わからん
2024-08-27 23:12:22
16999文字
Public WLDP
 

【WLDP】Bet! Bet! Bet!

アイパッチウとスーツデプでポーカーをしてほしかっただけのウルデプ

※映画のネタバレを含みます。またコミックスの方は履修しておらず、映画にしてもほとんど無い記憶を絞り出して書いたので諸々間違いや解釈違いしかないと思います。
※↑と同程度の暴力・流血表現を含みます。
※書いている人は世界のア○ビ大全とマ○オでしかポーカーを遊んだことがないので、ルールを盛大に間違えている可能性が非常に高いです。
※二人とも口調が難しすぎ(自我)

上記ご了承頂ける方のみ本文へお進みください。

【8/31追記】最後まで書けたので更新しました。





 なんだか気味が悪いな、というのが率直な感想だった。特に理由もなくあいつが、あのウルヴァリンが俺に好意的な態度を見せるなんて、変なものでも食ったのか?
 とはいえ断る理由もなかったし、何よりテキサス・ホールデムはワンゲームで終わるものじゃない。別に誘われようが誘われまいが、ゲームから離れるつもりは無かったのである。
 最初の対決で気付いてはいたが、このウルヴァリンはとんだ博打狂いだ。ブラフだろうと容赦なく賭け金を吊り上げていくし、役が揃っていても同じ手を使う。戦略は無いのかよと呆れつつも俺は様子見チェックとフォールドを繰り返していたので、初心者丸出しの及び腰だと奴には鼻で一蹴された。
 ミスター・ベイビーのご到着はまだか? 今日はもう来ない予定なのかも……そいつは困る、明日もここに来なくてはならない羽目になってしまう。寝床を探すのも面倒だし、カジノ通いは一日で終わらせたいのが本音ではあったのだが。
「見すぎだ」
「ああ?」
「周りを気にしすぎだ」ウイスキーの入ったグラスを傾けながらウルヴァリンが俺を咎めた。「ティーンのガキみたいにまるで落ち着きがねえ。目立つぞ」
……デートの待ち合わせに三時間以上遅刻された経験ってある? 死んだほうがマシなくらいにプライドをズタズタにされるんだ」
 奴は俺の質問を無視した。「誰を待ってやがる。来るかわからねえのか」
「質問に質問で返すなよ。あんたこそ誰を待ってるんだ、呑気に酒まで飲み始めてさ——あ、俺ちゃんヒットで」
 人差し指でテーブルを叩くと、表面を滑るようにしてディーラーからカードが飛んできた。クラブのキング。手元にあったカードの数字と合わせると7+5+10——合計22でまたバーストだ。ディーラーにチップを回収される。隣のウルヴァリンはといえば初手からエースとクイーンで合計20を叩き出しており、ディーラーに勝ってチップを巻き上げていた。
 ポーカーのスリーカードで今日の運は尽きてしまったようだ。テーブルの上に肘をついて回転椅子——ブラックジャックをするにあたってテーブルを変えたのだ——を左右にゆらゆら回す。
「で、クズリちゃんは誰を待ってるの?」
「知らねえ相手に聞く内容じゃねえな馬鹿かお前」
「それ思いっきりブーメラン発言だからな馬鹿ヴァリン」
 人差し指を突き出して指摘しても例によって鼻で一蹴された。腕を伸ばして接近、頰をつつこうとしたが正面を向いたまま容赦なく叩き落とされる。痛い。ひりひりと痺れ、震える指でディーラーにチップを差し出してニュー・ゲームだ。
 手元に届いたのはハートの4とダイヤの2。
「初手で合計6とかさすがにクソ……イラつくなイラつくな。俺ちゃん今日は正義の味方だもの、全年齢版だからお下劣な言葉はご法度ですわよ。落ち着け落ち着け……
 ヒット。ハートの2。合計8。
「イラつくな」
 ヒット。スペードの2。合計10。
「正義の味方」
「本当に酷いな」
「うるっさい。助けてジーニー」
 ヒット。クラブの2。合計12。
「お下劣」
 ヒット。ハートのクイーン。合計22……
「はっ。ヘタクソ」
「マジでクソじゃねえかジーニーのバーカ!」
 悪運に呪われまくっているとしか思えない。ウルヴァリンはといえばぴったり21を出して大勝利を収めているというのに。満足げに本日n本目の葉巻を吸い始めた奴を横目で盗み見て溜息をつく。
「勝ちすぎじゃない?」
「たまたま運が良いだけだ」
「にしてもだろ。そのアイパッチに秘密が隠されてたりして」
「やめろ」
 手を伸ばすと再び叩き落とされた。手首をさすりながら周囲を見回すと、入口から新しい客が入ってきた。グレーのスーツを着た禿頭の大柄な白人。両脇をこれまたガタイの良い男が挟んでいる。中央の男が横を向くと、耳の上から後頭部にかけてドラゴンのようなタトゥーが見えた……
……なあウルヴィ。俺ちゃんとっくに気付いてるよ、だから隠さなくていい」
 突然声色を変えた俺に対して、ウルヴァリンの眉間に皺が寄った。
「何の話だ」
「言わせんなよ、今までずっと見てたんだろ? 2から6のローカードをプラス1、10以上のハイカードをマイナス1、中間の7・8・9をゼロとして、今まで出てきたカードの累積値は向こうの端っこのプレイヤーからプラス3、マイナス2、プラス1、あんたがプラマイゼロで俺ちゃんがプラス4、ディーラーはマイナス1」
 俺の話を聞いていたウルヴァリンの唇から、葉巻がぽろりとこぼれ落ちる。
「全部の値を合計してプラス5。プラスになるほどデッキに残っているハイカードの比率が高くて、マイナスだったらローカードだったか? つまり、あんたはこれをはじめから全部数えた上で賭けに乗ってた。勝てそうな時だけ勝負に出て——
「カウンティングか?」
 ウルヴァリンとディーラーの声が重なった。
 話し声が一斉に止み、周囲の視線が俺たちに集まる。
 一拍置いてディーラーが言う。「うちはカウンティング禁止だ」
「俺じゃない」俺は肩を竦めてウルヴァリンを指差した。「隣の彼に勝てるコツを聞いたんだ、そしたらズルしてた」
「本当か?」ディーラーの視線がウルヴァリンに向く。
「違う」ウルヴァリンは唖然としつつも首を振った。
「アイパッチの中にカメラを仕込んでるから、みんなの手札が見え放題だってさ」俺ちゃんの援護射撃。
 たちまちウルヴァリンの顔が怒りに染まる。
「おい——
「来い。話は店の裏で聞く」
 席から立ったディーラーがウルヴァリンの後ろに回り込んで腕を掴む。そのまま強く引いた瞬間、ディーラーの体が宙に浮かび、背中からテーブルに叩きつけられた。派手な音を立ててテーブルが真っ二つに割れる。周囲は騒然とし、他テーブルのディーラーや警備員がぞろぞろ集まってきた。
「ワオ。さっすがクズリちゃん、華麗な一本背負い」
「お前……!」
「おおっとちょい待ち。俺ちゃんさあ、待ち人が来ちゃったのよ」
 俺はジャケットの内側に手を突っ込み、ウルヴァリンの鼻先にドン・バンビーノの写真を突きつけた。「だから行かなくちゃ。なすりつけて悪いけど店の奴らの気引いといて」
「お前を一番に殺す」
 俺は口笛を吹いた。「死なないけどな」
——切り刻んでやる!」
「ちなみにカウンティングの数字は適当! あばよウルヴィ!」
 割れたテーブルの縁に手をかけてひらりと飛び越えた直後、背後で空を切る音が聞こえて悲鳴を上げる。間一髪だった。振り返ると奴は店の人間に囲まれていたので、早々に俺を追いかけてはこないだろう。あとは店の奴らがなるだけ時間を稼いでくれるのを祈るだけだ。
 カジノを飛び出し、地下駐車場からどこかへ去ろうとする赤ちゃん野郎の背中を見つけた。接近する俺の足音はとっくに気付かれている筈だ。
「ドン・バンビーノ!」
 大声を上げるとボディガードらしき男二人がさっと立ち塞がったので、一人は手首を捻り上げて金的を思いきり蹴り飛ばした。素晴らしい悲鳴。マライア・キャリーばりに高くて耳に心地良い声だ、あんた将来は歌姫を目指せるぜ。残った一人が銃を構えたので、股間を押さえて縮こまる歌姫の胸ぐらを掴み上げて盾にする。銃声が止んだのを見計らって前方へ突き飛ばした。リロードに意識を向けていた相手は死体のタックルを食らって体勢を崩す。その隙にベルトから拳銃を抜き、眉間を撃ち抜いておしまいだった。
 振り向きざまにもう一発、バンビーノが持っていた拳銃を弾き飛ばす。ドン・バンビーノは薄ら笑いを浮かべながら両手を挙げて投降した。
「チャオ。会いたかったぜミスター・ベイビー」
 奴は唇の片端を持ち上げて笑ってみせた。銃を向けられているにも関わらず余裕綽々といった態度、さすがは裏社会の大物だ。
「見ない顔だ、どちら様かな」
「目を閉じて膝をつけ。こっちの質問に答えろ」
 ドン・バンビーノは肩を竦めたまま動かない。威嚇のために足元を撃とうとして奴が動かない理由を知った。背中に突きつけられた刃物の感触と肌に突き刺さる獣の殺意。
「おいおいマジかよ、いくら何でも早すぎるだろ」
「残念だったな、坊主」ウルヴァリンが低く笑って爪で俺の背中を叩いた。「目を閉じて膝をつきな。俺の質問に答えろ」
「目を閉じたか確認できる?」
「抉ってほしいか? いいぞ、こっちを向け。振り返る前に銃は捨てるんだな」
 息を吸って、吐く。仕方ない。右手を開いて拳銃を足元に落っことした。それを見たドン・バンビーノの顔に気色悪い笑みが広がっていくが、後ろのウルヴァリンに見えないよう中指を立てると真顔になった。ざまあ見やがれ。
「遠くに蹴飛ばせ」
 言われた通りにキック。愛銃がコンクリートの上を滑っていき、視界から消えてしまう。
「振り向け。ゆっくりとな」
 バンビーノと同じように両手を挙げて体を百八十度回転させた。こめかみに青筋を浮かべたウルヴァリンが腕を上げ、俺のマスクからわずか数ミリのところで爪をぴたりと止める。奴が狙っている先は無論、両の眼球だ。
「あらやだ、ヤる気満々じゃないの」
「誰の命令でここへ来た?」
「あんたのセクシーなお洋服とアイパッチってどこで買ったの——あ痛ァ!」
「最後の通告だぞ。誰の命令だ?」
 太腿に爪を突き立てやがったウルヴァリンが低い声で繰り返す。
 俺は首を振った。「言えない。あんたにとってのネタバレにならない範囲で言うと、とんでもなくえらーい奴らからの極秘ミッションだ」
「傭兵か。組織の名前は?」
「それを知ってどうするつもり?」
 だんまりだ。……んー。それにしてもだ。違和感を覚えないか。あのウルヴァリンがこの状況で俺に構うか? 俺の他にもドン・バンビーノという大物ヴィランがいるってのに……
「あんたこそ誰の命令で動いてる?」
 かまをかけると奴の目が動き、俺の背後を見た。おいおい嘘だろ。
——正気か? あいつは裏でおっかない実験をしてるって、真っ黒な噂まみれだ。このアースのウルヴァリンは闇堕ち? 冗談キツいぜ」
「マスク野郎を今すぐ殺せ!」
「まだだ。尋問して組織の名前を吐かせる」
「マジかよ」
 ドン・バンビーノと普通に会話しやがったので確定だ。解釈違いだ、項垂れるしかない。
「信じられないよウルヴィ。あんたが悪いやつらの仲間だったなんて」
「組織の名前を言え」
「あんたはヒーローだ、どこの世界でも」
 顎の下に爪を差し込まれ、強制的に顔を上げさせられる。ウルヴィだ。目の前に立っているこいつは間違いなくヒーローのウルヴァリン。今日の昼過ぎ、部屋を出る直後に覗き込んだ寝顔が脳裏を過ぎる。別個体だが根は変わらない、こいつは俺がよく知っている奴と同じ……
「次は目玉を潰す」
「俺の知ってるあんたは絶対、悪いやつらに屈しない。あんたは強い。誰よりも強くて気高くて——不屈で、折れない信念を持った本物のヒーローだ。そうだろ?」
 ウルヴァリンの目が揺れ、爪が震えたのを見て確信した。こいつには、ヴィランの立場にならざるを得ない事情がある。
「なあ、ローガ——
 一歩踏み出そうとした瞬間に銃声が響き渡り、左足に衝撃が走る。膝を折りかけたのを踏ん張ったところにまた別の衝撃。左の腰、背中、それからたぶん右肺の辺り。
「ンぐ、」
 駄目押しにもう一発。本当に運が悪かった。銃弾は俺の首を貫通し、ウルヴァリンの頰を掠めて通路の奥へ飛んでいく。
「ゴボッ」
 マスクの中で吐血とか最悪。全身から力が抜けて横向きに倒れた。喉に手を当てると生温かい血が噴水のごとく溢れ出ている。
 目の前にウルヴァリンの革靴があった。足音が背後から近付き、俺の肩に足をかけると仰向けに返す。俺の銃を持ったドン・バンビーノがにやにや笑いながら見下ろしていた。本当にムカつく野郎だ。奴は顎をしゃくり、俺の体を挟んで反対側に立つウルヴァリンに合図した。
「時間切れだ。処分しろ」
……施設に持ち帰ったらどうだ。死体でも役に立つ」
「手足を切り落として袋に詰めておけ」
 その程度で死にませんけど、ていうか生きてます。答えようにも血が気道を塞いでゴボゴボうがいをすることしかできない。あークソ、喉への一撃が無ければここまでひどい状況にはならなかったのに。
 ウルヴァリンが俺を見下ろした。白いジャケットや顔に俺の血が飛んでしまっている。あーあ、せっかくの綺麗なお顔とお洋服が台無し……
 ——ウルヴァリンはその時、素早く隻眼を瞬かせて俺に目配せをしたように見えた。奴は毅然と顔を上げてバンビーノに詰め寄る。
「取引を忘れるな。こいつはカジノに潜んでた暗殺者ヒットマンだ。俺はお前を守った、見返りに施設の場所を教えろ」
 話を聞いたバンビーノは馬鹿にしたように嘲笑った。「冗談はよせ、こいつを殺したのは私だ。それにこの話は今、ここで、本当に必要なことか?」
「尋問に待ちきれなかったのはお前の方だろう」
「ゴボゴボ」
 交渉ヘタクソか? 途端にドン・バンビーノとウルヴァリンが俺を見下ろしたので死体のフリ。二人は再び顔を突き合わせる。
……ミュータントの研究施設だ」
「妙に急いでいるな、知り合いでも収容されているのか」
「いいから教えろ。時間が無い」
「ゴボゴボゴボ」
 死体のフリ。特にウルヴィからの非難じみた視線が痛い。二人が目を逸らしたので、こっそり右足を折り曲げて膝を腹に近付けた。足首を掴んでスーツの裾を捲り上げる。
 二人の押し問答はその後も少しだけ続いたが、クズリちゃんがあまりにも口下手すぎた。業を煮やしたドン・バンビーノがウルヴァリンの眉間に銃口を押し付ける。
「信用ならん。貴様も施設行きだ」
「そいつはどうかな」答えたウルヴァリンが一歩後ろに引く。「ついでに時間が無いのはお前の方だ」
 ヘタクソなりにナイスアシストだウルヴィ。
 ゴボゴボと喉を鳴らしながら、俺はアンクルホルスターから引き抜いた武器をバンビーノの腿めがけて振り下ろした——ベイビーナイフ。俺ちゃんオキニのスーツを汚しやがって!
 奴が悲鳴を上げてよろめいたところで右足を振り抜いて鼻っ面を叩き割る。ギャア、と怪鳥のような叫び声を上げてバンビーノは銃を取り落とし、尻もちをついた。
 バンビーノはひしゃげた鼻から流れ出る鼻血を拭う一方、太腿に深々と突き刺さったベイビーナイフを抜きにかかったりと大忙しだ。拾い上げた拳銃を額に押し付けると、奴はぴたりと動きを止めた。全身をがたがた震わせながら俺を見上げる。
「貴様もミュータントだったのか」
——ゴボゴッゴボゴボ」
……は?」
 喋れない。助けてウルヴィ。背後を見遣るとウルヴァリンは溜息をついて俺の隣に並び、しゃがんでバンビーノと視線を合わせた。
「おい。施設の場所を教えろ」
「ゴボゴボゴボッ」
「早く答えないと、隣のお嬢ちゃんがお前のクソにまみれた頭を吹き飛ばす」
 ちげえよ、今すぐ答えないとそのクソみてえな頭に【編集済み】の【編集済み】をブチ込んで【編集済み】の【編集済み】にしてやるって言ったんだ、全年齢版なので多分この文章の大半には規制が入ってる。肘でどつくとウルヴァリンが眉をひそめた。
「何だ?」
「ゴボボ」
「聞こえねえ。早く止血しろ」
「ゴボッゴボ」
 翻訳が要らないよう中指を立ててやった。
「お前たちは何なんだ一体!」
 ベイビーナイフを抜いて反対側の腿にズブリと刺し直す。グエーッ、怪鳥の悲鳴。ウルヴァリンが肩を竦めてドン・バンビーノの胸を叩いた。
「人魚姫がお怒りだ。とっとと答えたほうが身のためだな」
「バケモノどもめ、誰が答えるか——
 手の甲から飛び出た爪がバンビーノの喉を浅く刺す。ひゅっと息を呑む音が聞こえて俺は口笛を吹いた。とたん水鉄砲みたいに喉の穴から血が噴射され、バンビーノの顔に降りかかる。ハッハァざまあ、クソ最悪な顔射だ。
 血と冷や汗まみれのバンビーノは俺たちとウルヴァリンの爪、額に押し付けられた銃の間で忙しなく眼球を回している。沈黙の末にやがて、蚊の鳴くような声で研究施設の所在地を口にした。
「ンン……アーアーアー、どうも。ご協力に感謝するよ」
 ようやく喉の調子が戻ってきた。俺が喋ると同時にウルヴァリンが爪を引っ込める。
 バンビーノの泣きっ面が希望に輝いた。
「それなら——
「悪いけど、俺ちゃんは悪の親玉に情けをかけられないタイプでね。おやすみ坊や」
 さっと青ざめた顔にごりごりと銃口を押し付ける。銃声。バンビーノの頭蓋と脳漿が周囲に飛び散った。