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破壊
2024-09-25 18:28:14
4995文字
Public
アポストラーチェ:補足
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詳細設定・後世に伝わっている文献内容 等
「僕は病気なのだ。生まれながら、そのように」
彼を裁いた者の手記や被害者となった女性が残した手紙の状態、使われていたインクや紙、またアポストラーチェ本人が記した記録から推察するに、およそ千三百年代後期、もしくは千四百年代の始まりを生きていたと考えられる。いずれも手紙や手記の状態は良く、彼の死後も厳重な保管がされていた事が伺える。アポストラーチェが描かれた肖像画はひとつも残っておらず、同時期に活躍していた画家の日記に数枚の走り描きと、床下には隠されたようにタイトルの無い描きかけの絵画が残されており、特徴を照らし合わせるに絵の中の男がアポストラーチェ・ルプではないかとされている。どれも顔の中は空白で輪郭だけをなぞったものだった。また、画家の日記にはこうも記されている。
——
『彼の方は作り物のようである。暗闇の中で生活をする。彼は静寂の中で呼吸をされる。あの御方はまことに人であろうか。私と同じものが詰まり、同じものを見ているのだろうか。こうして筆をとり思い画こうにも姿がうつらない。記憶のどれもが間違っている。きっと彼の方の姿絵はどこにも残されないのだろう。恐ろしい。真におそろしいのは彼が人である事だ。』<画家アウレリアンの日記より>
アポストラーチェは生粋の猟奇的連続殺人鬼として現代に残されているが、そのどれもに精神疾患の、という枕詞がついている。当時においても見解は同じようで、アポストラーチェを裁いた教皇は彼を『悪魔によって精神を蝕まれ病魔に侵された憐れな被害者』として定め、毒薬を以て救いを与えた。しかし当時の国内情勢を顧みるに教皇を含む聖職者は穏健派として王族に近しい血を持つルプ家の子息を大罪人として裁く事を恐れたのではないかとの諸説もある。一方で、残された被害者となった女性達から家族や友人に充てた手紙には一切の救護を求める内容や逃げ出したいと考えるそぶりが無かった為ともされている。それらのものやアポストラーチェ本人の記録が朽ちる事のないよう保管され、またこれ程にまで凄惨な事件であるにもかかわらずルプ家は王家の隣に在り続け、何代も変わる事無く貴族達から支持されていた事を踏まえるならば、アポストラーチェという人物の評価はおおよそ『心の壊れた憐れな被害者』であったと謂えるだろう。
――
『アポストラーチェ・ルプには重大な欠落点が存在する。それは後天的症状ではなく、母親の血液を浴びて生れ落ちたときからだ。彼はそうである事でしか己を保つ事が出来なかった。ルプ公国が災いに満ちた翌年、雪害の明けた1月に彼の人はお生まれになられた。神命を受けておられたのだ。私に出来る事はあの美しいかんばせが二度と光を浴びぬよう深い闇に置いておくのみだ。』<教皇ヴィルギリウの手記より>
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『安心して、おかあさま。ツドラシュ卿はとてもお優しい方です。わたしは卿のおそばでお力になりたいと思っています。かれはとてもお可哀想な方なのです。(中略)アポストラーチェさまがお望みになるものは静かで乱される事のないお心だけなのです。』<ネデレアから母親に宛てた手紙より>
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『これは私が望んだ事なのです。あの方は一度たりとも私に強いた事はありません。私自らが卿にお願いをしました。私はあさましい女です。私の死後もどうかあの方と共にありたいと不敬にも願ってしまいました。彼女達もきっと先で待っているのです。悪魔はきっと私の中にいるのでしょう。』<ジャネッタから兄に宛てた手紙より>
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『ツドラシュ卿。あなたのおそばにいる赦しを、どうぞこのイオヌツァにお与えになってください。短な刻でも構いません。それでもよいのです。最後に卿の御姿を焼き付ける事が出来るのなら、イオヌツァはきっと神にも満ち足りた心地になるでしょう。わたしは卿の一部になりたいのです。どうぞこの身を捧げる事をお赦しになってください。いつまでも待っております。』<イオヌツァからアポストラーチェ・ルプに宛てた手紙より>
男の治める地は公国であるルプの所持する領地のひとつで、それに伴い普段は子爵を名乗っていた。ルプの血を辿るといくつかの代にて王族と血を繋いでおり、その絆を確固たるものとして王国に臣従する公国を収めていたようだ。ルプの次男であるアポストラーチェを3番目の姫と婚姻させる動きの記録も見つかっているが、事実として姫は他国へ嫁ぎ、男は生涯子を成さずひとりきりであった。
アポストラーチェの治める領地は現在も国や名前を変え存在しており、中に残された歴史書からもなにがしかの失策や大きな災害、咎められるべき点などは無く、穏やかで豊かな地として記録されている。アポストラーチェの行った政策のひとつは今も尚続いており、領民の生活を守る為だという整備や砦は確かに過去の中で人々を救ったとも記されている。男は五十八名の女性を飼い殺し拷問にかけた殺人鬼であるが、ノブレス・オブリージュを持つ賢人であった事に間違いはない。
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