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MN*B
2024-06-23 02:25:45
14510文字
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蠱毒な夢術廻戦:pixivバックアップ
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E.24 波紋の爪痕
シリーズ中第41話になります。
注意書きは1ページ目、もしくはシリーズ概要の方にあります。
このシリーズの閲覧やブックマーク、いいねやコメント・スタンプなどを、いつもありがとうございます。励みになっております。
お待たせしました~!! 予定の同日中ということでセーフってことで!!お願いします!!
今回、渋谷事変序章って感じです。一期分の終わりに書いてた【おまけ】を推敲し、隠していたところも加筆しました。
原作沿いではありますが、ここまでくるとちょっとずつ原作とは違う部分が明確になってきます。夢小説の本懐ですね。
一応書いておきますけど、バイクの二人乗りは免許取ってから一年経過後からじゃないと違反ですよ!ノーヘルもダメですからね!
次回、タイトル的にも展開的にも不穏なのが丸わかりですね。
この先を書くためにも、ここまで必死こいて頑張ってきました。いやぁ、楽しみですし楽しみますよ。
二週間以内を目指して書きます。想定だと一万字程度に収まると思いますが、話の詰め込み方で変わります。
【428のゲームについて】
サウンドノベルゲームです。CMキャッチコピーは「さらば、昨日までの渋谷」。
【直毘人の酒語りについて】
書き手の趣味です。特に意味はないです。
【祓禳呪法の 祓禳 フツジョウ とは】
神に祈り、災いを祓う。
仮名をつけた五条悟が舞台を整え、目撃したとき、その術式の行使は神前で行われた。ただし、その神は人によって創られたものであり、行使者の血縁とする。
追記2023.11.7:脱字修正とちょっとした加筆。特に変化自体はないです。
#夢術廻戦 #オリ主 #真人(呪術廻戦) #虎杖悠仁 #五条悟
2023年11月5日 06:02
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同刻 東京メトロ 明治神宮前駅 3番線
喧騒が聞こえてくる。それは不安と動揺が渦巻き、焦り、
慄
おのの
き、怯え
……
負の感情に満ちた人々の声だった。
最悪の目覚めだ。意識がはっきりする前から、口の中で血の味がしていた。
乾いて開きにくくなった瞼に、少しだけ懐かしさを覚える。だが、掠れた視界に映るのは、懐古の念を抱くにはまだ早い、決着のついていない相手だった。
「おはよう。ずいぶんと遅い目覚めだね」
逆さまの顔が告げた。
「真人ッ
……
!?」
「おおっと。急に動くと“壊れちゃう”から気をつけな?」
相手は何が楽しいのかケラケラと笑っている。ガラスの向こうに居るソイツは長い髪をぶら下げて、上から垂れ下がっていた。
対する俺は、椅子に座らされた状態で目が醒めたようだ。後ろ手に拘束されていて、身動きが難しい。
ここは
……
電車の運転席か?
目の前の機器と、狭い居場所。そして、自身の背後
……
腕から聞こえてくる声に固まる。
「ぁー
……
」
改造された人が、まるで手枷のように俺の腕に嵌められている。感覚と感触で、そうなのだと理解した。
聞こえてきたのは喃語だ。いや、それよりもずっと幼い。壊れるというのは、この子のことか
…
!
目の前に居ながら手の届かない位置にいる相手を、俺は睨みつけた。
「どういうつもりだ」
「トロッコ問題って知ってる? もちろん知ってるよね」
真人は俺の問いには答えず、さも機嫌良さそうに尋ねてきた。その声はガラス越しのくぐもったものだったが、俺にはハッキリと聞くことができた。
「決めつけるくらいなら最初から聞くな」
俺が言い捨てるとブーイングが飛んだ。余裕ぶっこいてふざけてやがる。
目を伏せて、浅くなる呼吸を制御する。あれからまた何日が経ったのか分からないが、今の俺は明らかに、活動するためのカロリーが不足し始めていた。
なぜこんな場所に俺は居るんだ。確か俺は
……
いや、今考えるべきことじゃない。
相手がまた話し出す気配を感じ、制服の胸元に開いた穴から、俺は視線を上げた。
「トロッコ問題って、あーだこーだ議論されてるみたいだけどさ、結構ひどい問いかけだと思わない? だって人を見殺しにするか、自らの意思で殺すかの違いでしかないし。人間は必ず死ぬわけじゃん。残酷だよねー」
「ただの思考実験にあーだこーだ文句言うの、傍から聞いてると馬鹿にしか見えねぇな」
俺の嫌味を聞いた真人は、「ただの思考実験、ね」と、意味深に呟いた。
「じゃあさ、自分の手を汚さず『見殺しにする』か、大勢のために『人を殺す』か。お前はどっちにする?」
「お前の無駄話に付き合う気はない」
「これは
お話
対話
じゃないんだ。お前の“
これからの話
すぐ未来のこと
”だよ」
相手は視線を俺から横にズラし、俺の後ろを見た。
「
…
!」
「
……
」
後ろを向けば、運転席のスペースには立ち入らないまま、衝立のようにひしめく改造された人がいた。
彼は声もなく、ただ静かに涙を流して
……
この苦痛が終わるのを待っている。
「俺って優しいからさー。乗ってるのは全員、改造してあるよ。もう助からない命だって思えたほうが良心も痛まないでしょ」
「テメェ!!」
「おっ、激しくしたら“壊れる”よ。それに、説明はまだ終わってないから」
俺が立ち上がってガラスに迫ろうとも、相手は余裕を崩さない。
ふざけるなと怒鳴っても、どうせロクな返事はない。俺は言葉を飲みこんだ。
「まさか意味もなく、車両にお前と人間を詰め込むわけないじゃん」
あっけらかんと言う。そして、その口で「そりゃ俺がやりたかったら、意味もなくするけどさ」と言葉を一転させた。
相手の視線がさらに動き、車外を向く。促すような行動に、警戒しながら俺も横へ目をやる。
側面にある小窓からホームが見えた。
……
S15、明治神宮前、原宿。反対側の線路にも列車が止まっている。
ホームでは大勢の人々が騒めき、こちらの列車を遠巻きにしていた。
相手はこちらに向き直ると、首を傾げ、髪を揺らしながら話す。
「ここから渋谷駅まで、大体3分弱? いや、2分くらいだったかも。なんだっていいけど
……
彼らは着いた先で、ほかの人間を襲うよ」
「襲わせるの間違いだろ。他でもない、お前がそうさせるんだろうがッ」
俺が足で正面のガラスを蹴り飛ばすと罅が入った。
……
クソッ、体勢も状況も、何もかもがキツい。
それでも相手はしらっとして「あー、はいはい。そーだねー」と適当に返事をするだけだった。
「じゃあ、止めたいだろ? なら、着くまでの間に、お前の乗ってる列車内の人間を全員殺せよ」
「ふざけるな」
「俺はふざけてなんかない。ちょっとした遊びだって」
それが“ふざけている”のだと、怒鳴ったところで意味はない相手だった。
……
人の尊厳を、命を扱うことは、決して遊びにはならない。
そして、コイツに指図される謂われないし、その必要もなかった。この電車を止めればいいだけだ。
そう考えた俺のことを読んだように、相手は釘を刺してくる。
「これはゲームだ。お前はこの電車を停めてはならないし、車内から出ちゃいけない。そういうルールなんだよ」
「お前に従う理由なんて俺にはない」
「いいのかなぁ、そんなこと言って」
相手はチラリと、これ見よがしにホームにいる人たちのほうに目配せをする。
「じゃ、試しにルールを破ってみなよ。俺は別に構わないし。また場を整えてあげるだけだからさ」
どうせ俺がどうしようとも殺すだろうが
…
!
……
そうだ。コイツを止めない限り、殺戮は止まらない。
「その前にお前を殺してやる
…
!」
「捕まってるクセによく言うよ。しかも、お前に俺は殺せない。
……
まだわかってないんだ」
相手は憐憫の目を向けてくる。
……
反論はできなかった。
力量と現時点での俺の体力。コイツを殺すには、今はどちらも欠けている。ガラスを一度で蹴破れなかったのがその証拠だ。
それでも、俺だってただで死ぬ気はないし、従う気もない。
そんな俺の考えを握り潰すように、言葉が続けられる。
「勘違いすんなよ。お前が話にノるか、ノらないかじゃない。お前はもう乗ってるんだよ、トロッコに」
俺の意思など関係ない。言いなりになれ。
……
そう告げていた。俺のことを踏み躙るように、ねじ伏せるように。
その態度に、俺の中で何かが振り切れた
――
!
「お前は何がやりたいんだ! 俺に何をさせたいんだよッ!!」
「お前こそ何がやりたいんだよ」
温度を感じない平坦な声で問い返され、予想だにしない反応に俺は怯んだ。
相手は逆さまのまま、無表情の顔でこちらをジッと見つめてくる。
「高専の人間のこと裏切ったんだろ。だから、内通者だった与幸吉のところに居た。
……
そうだろ」
違うとは言い切れない。だが、違う。違うんだ、
「アイツは、」
「アイツは自分のために人間を裏切った下衆以下だよ」
「うるさい!! お前が殺したんだろ!! お前らがアイツの、人の弱い部分に付け入ったんじゃねぇのか!?」
「だったら何? そうだとしても、裏切ったことには変わりないでしょ。そんな奴がどの面下げて人間側に戻んの? 戻ったところでさ、アイツにも、お前にも
……
居場所なんて、あるわけないじゃん」
自然の摂理を説くように、紅葉した木の葉が枯れ落ちていくのが当然の如く、「それならいっそ、殺してやるのが慈悲ってもんだよ」と、真人は言った。
言われたことは認めたくないけれど、でも、心のどこかで思ってしまうことだった。
俺ばかりが約束を覚えていて、過去に置いて行かれ、帰る場所もなくなっていたとすれば
……
俺の願いは独りよがりでしかない。
だとしても、俺は
……
何かが切れたかのように、一気に眩暈がして、立っていられなくなる。俺は耐え切れず、元のように椅子に座り直すことになった。
相手は変わらず逆さのまま、罅の入ったガラスの向正面にいて、そして仰々しく両腕を広げてみせる。
「俺はね。お前に自由になって欲しいんだ」
「
……
は? 意味わかんねぇこと言ってんじゃねぇよ」
今まさに最悪の方法で拘束してる奴が言うことじゃない。世迷言を言うコイツのせいで吐き気が助長されそうだ。
「自由には責任が伴う。呪霊のお前にはわかんねぇだろうな」
俺は高専生として自由を手にしていたからこそ、呪術師としての責任を負っている。決して十全とは言えないが、それなりに責務を果たしてきたつもりだ。
俺の返答を聞いた相手は不貞腐れて、一気に投げやりになる。
「じゃあお前が呪霊に成れば、俺の言うことがわかるようにでもなるわけ? 違うだろ? お前の言うことがわかんない人間はいーっぱい居るのにさ、呪霊って括りで除外すんの意味わかんなーい」
あまりにも白々しい。付き合ってられない。
助けられるかわからないけど、この体勢でも術式をどうやってか発動させなければ
……
。
俺が自分のことに集中しようとしたとき、相手が何かを思い出したふうに手を叩いて声をあげた。
「そうだった! 足元、気にしたほうがいいよ」
「
……
」
正直、気乗りはしない。嫌な予感がする。だが、相手の気が変わっても面倒だ。
俺は自分の足元を
……
運転席の床に目をやった。
「それ、あげる。トロッコ問題にはない、第三の選択肢だ」
写真、顔写真付きの名刺、免許証、プリクラ。見知らぬ個々人の持ち物が無造作にバラ撒かれている。共通点は、持ち主の顔が分かること。
「俺ってば優し~。殺す以外の選択肢をあげるなんて。
……
ホラ、助けたきゃ助ければ? 元の形がわかったほうが戻しやすいでしょ。改造するときに集めといたよ」
第三の選択肢? これが?
足元に散らばり、足蹴にしてしまっている人々の顔を見下ろす。それらは少なくとも二十枚はあった。
「あーでも、枚数あってないかも。持ってなかった奴とか、だいぶ前にイジった奴とか
……
いろいろ混じってるからさ。でも大丈夫。俺にできたんだから、お前にもできるって」
コイツ、いったい何人この列車に詰め込んだ!? その上、意味の分からない励ましまで言い始めた。理解できない。
第三の選択肢なんて、有って無いようなものだ。俺にその能力があるかも怪しいのに、全員を助ける余力なんて
……
!
「そうそう。あともう一枚あったんだった、忘れてた。どこやったっけなー、え~っと」
これ見よがしに自分の腕をバタつかせ、服をまさぐって見せる。挙句、自らの口に指を突っ込んだ。
「オェッ
……
あった、あった! はい、あげる」
体液にまみれた運転免許証が一枚、落とされ、罅の入ったガラスに張りつく。それに書かれた名前と、写っている顔写真は
……
。
「あ、にき
…
」
『阿古屋 真司』
全身から血の気が引く。代わりのように、ここに居たのかという思いと、ここで見たくはなかったという失意で満ちた。
「やっぱり知り合いだったんだ。顔似てるし
……
でも苗字違うからさ~、どうなんだろうって思ってたよ」
「お前にッ、名乗った覚えはない!!」
「
……
名乗った覚えもないのに名前を呼ばれるのって気色悪いよね。よくわかるよ」
どこで、いつ、なんで、どうして。あらゆる疑問が渦巻き、それがまた激情に変わろうとする。
下がった血の気が戻り、頭に血が上ってグラグラと視界が揺れる。その中で、相手が穏やかな顔をしているのが癇に障った。
「本当にッ、お前が
……
!」
「尋ねる必要ある? 確証なんて俺たちには要らない。そうだろ?」
尋ねる必要がないと言いながら、確認するようにこちらへ問いかけてくる。だが、相手は答えなんて求めていない。
……
ああ。確かに、これは対話じゃない。こんなものは対話とは呼べなかった。
「俺は嘘をついていない。魂だって揺らいでないのが、お前にもわかるはずだ」
俺は、今までの“
誰か
自分
”は、この力に翻弄されてきた。だから力を封じ、目を背け、耳を塞いだ。
そのせいで、また、疑う余地はなかった。この力は忌まわしく思うほどに、呪ってしまうほどに、狂いなく他者の内心を暴くのだから。
俺が今すべきことは、今すぐこの“拘束”を振り切り、
呪霊
真人
を
祓う
殺す
こと。それが最も被害を抑えられる。
なのに、俺の身体は動かない。
……
動かせなかった。
命は平等だ。だが、俺の中では不平等なのだと認めてしまった。
だからこそ、この
枷
子
を
壊
殺
してしまえば、この列車に乗っている
人
兄
から目を背けてしまえば、越えてはいけない一線を本当に越えてしまう。そう思えて仕方がなかった。
ただでさえ、俺は大切な人たちを裏切ってしまっているのに。
「身を持って知ればいいよ。お前が言ってる“責任”なんて、薄っぺらくて価値がないことをね」
頭が上へ引っこみ、憎たらしい顔が見えなくなる。天井からアイツの足音が聞こえた。
「
――
さぁ、祈れよ」
その言葉が合図になったかのように、列車が動き出す。
……
ホームにいる人々を置いて。
窓に貼り付いていた兄の顔は、風圧と振動で剥がれ落ち、飛ばされ流れて、見えなくなった。
次回
『E.25 悪夢の幕開け』
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