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あつき
2024-07-23 00:52:24
18712文字
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甘美なその血を与えることなかれ
吸血欲とキスしたい欲に抗う、片思いドちゃんの話です。
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「舌が痛ぇ」
風呂に入っているときからなんかズキズキするなと思ってたけど、 気のせいではなかった。
最初に牙が刺さったときはそりゃちょっと痛かったけど、その後は無我夢中だったからか痛みなんて気にならなかったのに。
座ってろと言われたから、ダイニングチェアに腰かけて大人しく食事を待ってた俺に、ザコ砂は容赦なく喚き散らしてきた。
「当たり前だ、バカ造!あんな無茶しやがって。傷に染みるだろうから、唐揚げの予定を急遽変更して冷製スープにしてやったわ!粘膜だから治りは早いだろうが、それでもしばらくは刺激の少ない柔らかい食事だな」
お洒落なお店でしか出てこないような冷たいスープが、ダイニングテーブルにコトリと置かれた。
「えーん俺の唐揚げ!!!」
目の前に置かれたスープはきっと飲んだらうまい。こいつの作るものにハズレだったことはないからそう確信できるけど、本当は今頃唐揚げを頬張っていたと知ったらどうにもショックが隠せない。でも自分がしたことに後悔はしていない。
もう一度時間を遡ってどうするかと選択出来ても、また同じことをするだろう。
「自業自得だバーカバーカ!!これに懲りたら二度とこんなことするなよ」
「
……
おう。もう舌から飲む必要はないだろ。次は、
……
首からか?」
自分で言って少し恥ずかしくなって首を掻いて目線を床に向けたら、ちょうどそこへバサッと黒のエプロンが下に落ちてきて出来た砂山にかかった。
危ねぇ。スープに入ったらどうすんだ。というか、こいつ何で死んだ?
「違う
……
私が言いたいのは、己を犠牲にして他人を助けるなと言うことで
……
」
「はぁ
……
?だから何度もお前だけだって言ってんだろ」
「私でもだよ!えーんこの五歳児話が通じないよぉ!」
二百歳越えのおっさんはするりと復活すると、可愛いジョンに泣きついた。
「ヌー
……
」
ジョンも困ったように遠い目をしている。え?これ俺が悪いの?
「チクショー見てろよ若造!これから嫌と言うほど教え込んでやるわ!!」
ぷりぷりと怒ってキッチンに引っ込んでいった。ザコ砂から教わることなんてあるか?意味わからん。でも、何だか大切にされていることは分かる。
ジョンには冷製スープだけじゃ可哀想だからだろう、鶏肉のソテーも置かれている。予定そのままで唐揚げでも良かった筈なのに、きっと俺に気を遣って変更してくれている。
優しいんだよな。
「なあジョン、俺って思ったよりあいつに好かれてる?」
可愛い丸にこっそり呟けば、ジョンは口をあんぐり開けてから首をブンブンと縦に振った。
「ヌッヌヌ」
とっても、とだけ呟いた言葉に、俺はにへらとだらしなく笑ってスープを掬った。
おわり
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