【逆さの天国】Ⅱ

『B'ASH』現行未通過×

アマリン
※宗教パロ




天上の神殿。自分に割り振られた部屋で、リンは水鏡を見ていた。地上の何処かを覗き見ることができるその道具は、リンにとって貴重なものだ。天上は娯楽が少ない。当然だろう、娯楽に没頭すれば堕落へと繋がる。天使にそんなことは許されない。

水鏡には、たくさんの人間が映し出されている。笑う人間、泣く人間、怒る人間、恨む人間、死ぬ人間、生まれる人間。ありとあらゆる姿を見せる人間は、機械的なものが多い天使とは全く違う。リンも何度か人間に関わったことはあるが、それらは一律に神を信仰している教会の人間ばかりだ。楽しさや面白さはあれど、新鮮味はない。

ふと、水鏡の人間が悪魔と接触した。何処では分からないが、この人間は契約して魔術師になるのだろう。悪魔は楽しげに穴へと魔術師を引き込んで、そうして……



リンの運命が、爆ぜた。

穴から噴出した炎は、魔術師の身を焼き尽くす。辺り一帯に絶叫が響き、悪魔の嘲笑が轟く。悪魔は極めて気まぐれだ。気分でこの魔術師を騙し、地獄の業火に晒したのだろう。なんて醜悪、なんて残酷。

なのにどうして、自分の胸はこんなにも高鳴っているのだろう。


綺麗」


ポツリと落とした音が、自分の本心だと理解するのに時間がかかった。途端、天使としてありえない地獄への渇望が身の内を満たす。たった一目見ただけで、自分は天使としての根幹を全て投げ捨てた。純白の翼も、神の祝福も、人々の尊敬も、生まれた大義も。これまでの全てを塗り潰すその灼熱は、確かに喜びで。

ああ、なんて素晴らしい! 自分はついに、運命と出会ったのだ!
興奮のまま、神殿から飛び立つ。地上へ向かって、手当たり次第に炎へ身を投げる。天使が人間の炎で消失することはないが、それでも繰り返せば傷になる。身体が火傷に包まれても、あの業火には叶わない。地獄へ向かうには、あの焔に沈むには、天使のままでは難しい。

だから彼は、天使を辞めることにした。