著者: 雷歌/らいと
2018-11-29 16:02:55
3435文字
Public バンやろ
 

【bnyr / 宗翼宗】11月29日の小説用お題ったー。より

らいとの宗翼宗へのお題は『誰も知らない二人だけの秘密・罪なのか、それとも・好きだと言わせてみろよ』です。
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※時系列は別。


3.好きだと言わせてみろよ

 何が嬉しくて俺は今、男から壁ドンされているのか。
 眼前に迫る宗介の顔を見ながらそんなことを思う。
 クラスメイトの女子からは壁ドン憧れるよねー、誰からされたい? 巻くんいいよねー、なんていう話を聞いたことはある。黙ってれば顔が良いのだ、そりゃそうだろう。
 けれど俺は、したい方でされたい方ではない。この状況に、焦りを覚えはすれど嬉しさは微塵も――ない、といったら嘘になるけれど、とにかく俺はしたい方だ。
「ええと、宗介くん? 何怒ってんのかな?」
「ああ?」
 わかんねえのかよ、とでも言いたげな顔だ。
 正直言うとわからない。というか、今日は一回顔を合わせたぐらいで、その後はスタジオに来るまで行動をともにしていない。昼に会ったときはこんな不機嫌ではなかったはずだ。
 なお、スタジオなのだからもちろんのこと大和も徹平もいる。二人はこちらのことは気にせず何か雑談中である。
「すいません、わかりません」
 諸手をあげて降参のポーズを取る。こういう時は早々に折れた方が得策だ。今日の練習に響きかねないから。
 宗介は舌打ちをしてから、俺から離れた。
「いや、それで、怒ってる理由は?」
「根性ねえ姿に怒りも失せた」
「ええー? 嘘でしょ?」
 俺たちが離れたのを見て、他のことをしていた大和が喧嘩終わったのか? なんて呑気に聞いてくる。徹平は、そもそも喧嘩だったんすか、とのたまう。
「ちょっと聞いてよー、怒ってる理由聞かせてくんないんだよ宗介ってば」
「ああ! 宗介は、翼が今日、告白受けてたのを怒ってるそうだぞ」
「は?」
「なっ、てめえクソボーカル!」
 確かに、放課後に女子から呼び出しを受けて話を聞きにいった。聞きにいったがそれは、俺に対する告白ではなく、宗介に対してだ。良い感じの仲になりたいから協力して欲しい、という話だった。
 俺は苦笑したい気持ちを抑えて、その女子に笑いかけた。
「宗介と恋人になると苦労すると思うなー。あいつはギターしか好きじゃないからね。その点、俺は女の子大好きだし大事にするよ。俺にしておけば?」
 なんて、心にもないことを言って。 
 それを、聞かれていたのかもしれない。
「あれは、宗介に煩わせることなく女子を遠ざけるためであって」
「そこじゃねえ」
「え、じゃあ、何?」
 宗介はしばらく何かを考えたようで、少ししてため息をついてからぽつりと言った。
「てめえは、女子に対してだったら簡単に言えんだな」
 なにを、と首を捻ったら思い切り睨まれる。もうちょっと、もうちょっとなのに本当に怒ってる理由が見えない。俺が鈍いのか? 否、宗介がわかりにくい。だけ、の、はずだ。
「なんかもう見てらんないんで、さっさと練習始めません?」
「空気読めよ徹平! ここは、翼は宗介のこと好きなのかって聞くところだぞ!」
「は?」
「クソボーカルてめえホント、歌以外黙ってろよ」
 徹平は呆れたようにため息をついている。
 俺は、なんとなくわかってしまった。けれど、まさかそんな風に宗介が思う日がくるとは思ってなくて驚く。いやだって、いつも何に対しても自信たっぷりで前を歩く宗介だから、こちらの言動で不安を抱かせるなんて思いもしないだろう。
 というか、いや、待て。
「そもそも、宗介からも好きとか言われたことないけど」
 付き合いだしたのは、確かにお互いの想いが通じあったからだ。恋人として多少のこともしてはいるが、そういえば一度も聞いたことはない。宗介からは。
「ハッ、そんなの。言わせてみろよ」
 ニヤリと笑みを浮かべて言う宗介。ここは怒るというか強請るところかもしれないが、らしいな、と思ってしまってそんな気は起きない。
「じゃあ宗介も、俺に言わせてみれば?」
「ああ?」
 言うのはやぶさかでないが、俺だけ、というのは何か勝負に負けたような気がして癪だ。宗介は眉を寄せたが、いいぜ、と頷いた。
 どちらが先に言うか、大和と徹平が掛け始めたことは聞かなかったことにしておこう。



end.