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えりゅの本屋・べったー+支店
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こりゅさにBL
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小竜景光が主を見つけるまでの100日間 4
あと97日
藤四郎兄弟たちの話
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「大将、あざといよな」
「うん。アレがわざとじゃないのが、すごいよね」
コソコソと後藤と信濃が耳打ちしている。
薬研の返答に、審神者の眉が八の字に下がった。それを見た鯰尾と乱が「アアアッ」と小さく叫ぶ。
「あ、主」
「な、泣かないでください、主」
そんな呼びかけも虚しく、審神者の瞳がうるうるし始めた。それを見た薬研が、あたふたし始める。
「大将⁉」
「やっぱり、ボクがこんなに情けない主だから、何日も本丸を空けられないんだね。薬研は責任感が強いから
……
」
「そ、そんなことないぞ。大将」
薬研が、うつむいた審神者の両肩に手を置いて、必死に言い募った。だが、審神者は下を向いたまま、頭を左右に振る。
「大阪城の特別探索だって、みんながケガして手入れが追いつかないときは、いつも薬研に助けてもらってるし
……
」
「そ、それは
……
オレっちが薬の扱いや研究が好きだから、手伝ってるだけで
……
」
「ほ、他にも権現したばかりの刀たちからは気づかれてもらえないの、サポートしてくれたり
……
ボクがもう少ししっかりしてたら、薬研も安心して修行に出られるのに
……
ホント、情けないよね」
「そんなことないって、大将!」
そう叫んで、薬研はすっくと立ち上がった。
「わかったよ、大将。オレっち
……
修行に出るよ」
その言葉に、ようやく審神者は顔を上げた。
「ホント?」
「ああ。大将には、ちょっと寂しい思いをさせちまうが、もっと強くなって帰ってくるから
……
待ってろよ」
「オーケー、オーケー。次の修行者は薬研藤四郎に決定、と」
加州がそう言って、パンと手を叩く。すると、廊下に控えていたのか、クダギツネのこんのすけが何やらくわえて部屋に入ってくる。背中にも荷物を背負っていた。
それらを、薬研の前に置くと、こんのすけは行儀よく座して説明を始めた。
「薬研藤四郎さま。修行のためのお道具一式でございます」
「お、おう」
「まず、道中に必要なもの一式を詰めた道具籠、それに修行専用の装束一式です」
「ボクからは、これを」
こんのすけの説明のあと、審神者は道具一式の上に紙の束を置いた。
「大将、これは?」
「修行専用の手紙道具だよ。コレに手紙を書くと、自動的にボクの元に届くようになってるんだ
……
特別製だから、三通分しか持たせられないけど」
そう言うと、審神者は薬研の手をそっと握って、自分の胸元に寄せる。
「手紙、書いてね。薬研」
その言葉に、薬研の白い頬にうっすらと紅が刺す。
「まかしとけ、大将! きっちり修行して、さらに強くなったオレっちを見せてやるよ!」
薬研がそう言うやいなや、こんのすけが「では、薬研藤四郎さま。こちらへ」と、薬研を引き連れていく。
他の藤四郎兄弟たちは、ぽかんとその様子を眺めていた。
「さて、乱に厚。おまえたちも修行に出てもらうからな」
加州の言葉に、審神者が隣に立ってうんうんと頷く。
「特別出陣の成績が良かったんで、政府から修行道具をたくさん支給されたんだ」
まだ目元に涙を少し残しながらも、審神者がそう言って微笑むと、その笑顔で粟田口兄弟たちはほっこりとした。
「大将! オレ修行に出たい!」
「え、あ、修行? ボク、ちょっと
……
」
見事なまでに両極端な反応を見せる厚と乱を、審神者が目をうるうるさせて黙らせる。そこで、タイミング良くこんのすけが戻ってきて、修行が決定した二振りをそそくさと連れて行った。
「あ、鯰尾も明日から特別遠征の部隊に組み込んだから。すぐに練度も最大限になるし、そしたら修行に出てもらうからな」
「げ」
加州がにっこり告げると、鯰尾の頬が引きつった。
「ボクより、弟たちや他の短刀たちのほうが先なんじゃないですかぁ〜?」
「顕現順とバランスさ。脇差で練度が高いのは、修行帰りの骨喰、青江、お前だからな」
「あ。ほら! 堀川国広がいるじゃないか!」
鯰尾は、自分と同じ時期に顕現して練度の高い脇差の堀川国広の名前を出すが、加州はそれをばっさり斬った。
「堀川国広は、和泉守兼定と同時期に修行に出たいから、特別遠征の部隊に組み込んである。一緒に行ってこい。軍議がもうすぐはじまるからな」
「えー
……
」
ほら行った行ったと、加州は早々に鯰尾も部屋から追い出した。
「
……
これで大丈夫かな? 加州」
審神者がおそるおそるという感じで、聞いていた。
「んー、まあなんとかなるんじゃない?」
「
……
加州どの。これはいったい?」
怒涛の展開についていけず、一期一振が問いかけた。加州は、残った粟田口の面々を見ながら、にっこりと微笑んだ。
「主の恋路を邪魔しそうな刀を、修行に出そうぜ作戦!」
「作戦名、長くね?」
「長いね」
すかさず、後藤と信濃がツッコミを入れた。それに鼻白む加州だったが、コホンと一つ咳ばらいをして、あらためて説明した。
「俺は、三日月のじじいたちと違って、警戒するんじゃなくて、主を応援したい」
「ソレは、俺も賛成」
「俺も」
後藤と信濃が、加州の言葉に手を挙げてそう言った。
「よくわかんないけど、ボクは主さま応援したいです!」
「ボクもです!」
「僕も!」
残りの短刀たちが次々とそう言って、ひとしきりはしゃいだあと、一期一振にみんなの視線が集中する。審神者もじっとこちらを見つめてきて、一期一振は居住まいを正した。
「一期一振
……
」
「いち兄
……
」
甘える子犬のような眼差しを向ける主と弟たちに、粟田口の長兄はすこぶる弱い。
「
……
わかり申した。さしづめ、私のお役目は三日月どのたちの目を誤魔化すことでございますな」
「わかってんじゃん!」
加州が満面の笑みで、一期一振の肩を抱いてバンバン叩いた。太刀の膂力かというくらい力強くて、思わず美麗な顔がひきつる。そこで、審神者が一期一振の前に腰を下ろすと、深々と頭を下げた。
「ありがとう。一期一振」
「あ、主殿! 顔を上げてください」
「粟田口の長兄であるキミが協力してくれないとなると、どうしていいかわからなかったんだ」
顔を上げた審神者は、顔をくしゃっとして、泣き笑いのような表情になる。
「本気
……
なのでございますな」
そんな主の様子に、感心したように一期一振が呟いていた。その言葉に、審神者はリトマス紙のようにぱっと顔を赤らめた。
「い、いや、その
……
彼とどうこうなりたいとか、そんなんじゃなくて! ま、まずはボクの存在に気づいてもらえたらって
……
」
早口であわあわと言い訳する審神者が微笑ましくて、一期一振の表情が優美に綻んだ。
「良うございます。この一期一振、粟田口兄弟の長兄として、弟たちと協力しましょうぞ
……
薬研たちは、何とかいたしましょう」
古参刀の思惑、主に並々ならぬ感情を持つ弟たちの対処、他の弟たちとの意見統一。
あれこれと頭が痛くなるほどの憂いは、主を前にして霧散していた。
何も思い悩む必要はなかった。自分は、この方を主と定め、粟田口の長兄としての立場をいただいたのだ。その主の望みを叶えることこそが、最優先事項ではないか。
長兄の晴れやかな横顔を見ながら、後藤と信濃がまたもやこそこそと耳打ちする。
「堕ちたな」
「堕ちたね」
「しょうがないか、大将だもんな」
「うんうん。僕らの大将だもんね」
小竜景光が、主の存在に気づくまで、あと97日。
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