わからん
2024-08-27 23:12:22
16999文字
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【WLDP】Bet! Bet! Bet!

アイパッチウとスーツデプでポーカーをしてほしかっただけのウルデプ

※映画のネタバレを含みます。またコミックスの方は履修しておらず、映画にしてもほとんど無い記憶を絞り出して書いたので諸々間違いや解釈違いしかないと思います。
※↑と同程度の暴力・流血表現を含みます。
※書いている人は世界のア○ビ大全とマ○オでしかポーカーを遊んだことがないので、ルールを盛大に間違えている可能性が非常に高いです。
※二人とも口調が難しすぎ(自我)

上記ご了承頂ける方のみ本文へお進みください。

【8/31追記】最後まで書けたので更新しました。





 諸悪の根源ドン・バンビーノが何をしていたかようやく分かってきた。
 実験は実験でも、人間とミュータントを対象にした極悪非道な人体実験だ。ウルヴァリンは誘拐されたミュータントを追跡していたところドン・バンビーノの元に辿り着き、接触を試みていたらしい。つまり、バンビーノの手下ではなかった。それどころか俺と共通の敵を追っていたのだ。
 今度こそ利害関係の一致を確認した俺とウルヴァリンは手を組み、研究施設へ乗り込んだ。そこにいた職員は皆殺し。ついでにドン・バンビーノと繋がっていた某製薬会社のお偉いさんもいたのでそのまま拘束。捕らえられていた奴らを解放し、避難したのを確認してお偉いさんごと建物自体を爆破した——
 肝心な場面なのに端折りすぎ? これでも頑張って説明したほうなんだ。俺とウルヴィが敵をぶっ殺しまくってるシーンの描写が永遠に続いてほしくはないだろ。盛り上がるけど続きすぎるとお腹いっぱい、食傷気味というか……バトル・バトル・バトル。血と肉と虐殺。それ以外で書けることがぶっちゃけ無い。
 というわけで、俺たちはド派手な爆発を背景に施設を後にした。いくつもの死戦をくぐり抜けてきたので俺たちの格好はボロボロだ。ウルヴァリンに至っては襟元のタイがどこかに行っちゃったし、タキシードなんか血を被って赤黒く染まっており、もはや元の色が何だったのかすら見分けがつかない。
「つまり俺ちゃんとお揃いカラー的な」
「何か言ったか」
 俺は首を振って立ち止まった。
「助かったよウルヴァリン。あんたがいなかったら、施設全体をぶっ壊すのはちょっとキツかったかも」
「施設のことだけか?」ウルヴァリンは鼻で笑ってジャケットの内側からシガーケースとライターを取り出した。「お前が最初から計画を明かしてくれていたら、カジノで対立する手間は省けた筈だがな」
「ん」
 俺が差し出した手のひらを意外そうに見て、ウルヴァリンはライターを手の上に置いた。近付いて手で覆いを作り、吸い口をカットしたのを確認してからライターの火を点ける。葉巻の先に火が灯ると、ウルヴィは悪いなと呟いて紫煙をくゆらせた。
「あんたどんだけ吸うワケ?」
「うるせえ。お前には関係ないね」
「カウンティングの件は……その……悪かった、マジで。個人主義だから、第三戦力がいるなんて想像もしてなくてさ」
 ウルヴァリンは葉巻を吸いながらこっちを見た。首を振って煙を吐く。
「お互い様だ、水に流してやる。だが次からはもっとマシな手を考えるんだな、あほんだら」
 不意に伸びてきた人差し指に額をどつかれて上を向く。東の空が橙色を帯びていくらか明るみ始めていた。なんだか懐かしい感覚だ、前にも同じことをされたような……あ。
「今頃起きてるよなあ。置いてかれたの怒ってるかなあ、クズリちゃん」
「あ?」
 声が思ったより間近で聞こえたので首を戻す。ウルヴァリンはあろうことか俺の首元に顔を寄せ、鼻をすんすん鳴らしていた。慌てて身を引くと奴は首を傾げたままでいる。
「ちょっと! いきなり何すんのよヘンタイ!」
「今日会った時から気になっていたんだが」そう前置きして奴は爆弾を投下した。「どうしてお前から俺の匂いがするんだ。気のせいかと思ったが間違いねえ。お前の頭をぶっ刺した日から今日までに会った記憶も無いが」
「ハア? ああ……あー……
 クズリちゃんの匂いが俺にもついてるだって? 心当たりは一応、いいや確実にひとつしかない。昨日の夜、同じベッドで寝たのだ。二人で仕事帰りに酒場へ寄り道して飲んだくれ、そのまま千鳥足で近くの隠れ家へ帰宅し、もつれ合うようにしてベッドへ倒れ込んで……
 はっと昼過ぎに起きたら、隣で爆睡しているローガンの顔が目の前にあったのはよく覚えている。出会った頃はあんなに警戒していたクズリちゃんがこんな無防備になっちゃって、と少しの間だけ感動していたが、今日もTVAからの任務があるのを思い出してすぐにベッドから飛び出た。ローガンはいつになっても起きず、あらゆる策を講じても無駄だったので、俺一人で任務に来たのは既に述べた通りである。
 以上の事柄をどうやって説明すべきか。結論、無理だ。めんどくさい。
「香水のせいじゃない?」
「嘘をつけ。そういえばカジノでお前が撃たれる前、まるで俺のことを知っているような口ぶりだったよな」
「クソ——お下劣」
 ウルヴァリンは火を点けたばかりの葉巻を捨てて俺の肩に手を置いた。ちょっと待って力が強い、骨が軋んでる。
「名前は? たしか傭兵だったよな、幾らだ? また会えるか」
「ワアオ熱烈……オーケイ、分かったよ。俺ちゃんの名前はデッドプール、職業は傭兵。今はあんたに掴まれてるせいでめちゃくちゃ肩が痛い……絶対に離さない? あ、そう。実はミュータントじゃなくてミューテイト、ある実験に参加して——
「ウェイド」
 あらやだ幻聴? クズリちゃんの声がする。けど目の前のパッチヴァリンは一度も口を開いていない。
「幻じゃねえよ」
 背後からぬっと伸びてきた腕が俺の首に回り、強い力で引っ張られた。痛い! 脱臼したと訴えれば、俺の肩を掴んでボグリと問答無用で戻しやがった。この容赦の無さは間違いなく俺の知っているローガンである。後ろを振り向けばものすごい形相でこっちのアースのウルヴァリンを睨んでいた。ていうかスーツじゃなくて私服かよ。
——帰るぞ」
「え? あ、ちょっと」
 ぐいぐい引かれるのを踵で踏ん張って抵抗すると、今度は両脇の下に腕を通して引きずられた。こうなったらもう無理だ、抵抗できない。呆気に取られている目の前のウルヴァリンに向けて俺は両手を振り回して叫んだ。
「この辺でお別れだけど、こっちのアースにも別個体の俺ちゃんがいると思うから気長に探してみろよ! よろしくな!」
 視界がオレンジ一色に包まれる。次に見えた景色はどこかの廃工場の敷地内で、どうやら俺たちのアースに戻ってきたようだ。おじいちゃんのくせにTVAの端末をちゃんと使いこなせてるじゃないの——と思いきや視界が一回転、全身を地面に叩きつけられる。何年もかかって堆積したであろう砂埃が舞い上がり、俺を見下ろすローガンが上下逆さまに見えた。
「いってえ!」
「どうして俺を連れて行かなかった」
 両手についた埃を払いながらローガンが低い声で言う。「一緒に行くって話を昨晩まではしてたよな。あのふざけた書き置きは何だ」
「んーにゃ、覚えてにゃい……
 ローガンは俺の足を指差した。
「左足に一発。腰と背中にも一発ずつ、追加で肺をぶっ壊した上に首も——
 ボン。自身の喉仏を指して乾いた笑い声を立てる。
「前の任務で頭がお陀仏になりかけたのを忘れたのか、ウェイド」
 服の損傷具合から、今回の任務で俺がどんな怪我を負ったのか知ったらしい。奴は激おこだ。俺は体を起こしながら弁明を試みようとしたが、改めてローガンの顔を見た途端に言葉を失ってしまった。怒りに震える声とは裏腹に昏い表情を浮かべていたからだ。
「俺は邪魔か」
 胸の奥へ氷柱をねじ込まれたような衝撃を受けて束の間、呼吸も、鼓動も、体がすべての運動を止める。喉の奥がひきつれて掠れた息しか出ない。ローガンはそんな俺を見下ろして鼻で笑った。
「図星か。新しい俺を探すために一人で行ったのか?」
……あいつは……その、たまたま居合わせただけで」
「そうか? それにしては随分と気が合っていたみてえだな——」ローガンは半笑いで身を乗り出し、途端に牙を剥いて吠えた。「——俺といるときよりもな!」
 がん、と鈍器で頭を殴られたような感覚。
「ちが……違う。誤解だ、ローガン。あんたが起きなかったんだ。俺だってなんとか起こそうとした、なのにものすごーく気持ちよさそうにぐーすか寝てるから……
 俺がしどろもどろで釈明するたび、怒りや悲しみでぐちゃぐちゃになった顔から表情が抜けていく。ローガンは俯いて眉間を揉み、ついに背中を向けて歩き出した。
 ローガンは深く傷付いていた——俺が傷付けたんだ。
 心臓がばくばく騒いで視界が回り始める。ああ——どうする——ぜんぶ俺のせいだ——畜生!
——ひとりで充分だと思った! 俺の仕事に連れ回してばかりだったから、あんたひとりの時間とか、ローラと過ごす時間を作ってやりたかったんだ!」
 周囲に響き渡った声の大きさに我ながらびっくりする。ああクソ、全部言っちまった。自己嫌悪に苛まれて俯く。怖くて相手の顔を見られない。意を決して恐る恐る顔を上げると、少し先でローガンが立ち止まり、俺を見つめていた。
 息苦しいほどの静寂。いつもより険しい顔ではあるが、さっき見た激しい様子からは幾分か落ち着いている……気がする。
 向こうが沈黙を破って息を吸う。「……残念だが、起きてから今まで、お前を探し出すのに必死だったよ」
 ……俺は体中についた砂埃を払い、立ち上がってマスクを剥ぎ取った。口から顎にかけてべったり付着しているであろう血の塊を拭い取る。俯いて近寄り、肩をぶつけて立ち止まっても、いつも言われるような罵りの言葉は聞こえてこない。そのままローガンの肩にもたれかかって腕を回すと、俺の背中にも大きくて温かな手が触れてくる。
「本当にごめん」
「俺も気をつけるが、次からは無理やりにでも起こせ。いいな」
 耳元で聞こえた言葉にこくこくと頷く。「やりすぎて頭を叩き割っちゃうかも」
 俺の言葉に笑ったのか、腕の下でローガンの体が小さく震えた。
「頑丈なのはお前が一番知ってるだろ」
「うん……
 首筋に顔を埋めて息を吸う。俺はこいつほど鼻がきかないけど、いつものローガンって感じがして安心した。
……向こうのアースで別個体のローガンと会ったけどさ。俺にとってのウルヴァリンはあんただけだ。代わりなんていない」
「煙草くせえ」
 そう言ってもぞもぞ動きだしたのでぱっと体を離す。それからローガンの隣に並んで歩き出した。
「このスーツ? これね、今回の潜入のためにTVAの奴らが用意してくれたコスチューム。かっこいいだろ」
「くせえから捨てろ」
「ヤダ、洗って使い回すもん。けどジャケットを着ると刀を背負えないのがな……。日本のサムライみたいに腰に佩けばいいのかな、どう思う?」
「使いづらいならわざわざ着るな。また怪我をする」
「わかってないなあローたん、戦闘服はテンションが上がってこそだろ。あんたの分も用意してあったんだぜ。着てるの見たいし、そいつも今回の報酬でTVAから巻き上げようかな……あ、そうだ。余った金であんたとローラのスマホを買いたいんだ、どう?」
 横一文字に引かれていたローガンの口元が少しだけ緩んだ。「好きにしろ。スマホってのが何かは知らねえが……
「嘘だろおじいちゃん、TVAのタブレットをあんなに使いこなしてたのに?」
 工場の出入口をくぐり抜けてメインストリートに出た。
 朝日が俺たちの顔と、目覚めたばかりの街を照らして輝いている。
 太陽の方角へ俺たちは歩いていく。帰ったらまずは何をしようか。寝るか、朝食か。一日はまだ始まったばかりだった。