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初音
2023-09-18 09:36:44
3371文字
Public
BG/B面
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アンソロ告知及び大玉文章展示
大玉結婚アンソロを出します! という告知です。この時点で色々無理な方はバックプリーズ。
サンプルの一部と、結婚をテーマにした小話も一緒に載せています。
1
2
3
楽園の花婿達
シャレにならないくらい暑い。飛行機から降り立った玉田の頭に浮かんだのはその言葉だった。東京と同じ日本とはいえ、普段とはあまりに違う過剰な湿度をまとった空気がぺったりと玉田の腕にまとわりついた。
「あっちー
……
」
「沖縄の暑さ舐めてたわ」
「石垣島、な」
沖縄本島から南西へ四百キロ離れたこの島の暑さは別格だ。玉田も大も、人づてに聞いてはいたものの、自分で体感すると誇張でもなんでもなかったことがよくわかった。空調が整っていない通路だと立ってるだけで汗が出る。
「空港ちっちゃ」
「羽田ばりにでかかったら逆に驚きだろ」
「確かに。そりゃそうか」
降り口から通路を通って荷物カウンターへと向かう、その通路の短さに大は驚いた。海外暮らしが長い大からしてみれば当然だった。
十月の平日ということもあり、疎らな人が荷物カウンターに集っている。大と玉田は、アナウンスから間もなくすぐに回ってきた大きめのスーツケース二つを取って、出口へと急いだ。
「送迎の人まだ来てないっぽいな」
辺りを見回した玉田が出口付近にあったフードコートの椅子に腰掛けると大もそれに倣って隣に座る。空調が効いているとは言え、湿気ばかりはどうにもならない。呻く二人の目に入ったのは見たこともないジェラート屋だった。
「聞いたことない店、だよな?」
「ない。ちょっと見てみるか」
先へ進む大の後を玉田はついていく。店舗の前、ショーケースに並んだ色とりどりのジェラートに二人の心が踊った。
「紅芋、アセロラ、マンゴー、パイナップル
……
迷うなぁ」
「ミルクとチョコも美味そう」
「王道っていいよな。絶対外さねえし」
「試食なさいますか?」
味を決めきれない二人を見かねたのか店員が声をかける。その言葉に甘えて玉田は紅芋味、大はミルク味が一口分乗ったスプーンを店員から受け取った。
「うまっ」
「んー」
甘さ控えめの滑らかなジェラートが舌の上で溶けていく。喉を流れる冷たさが二人をわずかに癒した。
「俺、紅芋とラムレーズンのダブルでお願いします」
「俺はミルクのシングルでお願いします」
「かしこまりました」
店員がそれぞれの注文分をコーンに乗せる。手渡されたジェラートを受け取って席に座ると、二人はそれを口にした。
「大、一口くれよ」
「じゃあ玉田のも貰っていいんだよな?」
「やだよ。おまえの一口でけえんだもん」
玉田は一生懸命自分のジェラートを大から遠ざけながら笑った。大は頬を膨らませながらも、玉田にジェラートを差し出す。玉田は自分のスプーンでそれを掬って頬張ると満足そうに頷いた。
「あーうめっ」
「ずりぃ」
「はいはい、俺のもどうぞ」
「
……
どうも」
大はこれ見よがしにラムレーズンの一画にスプーンを突き刺して、玉田のコーンの上三分の一を持って行った。
「おまっ、だから嫌なんだよ。お前にあげるの」
「んーラムレーズンも紅芋もうめぇべ」
「ったく」
「玉田様ー。玉田様いらっしゃいますかー」
少し訛った、中年の男性の声がする。玉田が声の方に目を向けると、宿泊先のホテル名が下に書かれたボードを掲げた男性が玉田達を探していた。
「やっべ、早く食わねぇと」
「あ、すいませーん。すぐ食べ終わるんで待っててもらっていいですかー?」
「バッカ、お前声でけぇよ!」
大の声に気づいたのか、送迎係の男性が玉田達に歩み寄ってくる。こちらを確認して、少し言葉を交わすと心得た様子で男性は入り口へと戻って行った。あまり待たせても悪いと、二人して少し早めにジェラートを食べてゴミを捨てる。駆け足で入り口に行くと、先程の男性が待っていた。
空港から遠ざかっていく車に揺られている間、窓から見えたのは緑の山々と対を成すような青い海だった。民家の屋根の赤瓦や、植え込みの黄色い花も全てが際立った色をしている。まるで外国に来たようだと玉田は感じた。一方、隣に座る大は寝ている。その肝の太さに玉田は呆れを通り越して感心していた。大の帰国と楽器のオーバーホールにあわせて急いで立てた四泊五日の日程の濃さを思えば、確かに今寝るのが正しいだろう。会社員として有休を貰える玉田とは違い、大に明確な休みはない。海外暮らしを経て随分と逞しくなった大の寝顔には、どこか昔と変わらないあどけなさが残っていた。
続く
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