒に載せています。



結婚か!?なんて冗談は、あたりまえだけど本気にしないことが前提で成り立つ冗談だ。
大が俺の部屋に転がり込んできて、なんだかあいつの手料理ばっかり食い始めて、出ていく気配の無い男に、最初は嫌味も兼ねての突っ込みだった。もちろん言われた大はケロッとしていた。どこまでも神経の図太いやつだと思ったもんだけど。

さて、翻って今である。
結婚か!?の冗談は、今完全に失敗したなと思っている。
大が脱ぎ散らかしたコートがしわくちゃになる前にと、優しい俺はそれをハンガーにかけてやろうと思った。そのポケットに、なんだか大きな何かが突っ込まれていることに気がついた。
入れておくには少々サイズがデカい。なんだろうと思って勝手に取り出したのは、まぁ俺が悪いんだろうけど。いやでも俺たちの間にそういう遠慮、今更だし。
「なんだこれ……?」
それは、ベルベット素材の青い手のひらサイズの立方体だった。そう、まるでドラマやなにかで見る、ぱかっと開けたら指輪でも入っていそうなやつ。
「あっ!」
素っ頓狂な声を上げて、大が俺の手のひらからその箱を奪い取った。いつにない慌てぶりに、俺は思わず言ってしまった。
「結婚か!?」
と。しかしてひと笑い起こることもなく、顔を真っ赤にした大が「あ、おう……」とかゆるゆるな微妙な返答を落として、場は沈黙した。
いや、大事なもんならこう、分かりやすいところに入れとくなよ。
入れといても良いけどコートはちゃんとしとくとかさぁ。ベロベロに酔って俺の家に来た段階でまぁ忘れてたんだろうけど。
「あー、たんま。ストップ」
俺は片手を上げて審議に入る。
……別れ話? それとも俺あて?」
ここははっきりさせておく必要があるだろう。俺の問いかけに、顔を真っ赤にしたまま大が何度も首を振った。
「なんで別れ話が出てくるんだよ! 玉田あてに決まってんだろ!」
「いやほらその想定もしておかないと」
「するな!」
がるる、と噛みつきそうな勢いの大に、落ち着けってと慌てて制して、俺はまた片手を上げた。
「分かった。見なかったことにする、うん」
……は?」
きょとん、と大が不思議そうな顔をして、俺を見た。あ、やっぱりこいつ今この勢いで渡そうとしやがったな。そうはさせるか。
「サプライズとか考えてたんだろ? 俺そういうの大好きだからさぁ」
「え、いやちょっと玉田、」
「お前がそれをどんなふうに渡してくれるか、俺楽しみにしてるな!」
じゃあそろそろ飯にでもするか、と笑いかけたら、大は小箱を持て余した手をそっと後ろに回して、「……うっす」と元気のない返事をした。

さて、バカバカしいサプライズチキンレースの始まりである。
受けとり拒否の話をしてない時点でもうちょい喜べよな、ばーか。