ツキシキ
2024-09-19 20:13:00
2434文字
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PIERROT+まとめ

2作品。二次創作。コウ×カナ、アオイ×ユエ。


コウ×カナ


 痣と痕。初めてコウの手に触れた時、飛び出た声は心配でも驚きでもなく減らず口だった。

「火傷とかするんだ。プロのくせに」

 焼けた瞬間に肌がぶつぶつと泡立つ様子をすぐにでも想起できそうなほどその怪我は生々しかった。足りない皮膚を補おうと引き攣れた手の甲がまた痛々しかった。私が零した嫌味だって悲壮さから目を背けたいがためなのかもしれなかった。
 彼はその時も確か、唇の端を持ち上げて馬鹿にするみたいな笑い方をしていた。

「焼けない肌もそれはそれで不気味デショ」
……案外ウケルかもよ。場所が場所だし」
「ハハ」

 乾いた笑いが火花の後みたいにふっと落ちた。
 傷がつけばつくほど、“普通”の目から遠ざかる。人だったものは化け物へ、演者はより演者らしくなれる。事故を起こさないことは当然プロとして意識すべきことだったけれど、自身の怪我や欠損を強みにする者も一応は居た。……ある意味で前向きなのかもしれないし、ただ執着しているだけなのかもしれない。私はあいつらじゃないからよくはわからない。

「手当しないの?」
「メンドウくさい」

 そう答えたコウは飄々としていた。タトゥーの端々から見え隠れする古傷もまるで演者の化粧の一つのようだった。それがなんだか、不満で。ギュッ、と、握る手に力を込めてやってもなおその表情は動かなかった。

「痛いんですけど?」
「握力には自信ある。鍛えてるから」
「知ってる。だからやめマセン?」
「なんで」
「それはこっちの台詞」

 私だって理由なんてなくて、無理に名をつけるなら衝動とかイラつきとか八つ当たりとか、多分人はそういう風に言うのだろうけどどれも当てはまらない気もした。ただなんだか無性に、この感触を覚えたいと思った。デコボコに抉れた傷跡だらけで平気そうに焼け爛れている、彼の骨ばった手のひらを。

 ────痛いなら振りほどけばいいのに。

 そう突っぱねられない私は、コウ以上にコウへ執着しているようだった。
 ギュウと力を込め続けてさえいれば、彼の焦げ付きにだって、なれる気がした。




~END~