しゃどやま
2024-08-22 21:52:18
5007文字
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モクマさんと猫のチェズレイ(二本)

モクマさん視点とチェズレイ視点がありますが、別な話です。



 ごきげんよう。私はチェズレイ。モクマ・エンドウと同居している成猫です。
醜悪な本性を暴いてやろうと決めて同居にまでこぎつけたのはいいのですが、酒を飲んでは眠り、陽気に振る舞うばかりのモクマさんはなかなか隙を見せません。こうなれば私のこの体を使ってでも、感情を揺さぶる他ない。

 作戦はこうです。まず私が魅惑的な振る舞いで誘惑する。モクマさんは思わず触ってしまう。欲望のまま触れ続けていると、私が突然嫌がり、爪を向ける。すると、自分の浅ましさと私への怒りが湧き上がり、本性が見えるのです。

 私はのんびりと寝床から立ち上がり、モクマさんの隣へ行きます。ちょうど新聞紙をひろげていました。その上へ邪魔をしつつ目の前に転がります。
「っと、どうしたんだい? 珍しいね」
 私の体で新聞が読めなくなったというのに、モクマさんは笑顔です。気にいらない。真面目に不快感をあらわせばいいものを。
 にゃあん。触ってもいいですよ。
 私は目を何度も閉じ、うっとりとした表情を作って彼を誘惑します。無防備に腹を見せ、触りたくなる毛皮を見せつけます。
……撫でてもいいってこと? やー、いいのかな……
 躊躇しつつ、モクマさんは私の鼻先に指を突き出しました。匂いを嗅ぐと、朝の焼き魚が思い出されます。衛生面が気になりますが、今は堪える時期。
 私が頭を差し出すと、大きくゴツゴツした手のひらが、ふんわりと私の頭に乗りました。親指で毛流れにそって、丁寧に撫でていきます。眉間をクシクシと撫でる力強さが丁度良く、私は目を閉じました。なかなかのテクニックを持っているようです。
「ふわふわだね……
 んにゃあ。そうでしょう。私の毛皮は超一級。よその猫と比べるべくもありません。どのような毛布よりもすべすべでサラサラなのですから。
 調子に乗らせるために、背中を向けます。もっと大胆に、大きく手を滑らせて良いと喉を鳴らしてアピールします。少し躊躇したモクマさんは、それでも吸い込まれるように私の背中を撫ではじめました。
「きれいだよ……
 んるる。そうでしょう、そうでしょう。心にもない褒め言葉ですが、撫でられながらであれば心地よく響くもの。この男の手付きは丁度良く、腹や脚に触れないのも身の程を知っています。

 このペースで魅了し、最後に――
 私は目を開けました。モクマさんが、尻をぽん、と軽く叩きます。痛みはまったくありませんが、理不尽な暴力だ。顔を上げて抵抗しようとした瞬間、それは起こりました。
「んなっ?」
 私の尻尾のつけ根を、トントンとモクマさんの指先が叩いている。それだけで私の全身が、蕩けるような快楽に襲われている。私の体は私の意志通りには動かず、尻尾を愛する相手に向けるようにピンと立て、男の指を歓迎していました。
「やっぱりココ好きなんだね」
 私は混乱したまま、頭を新聞紙に擦り付けます。全身がくすぐったく、ぴくぴくと震える。気がつけばねだるように腰を突き上げ、尻をモクマさんへ預けてしまっていました。たしたしと足踏みし、まるで落ち着きのない子猫にされてしまったような。尿意のような違和感とともに、快感が走ります。
「ぅにゃあ……っ」
「大丈夫、思う存分やったげるよ」
 思う存分。快楽で頭が混乱している私は、恐怖と期待で尻尾を震えさせました。