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あさかわ
2024-07-29 15:22:44
2571文字
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甘える二人
二人きりの時だけお互いに甘える鬼水
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水木の場合
無自覚なのだろうか。
鬼太郎は水木に膝枕をして、さりさりと彼の後頭部を撫でている。膝の上に頭を乗せた水木はぼんやりとテレビを見ているが、この様子では内容は右から左へ流れているだろう。
水木は眉間を指で揉みながら帰って来た。ああ疲れたと背広を脱いで、ネクタイも一緒に吊るして、ワイシャツのボタンを一つ二つ開けて鬼太郎を手招きした。テレビの前に鬼太郎を正座させて、ごろりと横になる。それからリモコンに手を伸ばし、名古屋場所の幕下力士たちを眺めている。
「繁忙期
……
爆発しねえかな」
「爆発するとどうなります」
「店が吹っ飛ぶんじゃないか」
「周りの人が迷惑しますよ、きっと」
水木はむうと唇を引き結んで鬼太郎の膝小僧を軽く叩いた。これは真っ当なことを言うなという小さな抗議だ。
鬼太郎は水木の耳たぶを親指で軽く押す。耳やら頭からには疲労回復に聞くツボが沢山あるらしいので、少しでも疲れが取れるよう願いを込めて触っている。
テレビには上手投げで土俵からひっくり返る力士が映っている。幕下の取り組みはまだ客入りも少なく「これくらいが理想だよなあ」などと呟きながら水木はまばらな客席を見ている。
「お仕事お疲れさまでした」
鬼太郎が耳たぶを揉んで髪を梳く。
昔の水木は残業で疲れた日も、電車が止まって遠回りでへろへろになった日も、当たり前みたいに明るい声でただいまと言っていた。ニコニコ笑って鬼太郎を抱きしめて、時には駄菓子なども買ってくれて。それは家で待つ自分が、庇護の対象であり、守るべき存在だったからだ。
あれから幾年月。水木は疲れた日には低くぼそぼそとした声で帰宅の合図をしてくれる。疲れた疲れた、とグズグズ文句を垂れ流しにして鬼太郎の前で畳にひっくり返ることもある。
「合法的かつ周囲に被害を及ぼさず繁忙期手当が支給されてから、繁忙期爆発しねえかな」
「それが出来たら苦労しないんですけどね」
「一丁前を言うようになりやがって」
「だから、甘えてくれるんじゃないですか」
大人になったから、関係が変わったからこそ、こんなことが許されている。鬼太郎が仕事疲れて張っている肩を軽く揉む。水木はうめき声とも羞恥とも取れぬ、間延びした声を上げて鬼太郎の膝小僧をつねった。
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