澄ひろえ
2021-07-25 20:37:52
6400文字
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希有な再会と決闘と

ククゼシ2人旅ツイート小説「海賊の洞窟編」を加筆、修正した物です。 ログ見逃した人どうぞ。最終ページは後書きです。

「まさか、こんな所に洞窟があるなんて」
 ゼシカが驚いた声を上げた。
 ここはトラペッタとリーザスをつなぐ関所の橋の下。俺たちの船でやっと通れるくらいの幅の川を昇ってきた。そして、橋の下に隠されるようにその洞窟の入口は存在していた。
「まぁ・・・こんな所に船で来ようなんて誰も思わないだろうしな」
伝説の海賊、キャプテン・クロウの見つけたお宝の中に不思議な海図があるらしい。
 その情報を得た俺達はそのアジトへとやってきていた。
「リーザス地方にこんな所があったなんて、旅でもしなければ分からなかったわね」
 ゼシカはまだ驚いている。俺達は船をゆっくりと洞窟の中へ侵入させた。
 さすが、海賊のアジトだけあって、桟橋などもちゃんと配備されていた。船を停泊させて、桟橋へ降り立つ。周囲をぐるりと見回した。
「へぇ・・・思ったより、中は広いんだな」
 もう一隻くらい船が停められそうだ。
 さて、情報によるとここにはどうやっても開かない封印された扉があるって話だが・・・。
「それにしても、こんな所にも魔物達が入り込んでるんだな」
 伝説の海賊がいなくなってどれだけの月日が流れたのか解らないが、すっかりとそこは魔物の巣窟になっていた。
 取りあえず目に付いた扉に入る。しかしそこは倉庫のようで、特に変わった場所は見受けられなかった。俺達は倉庫を出た。
「あれかしら?」
 ゼシカが指さしたのは反対側の一枚の扉。俺達は扉に近づいてみる。
 鍵穴だけがある、取っ手も何もない扉。そして、かすかに感じる魔力の波動。試しに押してみるがぴくりとも動かない。
「・・・そうみたいだな」
 俺はメディ婆さんから託された鍵を取り出した。見た目は単純構造の鍵ではあるが、先端の金属が特殊な金属で出来ていて、差し込んだ鍵穴の構造に合わせて金属の形が変わる・・・らしい。だからどんな複雑な構造の鍵でも開けてしまうんだとか。
 この扉も例外ではなかった。鍵穴に差し込み回すと何の抵抗もなくカチリ、と音がした。
 扉を押してみる。微かに軋む音を立てて、ゆっくりと扉は開き、奥へ続く道を示す。
「やったわ・・・!」
 声を上げてゼシカは先へ進もうとする。と、その時、桟橋の方で大きな音が聞こえた。俺はゼシカを手で制した。
「待て、誰か来る・・・!」
 俺達は桟橋の方へ目を向けた。一隻の小ぶりな船が今まさにこのアジトに乗り込んできた。俺達の船と反対側の桟橋に横付けし、降りてくるのは。
「何処かで見た顔だと思ったら、ビーナスの涙をプレゼントしてくれた親切なご一行様じゃないか。珍しいところで再会したもんだね」
 以前、悪徳の町パルミドで馬姫様が攫われ、闇商人に買われた事件があった。俺達は闇商人に掛け合ったが既に別の人間に買われてしまっていて・・・。
 その時馬姫様を買ったのがこのゲルダと言う名の女盗賊で、俺達は交換条件としてビーナスの涙という宝石を魔物の巣窟から取ってくる羽目になったのだった。


 女盗賊ゲルダ・・・一体どこでここの情報を?パルミドの情報屋あたりか?
 聞けば彼女もキャプテン・クロウのお宝を狙っているらしい。「海賊のお宝を手に入れるのは早い者勝ちってことで」そう一方的に喋って、彼女はさっさと扉を通ってアジトの奥へ歩いて行ってしまった。
 ・・・って、この扉を開けたのは俺達なのに、何で先に行くんだよ!俺達も慌ててゲルダの後を追った。
 中は広々とした入口とはうって変わって細い通路と沢山の小部屋で構成されていた。一部屋ずつ確かめてみるが、先に進めそうな道が見当たらない。
 最後に入った部屋は、どうやらキャプテン・クロウの自室であった場所らしい。壁には色あせた旗や船の操舵が飾ってあった。
 そして、そこではゲルダが考え込んで立ち尽くしていた。
「アタシの勘じゃこの部屋が怪しいと思うんだけどねぇ・・・」
 ゲルダの言葉に俺は部屋を見渡す。ぱっと見怪しいところは見当たらない。まぁ、伝説の海賊の自室だし。何らかの仕掛けがあってもおかしくはないが・・・。
 しかし、罠が仕掛けられている可能性もある。ここは慎重を期すに越したことはないな。
「何かしら?これ、動くわね・・・えいっ」
 唐突に突然にゼシカが壁に掛けられていた操舵を回し始めた。
 おーいゼシカさーん。もう少し危機感というものを持って頂けませんかねぇ・・・。
 と、ガコン!と大きな音がして、部屋が振動した。俺は咄嗟に身構える。すると、一部の壁がゆっくりと回転し、開いていく。隠し回転扉になっていたのか!
 開いた空間をおそるおそる覗いてみる。ひんやりとした風が頬を撫でていく。見る限り同じような通路が続いていた。罠の気配も感じられない・・・敵の気配は感じるが。
「なるほどね。こういう仕掛けになってたって訳か。それじゃお先に行かせてもらうよ」
 そう言うと、ゲルダはさっさと通路の先へ行ってしまった。
 だーかーら、仕掛けを解いたのは俺達なのに何で先に行くんだよ!