MN*B
2024-06-23 02:24:26
15315文字
Public 蠱毒な夢術廻戦:pixivバックアップ
 

E.23 道標

シリーズ中第40話になります。
注意書きは1ページ目、もしくはシリーズ概要の方にあります。

小説の閲覧、ブックマークやいいね、アカウントのフォローなどなど、いつもありがとうございます。
お待たせしました。

 今回、ちょっと趣味が悪いシーンがあります。そして、話を詰め込みまくって長くなりました。
出だしを読んだだけだと、どっちの視点?ってなるところがあると思いますが…まぁそこも含めて楽しんで頂ければと思います。
そして思いがけず、アニメ最新話とシンクロする展開になりました。

 次回、おそらくやっと渋谷事変に入ります。ここからが本番ですね。
次話の構成をまるで考えていないので、まだどうなるか分かりません! その後は決まってるんですけどね…。
なので、長めに執筆期間をいただきます。とはいえ二週間以内を目安に書き上げたいと思っています。

 

 盤星教と封魔についての話は、過去編IF(仮題:夢想の鯉魚)にて書こうとしてました。が、投稿してないので、ここでも書いておくことにしました。
もっと詳しい話は先々のことになります。アニメでいうとおそらく三期くらいですかね。

 過去編IFについては【今後の予定について・小説お試し詰め合わせ https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16436230】で、話題にしてます。


#夢術廻戦 #オリ主 #オリキャラ #真人(呪術廻戦)
2023年10月22日 01:57



 後悔したってもう遅い。切り替えろ。自分の冷静な部分が囁く。
 ここがどこだかは分からないけど、自分が行くべき方向は分かってる。止まっている暇はない。動け。自分にそう言い聞かせた。


 角を曲がって、人気のない道を選ぶ。灯りから遠ざかるように進み、知らない通りを駆け抜ける。
 だが、その先で足を滑らせながら止まった。舗装された道路の先に、こちらを待ち構えるように立ち塞がった人影がある。

 待ち伏せ……!?

 複数人の気配を感じ、嫌な感覚に肌が粟立つ。踵を返そうとした俺を、――「多重魂撥体」 膨れ上がる肉体の向こうから、声が聞こえた。――相手は的確に狙ってきた。
 莫大な質量が俺の胴体を捉え、衝撃が突き抜けるッ!

 植木の間を抜けて、フェンスを破り、破片が飛び散る。それでも勢いは衰えない! さらに何か建物の壁すら破壊して、俺は背中から突っ込んだ。
 瓦礫が崩れ落ちる向こう側から、畳み掛けるように巨大な顎が現れる。回避はせず、相手の動きを止めるために、俺は右腕を差し出す。
 噛みつかれ、犠牲にした右腕が噛み砕かれる――前に、相手の顎を上下貫通して刃が飛び出した。……獣鉤手だ。

……すまない」

 血が滴り、袖が重たくなる。力なく項垂れた遺体の口から腕を抜いて、周囲を見回す。……ここは、アパートかマンションの廊下か。

 住人の気配はなく、おそらく入居前かモデルルームといった感じだろう。俺が凭れた扉の横に『102』と部屋番号の書かれたプレートが貼られていた。
 さっそく事故物件にしてしまったのは申し訳ないが、こちらものっぴきならない事情だ。ここに電話線が引かれているとは思えないものの、もしあれば助かるのだが。……切実にそう思った。

 ガラスが砕ける音と、金属の歪んだ音が耳に入る。

――おーい、いるんだろ。出て来いよ」

エントランスがあるだろう方向から響いてきた声に顔をあげた。真人 アイツだ。軽薄な調子で「なんだっけ、えっーとね」と一人で喋っている。

「出ておいでー、でないと……目玉をほじくるぞー?」

「ァァアアアァアッ」

人の濁った悲鳴が響き渡る。湿った音が生々しく、こちらにまで聞こえてきた。
 アイツは人を改造した挙句、“言葉通りのこと”をしている!!

 また荒れて震えそうになる呼吸を抑えた。……落ち着け。優先順位をつけろ。

 どうせアイツは手元の人も俺のことも殺す気だ。助けることは困難で、俺だって逃げ切れるか怪しい。
 優先すべきは――青く澄み渡った双眸が脳裏をよぎる。――敵の計画を味方に伝えること。本来なら彼が持ち帰るべきだった情報を、彼のことを伝えることができるのは、もう俺だけだ。

 俺は、俺の大切なものを優先する。


 悲鳴に背を向け、静かに素早く一歩を踏み出す。通り過ぎざまに壁に傷をつけた。
 一見してメッセージだとは分からないように、だがよくよく考えれば理解できるように。無意味なものではなく意味のあるものとして、跡を残す。

 廊下の奥へ進み、階段を上がる。着実に近づいてくる足音と逆に小さくなる悲鳴を聞きながら、思考を巡らせた。

 俺は四階から五階に行く階段の途中で足を止め、またメッセージを残す。
 すぐそこまで来ている、時間がない。数字と記号のみに絞る。あと、四文字のアルファベットを――ダメか。

 相手に視認される前にと、俺は振り向きざまに飛び出して、階段を落ちる。聞こえていた通りの位置、四階の踊り場にいた相手に向かって殴りかかった。

「真人ッ」

「みぃつけた!」

 真人は歓喜の声をあげて、手元の人を投げつけてくる。……もう息はない、遺体だ。
 嫌がらせか目くらましとして投げられたソレを獣鉤手で切り裂き、血潮をぶち撒け、臓物に塗れながら、俺は相手に向かう。目は逸らさない。


 戦いの場は四階の外廊下に移った。
 ここからは外が見え、人々の営みが放つ灯りがこの場にも微かに届いていた。それを脇に置いて、俺たちは争う。

 相手が扉を剥ぎ取って投げつけてくれば、俺はそれを獣鉤手で切り裂いて脇に除ける。攻防を繰り広げながら、俺は次第に相手を廊下の奥へ追い込んでいく。
 こちらに飛び道具はない。だから、詰め寄っていくだけだ。……俺はもう、後に引けない。

 こちらを切り刻もうとしてくる腕を避け、相手の顎を膝で蹴り上げる。そのまま天井に両手を伸ばして刃を食いこませ、身体を勢いづけ直し、続けざまに側頭部へ回し蹴りを打ち当てた。

 俺の背後で、切り刻まれた天井が瓦礫になって降り注ぐ音がする。
 相手は柵から外に上半身を投げ出し、えずいて、口元に手を当てた。
 わざとらしい行動に、俺は食いしばっていた歯をこじ開けて、言葉を吐き出す。

「クソ野郎が。表に出ろッ」

「アハハ……いいよ! でも俺なら、こうするねっ!!」

 相手が笑いながら顔を上げた。唾液に塗れた口元と手元が見え、そこには複数の――「ァうエェ:た@#’=#て」
 咄嗟に手を伸ばすが届かず、腹を蹴り返され壁に叩きつけられる。変なとこに入って、息が絞り出された。

「多重魂撥体」

 相手の術式が発動した! 立ち上がるも、回避は間に合わないッ。
 アイツの手の中の質量が一気に増え、その勢いで俺は壁を破壊しながら上へと突き上げられていく

 いくつもの壁を越え、遂に空中へ投げ出された。残りの階層全部をぶち抜いて、屋上に出たのだ。
 眼下に目を向ければ、俺を押し上げた“改造された人たち”が息絶えるところだった。――俺の気のせいじゃない。アイツ、人と人を混ぜやがった!!

「気色悪ぃ真似しやがって!!」

「お前が言うなよ!」

 身を翻し、落下の勢いのまま相手に殴りかかるが、やはりリーチの差で負ける。
 着地する寸前で殴り飛ばされ、貯水槽に背中からぶち当たった。水が吹き出し、周辺を濡らしていく。

「お前にだけは言われたくないって言ってんの。わかってんだろ?」

相手はわざとらしく「オエー」と口で言いながら、表情を崩した。

 頭から水を被り、返り血が流れ落ちて体温も水に溶けていく。それでも、意識も自我も手放すことができず、俺は鈍い動きで立ち上がる。
 相手は俺の向かいに立って、相変わらずベラベラと喋っていた。

「遠回しなことしやがって。嫌がらせかよ」

……なんのことだ」

 心当たりがない。あったとしても、思い出す気になれない。
 そんな俺の態度に相手は苛立ちを隠さず、語気を荒げる。

「なんであのとき、俺のことを撃ち殺さなかった。できたとは言わないけどさ。元からあの攻撃には殺意がなかった……何がやりたいんだよ」

 そこまで言われて、やっと察しがついた。コイツが領域を展開したときの話をしているのだ。
 そして、あのとき起こったこと……いや、“何も起こらなかったこと”を思い出す。

 俺は確かに撃った。だが、相手に明確な傷を負わせることはできなかった。

 俺の呪法は攻撃性をほとんど失っている。結果的に相手を傷つけることはあっても、呪法自体が相手の魂を傷つけることはない。……俺がそう望んでしまったから。
 それでも呪霊なら消し飛ぶはずだと踏んでいたのに、そうはならなかった。
 未だに、俺の力については、俺にも分からないことだらけだった。それとも俺が腑抜けになってしまったのだろうか。

 これでは相手の言う通り、嫌がらせと変わらない。だから、平静を装って答えた。

「なんだよ、わかってんじゃねぇか。嫌がらせだよ」

 相手は唾でも吐きそうな顔をして、侮蔑の目をこちらに向ける。

「呪えよ、初めて会ったときみたいにさ。俺を殺すんじゃないのかよ」

「そうだ、そうすべきだ。お前は許されない」

 お前は人を殺す。弄び、甚振り、呪って、殺す。生かしてはおけない。存在自体が許されない。この考えは間違いじゃないはずだ。
 なのに、そう思えば思うほど、この身 が重くなるのは何故なんだ。――……ああ、いたい。

 自我が ほどけそうになる感覚から目を背けて、不敵に、大胆に見えるように、余裕ぶって、口元で笑みを作る。

「生得領域じゃなくて現実なら、お前にも効くんじゃねぇか」

「なんだ、自滅が嫌だったわけ。死ぬのが怖くなりでもした?」

「怖い? いいや。本当に恐れるべきは――

記憶_ __ 死神
 紫煙を漂わせ、暗晦 __に向かって喋る。
  「怖いのは自分に向けられる悪意や痛み、つまり死の要因であって、死そのものじゃないんだよ」

 片手で印を結ぶ。その印に、相手は一瞬呆気にとられる。

「『闇より出でて闇より黒く、」

「何を」

「我と共に鎮め、その穢れを禊ぎ、祓い給え』」

 ――薄ら雲のかかる夜天に、さらなる夜を下ろす。地平線に残っていた淡いオレンジの光も向こう側へと消え、星の光すら存在しない闇の中に俺たちは呑まれる。


 気づいてくれ。俺はここにいる。
 俺がいなくなった後でも構わない。少しでも伝われば、伝えられたら、残せれば、それでいい。

「アンタなら、わかるだろ」

俺はここにいるんだ。