MN*B
2024-06-23 02:15:39
7196文字
Public 蠱毒な夢術廻戦:pixivバックアップ
 

E.20 破乱 ―承―

シリーズ中第37話になります。
注意書きは1ページ目、もしくはシリーズ概要の方にあります。
シリーズの閲覧、ブックマーク、いいね、どうもありがとうございます!
コメントやスタンプなどもいただけており恐縮です。励みになっております。
 今回、お待たせしました。オリ主出てこないじゃん!?な本編に仕上がっております。オリ主視点はありません。
それなりに長くなったので二つに分けました。今回は前半です。
 次回は一週間を目処にあげられたらいいなぁって感じです。目安です。
粗方できてはいるので、続きが出ないということはないです。ごゆっくりお待ちください…。

 本編内での時系列は、6ページ目が前半部分が回想で、該当するのがこちらです。→ E.18 耳目一手の慾【 https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16436192 】6ページ目最後
 複座式ロボはロマン。今までの描写からしても、メカ丸を書くのが好きなのはバレてるかもしれませんね。技名とかのルビが大変ですが、好きですね~。
 オリ主の名前が被っていたせいで某人気漫画兼アニメのパロかオマージュみたいなことになりました。けど、元々こういう描写をする予定でした。
 この描写は、オリ主が今の髪色になった設定理由の一つを表してます。結局オマージュなのには変わりませんがね…。
【おまけ:書き手の自己解釈有り】
[Q.壊れた機械を叩いて、直せる? 直せない?]
釘崎:直せる。「コツがあんのよ、コツが」
伏黒:直せない。「叩いたってどうにもなんねぇだろ」
虎杖:トドメを刺す。「じいちゃんが上手かったんだよなー」
青嶺:直せる時と直せない時がある。「接触とかハンダが悪い場合はいける」

2023.10.21 追記:意味が変わってくるなと思い、一文字削りました。

#夢術廻戦 #オリ主 #与幸吉 #究極メカ丸 #真人(呪術廻戦)
2023年9月17日 01:14



 東京校高専内にて、潜入用のメカ丸を使い、廊下側の窓から中を覗く。虎杖悠仁が廊下を進んでいき、その逆の位置に取り残される形で、青嶺衛が曲がり角に座りこんでいた。
 彼が確実に一人になったところを見計らい、借りていた携帯電話を使って、京都校の自室にいるメカ丸が電話をかける。

「もしもし」

「メカ丸ダ。青嶺衛で合っているカ?」

「え、ああそう、なんだが……加茂さんの番号、だよな?」

困惑した声が返ってくる。それも当然だった。
 俺が青嶺衛と連絡をとった痕跡を残さないために、加茂からこの時だけ借りておいた。表向きは、交流会で接点を持ったはいいが連絡先を交換するのを忘れたから、といったところだ。

「そうダ。ちょっと借りていル。お前に話があるんダ」

「そうか。なんだ?」

「このことは誰にも言わないでくレ。約束できるか?」

「別に構わないが

 了承を得られた。これで一つ目のハードルは越えた。――これまで集めてきた断片的な情報でも、青嶺衛は約束を破らない性格であることが分かっている。
 俺は一呼吸置いた。そして、本題に入る。

「これから俺が話すことは誰にも言うな。質問もするな。それが約束できないのであれば切れ。その場合でも、さっき約束した通り……誰にも言わないでくれ」

……

すぐには返事がなく、数秒の間、無音だった。だが、俺はそれ以上待たずに話を続ける。

「通話を切らないのなら、了承と受け取るぞ。いいか」

……ああ」

やっと返ってきた返事は短く、まだ曖昧さが残っていた。
 俺は相手に深く考える暇を与えずに畳み掛ける。

「これから俺の言うことに、イエスかノーかを答えろ。お前は断ることもできるが、その場合、誰にも言わずにこのことは忘れるんだ。わかったな」

「ああ」

「俺を……手伝ってくれ」

……わかった」

 彼はそれだけを言って、廊下の隅から立ち上がる。その会話の中で、一番はっきりとした返事だった。


 そして今日。青嶺衛は約束通り、一人で俺の元にやってきた。


 甲高い音が鼓膜を刺し、扉が開く。光はなく、人影すらできない。

……来たか」

 俺はライトもつけていない暗がりから声をかけた。相手は暗闇を気にも留めずに、真っ直ぐこちらに向かって歩いてくる。その足音がした。

「ああ、俺だ。メカ丸……いや、与幸吉」

俺が照明をつけたとき、彼青嶺衛は、すぐ目の前にまでやってきていた。

「早かったな。約束通り一人か」

「まぁな。近くまで車で来たし……ちゃんと一人で来た」

「なんで来た」

「約束を果たしに。ってか、それお前が訊くのか」

理解ができないと言わんばかりに、彼は困った顔をした。
 青嶺衛は「椅子の一つもないんだな」と言って、管や装置を避けつつ、俺の浸かっている浴槽の縁に座った。

「ここでひとつ握手でもしておくところだろうがやめとく。俺も“コイツ”を抑えるのが難しくなってきたからな」

 冗談めかした口調で彼は軽口を叩いたが、その内容は重い。
 彼は長い袖で隠れた左腕を右腕に重ねて、膝の上に置いた。見た目では分からないだけで、その両腕は呪いに侵されている。
 それでも彼は、俺とした話の中で、こう話した。

「この身体は五体満足で、過不足なく、充実している。親も兄弟も、環境も、すべてに恵まれていた」

「自慢か」

「違う。……いや、自慢になるのかもな。それでも今までの自分は、幸せだと思ったことはない」

 彼は否定と肯定を繰り返した。

「確かに、人によっては贅沢だとも言うだろう。そうだとしても、今まで満たされることはなく、空虚なまま生きてきた。それが自分にとって紛れもない事実なんだ」

 その言葉は誰かを否定しているのではなく、自分も相手のことも肯定するものだった。それでも、俺にはコイツの言葉をすべて受け入れることは難しい。
 だが、満たされることのない感覚は理解できる。……きっとコイツは周りに人が居ながらも、結局は俺と同じで孤独 ひとりだった。

「何もなく空っぽなまま生きるくらいなら、この身を捨てれば カラですらなくなる。そう思って過ごしてきた。そのはずだった。……なのに今、ここにいる」

 自分でも不思議だというふうに、彼は上の空で言った。

「いつの間にか、空じゃなくなってたんだろうな。そのことに気がついたんだ。だから、俺はここに来た」

……俺を、憐れんでいるのか」

「そうじゃない。自分の中にすんでいるものに報いたいと、そう思っちまったんだよな」

 彼は微かに苦笑して立ち上がった。そして、俺の真正面に立つ。

「俺は、俺のために、お前の前に立っている。お前のためじゃなく、俺がそうしたいからで、自分勝手なエゴの結果だ。これからも、今までも」

 話しながら、自然な動作で緩やかに、彼はかけているサングラスを外した。
 何も通さず、間に挟まず、俺たちは改めて相対する。

「これから俺の身に起こることは、すべて俺の選択だ。俺が選んだ。決して、俺以外の“誰か”の意思じゃない」

 こちらを真っ直ぐに見つめてくる眼。そこに宿る光は、太陽というには穏やかで、月というには鋭すぎる。そこに宿る光はまるで、遥か遠くにある星だった。

「俺がお前にいに来たんだ」




次回
 『E.21 破乱 寛解