MN*B
2024-06-23 02:17:10
11435文字
Public 蠱毒な夢術廻戦:pixivバックアップ
 

E.21 破乱 ―寛解―

シリーズ中第38話になります。
注意書きは1ページ目、もしくはシリーズ概要の方にあります。

小説の閲覧やブックマークなどなど、いつもありがとうございます。

 
 今回、本編軸でいう宵祭りが終了です。時系列が多少重なりつつ前後する描写になってます。
想定より少し文字数が伸びました。そして、最後まで迷ってました。
矛盾がないように気をつけてますが、間違ってたら気づいたときにコソッと修正します。

 次回、渋谷事変に…まだ入りません。二話ほど話を挟んでからになります。
次話は余裕をもって二週間以内を目途に書かせていただこうかなと思ってます。

 

【青嶺と真人のやり取り:サンショウウオと蛙とエビ】
井伏鱒二 著「山椒魚」「幽閉」

 
【与幸吉が縛りに接触しなかった理由とザッとした解釈】

 与幸吉は、真人らと敵対するような行動(五条悟に情報を流す 等)を縛られていた可能性が高い。しかし、試作0号などを造れていたことから、事前準備までは縛られておらず、直接的な行動でない限りセーフと仮定。
 与が青嶺を呼んだ理由は協力の要請。具体的な協力内容は結界の構築程度(事前準備に含む)。しいて言うなら、内通者であることを告げずに、内通者の手先になってもらっている扱い。
 そして青嶺も、敵と戦う(真人らとの敵対)という目的ではなく、与と会うために(与の夢を叶えるため)訪れている。
 且つ、説明や情報の共有などは一切なし。内通者であることがバレていたとしても、与が故意にバラしたわけではないので、縛りには引っかからない。

 …以上。

 
追記:4P目に単語抜けがあったので追加。


#夢術廻戦 #オリ主 #オリキャラ #与幸吉 #真人(呪術廻戦)
2023年9月24日 02:02



 領域は弾け、俺たちは危機を脱した。真人の姿もない。俺は頬に流れてきた汗を袖で拭って、視線を下に向ける。

「おい、大丈夫か」

問題ない。アイツにやられたわけじゃねぇからな、もう治った」

 青嶺衛は落ち着いたまま、血が飛んで汚れたサングラスを外し、深く息を吐く。その言葉通り、傷はなく出血の名残だけがあり、首筋から覗いていた金属は姿を消していた。コイツもコイツで規格外だ。

 青嶺衛は、日が昇る前には俺の下へやって来ていた。そして、奴らがやって来る前に、このメカ丸の中に隠れ潜んでもらっておいたのだ。黙って座って待っているように頼んだだけだが、それが結界の効果を底上げするための縛りでもあったわけだ。
 上手くいけば真人だって騙せると踏んだが、こうも上手くいくとは。……俺は緊張で強張った手を握り直す。

「真人はやれた。あとは夏油だけだ」

「違う、まだだ。……アイツはまだ近くにいる、仕留めそこなってるな」

「わかるのか」

「なんとなくだが、そんな感じがする」

 『なんとなく』。コイツの理屈じゃなく、感覚で物を言う態度が嫌いだ。
 本人に自覚がないのが腹立たしいが、その感覚は正しい。俺の密偵用の傀儡が、その“なんとなく”で身動きを封じられていたのが証拠だった。

 俺が歯噛みをしてメカ丸で真人の姿を探していると、青嶺衛が話しかけてくる。

「与幸吉。予備のメカ丸はいるのか」

「だとしたらなんだ」

「帳を力づくで解除できるか?」

「まさか……逃げろって言うのか!?」

「そうだ」

 真人との戦いで既に消費した"年数"と"武器"。それをドブに捨て、その上、相手を祓う機会すら投げ打てというのか!!

「それはできないッ。第一、逃がしてくれるような相手でもない! お前は今さら何言ってるんだ!!」

「戦って勝てる相手でもない。真人だけならともかく、あそこにいるのが百鬼夜行を起こした夏油なら特級だ。それも死人のはずのな。……アレは、何かがおかしい」

 彼は警戒心を前面に出し、撤退を促してくる。
 慎重さと臆病は違う。やはりコイツに戦う意思を求めるのが間違いだったのか……!?

「何を日和ってる!? 真人を倒せる絶好のチャンスでもあるんだぞ!」

だとしてもだ。それに、お前の勝利条件はそうじゃないだろ」

 俺の前方斜め下に居る彼は、こちらを振り向かないまま、諭すように静かに話す。

「俺はお前に手を貸しに来た。そういう"約束"だからだ。でもそれは呪霊の相手をするためじゃない」

 意思を曲げる様子はなく、譲らないのだと告げている。
 だからこそ、縛りに接触せずにいられたのだと思い知らされる。――コイツは、戦うためにやって来たのではない。

「お前の叶えたいことを叶えるためだ」

 人の願いを叶える。ただそれだけのために、ここにいるのだ。

 彼の態度は一貫していて揺るがない。それとは真逆に、俺の意思は揺れ、俺の心臓は早鐘を打つ。
 皆と一緒に――だがその願いは、このままでは果たせない。裏切者という肩書のついた俺では、きっと!!

「お前が何をやってたか、俺も大体の想像はついてる。どうしてその選択に至ったのかも。……俺がお前に恨まれるのも道理だ」

 懺悔するかのように、ポツリと溢された言葉。
 あのときの彼は「八つ当たりだろ」と言い放っている。それを撤回したのだ。……それがさらに俺の神経を逆なでする。

「お前のことは嫌いだ。でもそれはお前が今さら現れたからじゃない。相手の言い分を認めて、全てを背負おうとするところが嫌いなんだ!」

 事実、俺が彼に向けた言葉と行動は逆恨みだ。俺だってそれを認める。
 だが、それを馬鹿正直に受け止めて、非がないのに責任を感じて悔む。それこそ俺を馬鹿にしている!

「俺の身に起こったことは、すべて俺の選択だ! 俺が選んだ! お前が居ようと居まいと関係ない!!」

 これから起こることだって、俺がした選択の結果だ。お前が俺にそう言ったように、俺だって同じことだ!
 彼が俺に言ったことをそのまま返せば、彼はこちらを振り返って驚いた顔をした。そして、また申し訳なさそうにする。

「そうだな。って、また同意したらいけないのかもしれないな。でもお前の言う通りだ」

 彼はこちらを真っ直ぐに見つめて、「だからこそ、言わせてくれ」と言葉を続けた。

「お前はひとりで戦わなかった。俺を呼んで、助けを求めた。お前はお前にできることをやった、それでいいんだ。迷わなくていい」

すべてを与えられてきた、恵まれた存在は、少年の姿のまま大人びた顔をみせる。

「もう一度やり直すチャンスを作る、選択肢を与える。それが、大人 俺たち子ども お前にしてやれることだ。……青春だなんだってうるせぇ人がいるしな。心配いらないだろ」

 皮肉めいた笑みを浮かべているが、その表情は柔らかい。

 お前は何も訊かなかった。俺も何も言わなかった。お前は何も知らないまま、こんなことに巻きこまれている。それで尚、お前はそんな顔ができるのか。


 メカ丸のアラートが鳴る。カメラがピックアップした映像には夏油が映り、その横には真人が立っていた。喋っている様子が映し出されている。
 領域展開中は、術者にバフがかかる。真人は青嶺衛からの攻撃を食らったはずだが、領域による底上げでダメージは軽減されたか。簡易領域の撃ちこみも、決定打には成りえなかったらしい。忌々しくしぶとい奴だ。
 その上、青嶺衛がこの場にいることを告げ口されたな。真人を仕留め切れていれば、対夏油のための切り札にも成りえたのだが、こうなっては仕方がない!

「言質はもらったからな。ここを切り抜けたら、五条悟への取り次ぎに協力してもらうぞ!」

「元からそのつもりだ」

 青嶺衛は静かにそう言い返してきて、その視線を前に戻した。そして、不可解そうに呟きを漏らす。

「帳を強制的に解除するには……弱い部分から崩すか、大本を叩くしかない。だが……

 帳の破壊は不可能ではない。実際、交流会のときには五条悟がやってのけている。
 しかし、現実的でもない。帳を破ったところで、また下ろされれば同じことであり、逃げ出すだけでは追われる。
 なら、やることは変わらない。帳を下ろしている張本人と邪魔する奴を潰すだけだ――

 メカ丸の手のひらを夏油と真人に向けようとしたとき、青嶺が警戒の声をあげた。

「ダメだ、“そっちじゃない”!! クソッ、来たぞッ!」

 装甲が破られ、破片が飛ぶ。喉元に突きつけられた凶器 ドリル――! 真人の凶悪な顔がこちらを覗きこんでくる。
 まさか、夏油の傍に居る真人は本体ではなく分身……囮か!?

 青嶺衛の獣鉤手によって、真人が切り裂かれる。それに一時救われたものの、真人の進撃は止まらない!

 迫りくる真人。俺との間に割り込むように、青嶺衛が飛び出す。彼は相手や内壁を足場にしながら、触手のように伸びてくる腕を次々と切り落としていく。
 真人はその攻撃を歯牙にもかけず、狂ったような哄笑 こうしょうを響かせる。

 青嶺衛は相手との距離も付かず離れず、攻撃を捌き続ける。彼が呪法を使わずに防戦する一方なのは、守るべき対象 がいるからか

 術式を装填した筒を手に取った。しかし、攻撃に加勢しようとした俺を止めるように、声が飛んでくる。

「こっちはいいから、お前はいけッ」

「行けって、」

いに行くんだろ! みんなに!!」

 その声は、諦めるなと背中を押す。ここで命を懸けるなと言う。逃げろと訴えている。……生きろ、と告げていた。
 光を失わない瞳が一瞬だけこちらを捉え、そして敵に向かって流れていく。

いに行け!! 与幸吉!」

「ッメカ丸!! 全部出し切れ! 『最大出力 フルチャージ』だ!!」

 俺は9年5ヵ月6日分の呪力をすべて使い、破壊されていない右腕一つにエネルギーを集中させる。
 真人の攻撃のせいで装甲が変形したのか、パーツが噛み合っていないときに出る音が響く。メカ丸の動きは鈍い。だが、まだ終わりじゃない!

 『指示系統に問題発生中』『暴発の危険性』『呪術回路に異常あり』……次々と出てきて鳴らされるエラーメッセージもすべて無視する!
 過充レベルでの呪力チャージに、機体が悲鳴をあげた。揺れが激しくなり、メカ丸の動きが止まりかける。

「動け、メカ丸ッ!!」

 青嶺が戦いながら、メカ丸の内壁を裏拳で力強く叩いた。
 モニターに流れるパワー出力が不安定になり、映像が乱れる。呪力総量を示すメーターがバグり、数値が0から増えて、また0に戻った。
 焼き切れる寸前の呪術回路が火花を散らす。それでも、メカ丸は右腕を構えた!

「撃て! メカ丸!! ――撃てェ!!!」

帳に向かって、最大出力の大祓砲が放たれた――