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あいづき
2024-08-22 15:02:59
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TRPG(CoC)関連
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在りし日の景色
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ぼに関連の二次創作
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優しいお月様
「有馬んちの母親、画面にしかいねぇんだって! AIなんだってよ」
「アンドロイドでもない人格が動くの気持ち悪くないの?」
「って言うかそもそも有馬くんのお母さんって病院から出て来てないってお母さん言ってたのに、お母さんが家に居るって言うのおかしくない?」
そんな言葉は、日常生活では当たり前になってきた。誰にも言ってないのに、どうしてお母さんの事を知っているのか、僕には分からない。お姉ちゃんやお父さんが外に言うとは思えない。シロウは、家族だけど犬だから、突然話し出して誰かにお母さんが居るって言う訳でもない。
ただ一つ思い当たるのは。
──お母さんは、居るもん。
と、皆の前で言った事かもしれない。
嘘は吐いてない。だって、実際お母さんは死んでないし、会話だってしてくれる。僕とお姉ちゃんの話を聞いて、微笑んで、見守って、ここに居てくれる。
それの何が、悪い事なんだろう。
何で、差別されないといけないんだろう。
居たらいけない理由は、誰が決めるんだろう。
今日も、言われた事をぽつりぽつりと思い出し、迫り上がる水分を引っ込めて、重い足取りで家に帰る。
ただいま、と、家に入れば、おかえりなさいと言いながら、お姉ちゃんが出迎えてくれた。けれど、僕の顔を見たらぎょっとして、パタパタと足早に駆けて肩を掴んでからゆったりと頭を撫でてくれた。
「ど
……
どうしたの? どこか痛い?」
「
……
だいじょうぶ
……
」
「そんな事言う子は泣いて帰って来ません」
「でも
……
」
「ん?」
「言ったら
……
お姉ちゃん困っちゃう
……
お父さんも、全然帰って来ないのに
……
」
一瞬、お姉ちゃんの眼鏡の奥の瞳が揺れる。分かっているのだ。自分達はまだ子供で、どうする事も出来ない事象が存在する事くらい。
いじめとは、また違うと思う。肉体的暴力の行使は行われていないから。ただ少し、仲間外れにされていると言うか、指を差されて悪口を言われているくらい。皆、アンドロイドなら当たり前に隣に居るのに。どうしてお母さんは否定されなきゃいけないのかが分からなくて、僕自身も整理が付いてないからこそ、お姉ちゃんにこの話をしても困らせるだけだと思っている。
でも。
「尤斗、あのね。確かにお姉ちゃんは聞いても尤斗の役に立てないかもしれないけれど、でも
……
だからこそ、一人で抱え込まないで欲しいの」
頭頂を撫でていた手が、後頭部に滑る。
優しい声が、夕陽に反射してきらきらと光る。
「お姉ちゃん、何にも出来ないけど。姉弟だもん。尤斗が悲しいと、お姉ちゃんも悲しい。だからね、話をしたいの。今日あった事、悲しいと思った事。楽しかった事。お母さんとシロウも一緒に、三人で。お父さんが帰って来るまで、いっぱいお話ししよう?」
ね? と、笑顔を向けてくれるお姉ちゃんの姿は、お母さんにすごく似ている。開かれたお姉ちゃんの瞳は、お父さんと同じ。お月様みたいな優しい光を反射していて、酷く安心する。だから一つ、頷いた。
「
……
うん」
「うん。ランドセル置いて、手と顔を洗って、それから
……
ご飯にしよう。今日は尤斗の好きなハンバーグだよ」
「
……
チーズは?」
「勿論、入ってるよ」
「にんじんは?」
「グラッセがあるよ。好き嫌いせず食べようね」
「いじわるっ」
思わず、頬がぷくりと膨れる。拗ねる時のクセみたいなものだけれど、それを見たお姉ちゃんは少しだけ安心したように瞳を細めた。そんな事をしていたら、気配を察したのか二階からパタパタとシロウが降りてきて僕とお姉ちゃんの間に入り込む。それを宥めながら、食卓に着いて、沢山沢山話をした。傾いていた日はすっかり沈み、思わず二人してお母さんのいるリビングでシロウを枕に眠ってしまった。
ぼんやりとした中で、ただいま、の声を聞いた気がするけれど。撫でられた頭の上の手の平が大きくて、温かくて、そのまま僕の意識は沈んで行った。
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