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seika_ashe
2024-09-02 21:21:21
5328文字
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蛇狐の戯れ【無貌の誘い】
煽りに軽率に乗るのはやめましょう───
スペシャルサンクス
前回から引き続きアスナショウコさんの作品「アンシーリーコート」及び「レゾンデートル」の世界観とをお借りして書いております。
友人宅創作キャラ、白崎幸葵をお借りしています。自宅が煽ってごめん。
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3
「で、何だよお願い事って?戸張が持ち込むようなのって大抵害悪プラス面倒なイメージしかないんだが」
「ちょっふぉまっふぇね、いまおやふたふぇふぇるふぁや」
「双鶴さん、ステイ。気持ちはわかりますが戸張さんがこんなんなのはいつもの事でしょう。一々キレてたら貴方胃だけじゃなくて血管破裂しますよ」
自分から話を持ち出しておいて、いざ聞く体勢になったら間食を取り出すこのどうしようも無い男の事を、浅葱は殴り飛ばしたくなる。もごもごとおにぎりをハムスターのように詰め込む征芽へビンタでもお見舞いしてやろうか、と立ち上がった浅葱を幸葵は必死に宥めすかして何とか鎮火させた。
「戸張さん、貴方いい加減にしないと双鶴さんが本当にキレますよ。この人がキレたら面倒くさいの貴方ならわかってるでしょう?」
「へぇへぇ話しますってばぁ。昴ぅ、おにぎり美味しかったぁ♡また作ってぇ♡♡」
「お、良いぞ〜。次はもっと沢山作っとくな〜」
合間合間に惚気を挟むこの職員室きってのバカップルを本当にどうしてやろうか、と爪が皮膚に食い込む程拳を握りしめている浅葱を抑えつつ、幸葵は諦念混じりの溜息を吐き出して窓の外遥か彼方を見つめた。この一触即発な室内の雰囲気とは対照的に、今日も空は綺麗である。
「双鶴くんさ、魅了系に耐性あったよね?ちょっと厄介案件でさ、魅了耐性あるやつ探してんの〜」
「断る」
「んえ〜〜〜〜そんな事言わないでよ〜〜〜〜お願いだからさ〜〜〜〜!!」
「嫌だね!魅了使える奴らってのは大抵ろくでもないんだよ!!大体魅了に耐性あるのは俺だけの話じゃねえだろ!!」
バンバンと机を盛大に叩きながら浅葱は猛抗議する。さもありなん、という顔で幸葵は浅葱と征芽を交互に観察した。
魅了系統が使えるモノというのは、幻想種から魔術師に至るまで、浅葱の言う通りろくな奴が居ない。良くて愉快犯、生命の剥奪属性。下手すれば秘匿事項・封印指定。魅了が使えて、尚かつそれを悪用せず話が通じる存在があるとするなら、知識の教授属性の原生神秘くらいのもの。それ程(悪い意味での)打率が高い魅了絡みの案件に喜んで首を突っ込む奴がいるなら、幸葵だってお目にかかりたいくらいだ。
「うちの連中は"他人に全く興味が無い"あるいは逆に"全てに満遍なく興味がある"狂人だらけで、大抵魅了に耐性あるだろ!それこそ戸張だってあるだろうが!!」
「それはそうなんだけど〜それだけで双鶴くんなんかに頼む訳なくなぁい?話最後まで聞けよせっかちだなぁ」
「双鶴さん、落ち着いて。まだダメです、殺すなら人目のつかないところで」
机上のペン立てからカッターを引き抜こうとする浅葱の手を全力で押さえ込み、幸葵は昴へアイコンタクトした。このままでは話が進まず、いつまで経っても帰れない。早くしろ役目でしょう、と視線を幸葵が叩きつければ、仕方ないなぁとでも言いたげな溜息を吐いて、昴は征芽の脳天に一発重い拳を落とした。初めからそうしろよ、吼えそうな浅葱を落ち着かせるように、幸葵は全力で浅葱の肩をさする。ここで浅葱にキレられてもまた面倒なだけだ。各々大分強めの思想を持つ人間しかいないこの職場は、時折このような事故が起こる。勘弁して欲しいですね、と誰に言うでもなく幸葵は独りごちた。
「ゔぅ〜〜〜
……
わかったよ話すってば
……
」
涙目で頭を押さえながら漸く大人しくなった征芽は、愛用の杖を取り出してくるりと円を空中に描く。円の中から炎を纏った蝙蝠達が飛び出してくる、征芽の契約妖精だ。ぽい、と杖を昴の方へ放り、蝙蝠達を撫で回しながら面倒そうに征芽は口を開く。
「元々は俺が理事長に頼まれてた案件なんだ。もっと言えば、理事長が更に上から、だけどね?まあそれはいつも通りじゃん?」
「まあいつも通りですね、癪ですが」
「いつも通りだな、気に食わんが」
にぱーっと悪意無くこちらを巻き込む笑顔をした理事長の顔を思い浮かべ、浅葱と幸葵どころかその場にいる教員全員が辟易したような顔をしながら各々小声で悪態をつく。またアイツかよ、もういっそ殺した方が、死なねぇじゃんアイツ、そんな言葉が飛び交う。
「んでぇ、俺が実地調査も兼ねて問題の場所に尋ねたんだけどぉ。そこの集落のやつらに総出でなぁんか追い返されちゃってさぁ〜!!」
「貴方の醜悪さを悟ったのでは?そこの住人は慧眼をお持ちのようですねえ」
「マジで黙って白崎先生燃やすよ。
……
あぁ、そう。その時ね、アイツら俺の蝙蝠たちを見ながら、俺を追い返したの。俺から離れたところを飛んでたコイツらを、だよ?」
征芽の言葉に、浅葱も幸葵も怪訝な顔をする。それはおかしい、と2人は同時に口を開いた。
「貴方の契約妖精は、魔術的な知見が無ければ出していても基本的には見えないはずです。仮に姿が見えても、魔女や捜査官、俺たちのような血筋に幻想が絡む特殊な者以外にはタダの蝙蝠に見えると言ってましたよね?」
「それに、そこの住人らは蝙蝠を見て戸張を追い返したんだろ?普通に考えりゃ戸張とタダの蝙蝠に因果関係なんて無いはずだ。ましてや離れたところを飛んでたんだろ?それだけで戸張を追い返すとも思えん。だとすれば蝙蝠たちの姿が見えていたことになる」
「そぉ、そこなんだよねぇ!!」
きゃは、と楽しげに笑う征芽の目は災厄そのもの。集落の人間総出で追い返されたというのに、まるで新しい玩具を与えられた子供の如く機嫌の良い征芽を、浅葱と幸葵は眉根を寄せながら見ている。
「集落ぐるみで魔術に、あるいは幻想
……
飛び越えて神秘に絡んでるとしたらさ、放っておいたらもうそらとんでもねぇ事になる。俺としては別に構わねぇけど〜、お上はそれを許さないワケ」
「貴方ほんとそういう所ですよ。学術課で何学んで来たんです??」
「うっせぇなぁ〜、一応従う気があるから双鶴くんに言ってるんデショ。ね、双鶴くん、あとついでに白崎先生、集落出禁の俺に代わって調査よ、ろ、し、く♡♡」
わざとらしく、媚びるように頼んでくる征芽に、浅葱はそれはそれは嫌そうな顔をする。何せ面倒事になることがほぼ確定しているのだ。そんなものを気持ちよく承諾する馬鹿が居るなら拝んでみたい。だが推察するに、ここで断ったとしてもどうせ今度は理事長から話が回ってきそうだ。あのムカつく面で頼まれるくらいならここで承った方が賢明である。
「
…………………………
わかった
………
」
「うわすげぇ顔、ねえ誰か写真撮っとけよおもしれ〜〜」
「ちょっと戸張さん、双鶴さんはともかく俺は関係ないでしょう。頼むんじゃありませんよ」
「え〜〜良いのぉ?そんな事言ってぇ。さっさと解決しないと、俺を通して征羅や征花にまで悪影響出たら嫌じゃないのぉ〜〜??」
「っんのクソ野郎
……
!!」
征芽の言葉に珍しく幸葵が過剰反応をする。まずい、という顔をしながら浅葱と昴が各々左右を抑えにかかった。
この白崎幸葵という男、パートナーに対する愛が尋常でない程重く、害されようものなら大爆発しかねない。その時の被害範囲は、浅葱の激怒が可愛く思えるレベルだ。そしてそのパートナーというのが、今目の前で幸葵を煽り散らかしている征芽の弟妹でもある。複雑な事情が絡みに絡んでよくこうして煽り合いになるのだが、ストッパーの浅葱と昴としてはやめてくれ以外の感想は無い。
「あっれれぇ〜?もしかしてやらないのぉ?征羅と征花のこと心配じゃないんだぁ〜!!俺の事言えないんじゃなぁい?あははっ!」
「良いでしょうそこまで言うなら、ええ、そこまでおっしゃるのであれば、さっさと片付けて差し上げますよ、行きますよ双鶴さん」
「せめて事前準備はさせろ馬鹿!!!!」
売り言葉に買い言葉で承諾した幸葵に頭を抱えつつ、至極真っ当な文句を浅葱はつける。
短期で片がつく案件なら良いが、という無駄な願いを反芻し、大暴れしかねない幸葵の腕を引っ掴んで抑えながら、浅葱は窓の外を見つめた。
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