MN*B
2024-06-20 22:06:12
23703文字
Public 蠱毒な夢術廻戦:pixivバックアップ
 

E.6 袖-石-衆生に縁ありき

シリーズ中第20話になります。
注意書きは1ページ目、もしくはシリーズ概要の方にあります。

このシリーズの閲覧、ブックマーク、いいね…いつもありがとうございます。
お待たせしました。
提示していた期限からギリギリになりました…。
もしかしたら後日、改めて推敲とかするかもしれないです。
 

今回、場面転換や視点変更が多めでいきなりなので、読みにくいかもしれません。
あと痛い感じがちょっとあります。

次回、アニメ1クール目終了くらいの予定です。
2週間くらいを目安にあげると思います。

その次の回が、番外編というか箸休め的な話になるかと思います。

 
アニメや原作と比べ、ちょっとした位置関係なんかのズレが起こったりしてます。
あと同じ台詞しか書けない…!ってとこは、大事じゃない限りカットしてます。
そっちのほうが良いかな~ってときはそんな感じです。

 
今回の話で「虎杖と青嶺、そんな話してた?」と思われた方…その認識であってます…。
その辺の回収は、次の次の話でする予定です。

改造人間の台詞ですが…記号に文字を割り振っているので、一応法則があります。読み解けるかはちょっとわかんないですけど…。

もしかして:青嶺のヒロイン力高い…?ってなりました書き手です。
あとサングラスを個人識別のための便利道具みたいに扱ってますね…我ながら便利だと思ってます。

 

 
↓おまけという名の、書き手の趣味。

 

#オリ主 #夢術廻戦 #虎杖悠仁 #七海建人 #家入硝子 #吉野順平
2021年5月2日 23:56



 薄暗い下水道。
私はそこで、今回の首謀者であろう呪霊と相対していた。

相手は人間の形を変えて、攻撃として繰り出してくる。それは、私の術式と相性も悪い。
そう考えていたとき、

「たスけてェ……

足元に浮かんでいる顔から、そんな声が漏れているのを私は聞き取ってしまった。

 一度改造されれば、まず助からない。どうすることもできない人間。
迷わず殺すことそれが被害者のためでもある。


彼は、それを実行してみせたのだろう。
それが理解できてしまったから、私は彼に対する判断を保留先延ばしにした。



 その日の捜査は終了し、虎杖くんを高専へ送った帰り。
私は家入さんの下を訪ねていた。

「家入さん。彼は

「もう休ませた。眠ってるよ」

そう言う彼女が示すのはここ、医務室の隣にある救護室の扉。

「場所は本人の希望でね。彼自身のためであり、そして我々のためでもあるつもりなんだろう」

そうですか」

特殊な状態である彼は今回、許されていない行動をとった。ゆえに自ら監視されに来た、ということだろうか。
私が彼を警戒していたのも察していたようだった。だからかもしれない。

 彼女は、彼について聞きに来たんだろう?と、わかっていたという風に話す。

「今回の件について、彼から話は聞いておいた。君にも説明しておいたほうがいいだろうな」

とりあえず座れ。と促され、私は空いた椅子に腰かけた。





 話を聞き終わった私は、思わずかけていたサングラスに手をやった。
簡単に意見も言えず、ため息をつくことも憚られる。

請け負いきれないか?」

対して彼女は、世間話のような軽さで尋ねてくる。
それが示すのは、今回の任務についてではないことは明白だった。

「あの人から聞いていた話とあまりにも違います。彼は呪力を扱えている。それに、」

それに彼の話が本当なら
思わず私は頭を振って、額に手をやった。

「彼には呪具だってあるでしょう。殺すと決めたのなら、制御できたのでは」

今回の行動は、周りからの不審を煽るような真似だ。
彼は上に存在がバレていないだけで、立場としては危うい位置にいる。そして彼自身もそれを自覚しているはず。
それなのに、何故あの方法をとったのか。


後悔するなよ、七海」

彼女はそんな前置きを言ってから、話をし始める。

「今回、彼は高威力で相手を殺した。やりすぎなくらいにな」

遺体の損傷はまぁ酷かったよ。と、困ったように彼女は言う。
それは、そうだっただろう。場所すらも一部崩壊させたのだから

 彼の攻撃は、一時的とはいえ桁違いの呪力がこもっていたそしてそれは"ほぼ"ジャストで相手に届いている。
相手が吹っ飛んだのはそれの余波と、おそらく彼が脚力も呪力で強化していたから。
肉弾戦ではせいぜい準2級が限界攻撃手段と威力が乏しいと聞いていただけに、予想外の動きだった。

「もし人間が受けていたら、衝撃でまず意識が飛んでいただろうし、痛みを感じる暇もない勢いだっただろう」

彼が前に、特級にやられた手法と同じだな。経験則に基づいたやり方だ。
そんなことを、どこか感心したかのようにも聞こえる言い方で話す彼女。

その内容ではまるで
私が答えに思い当たったのを察したように、彼女は頷いてくる。

「安楽死だよ」

本人はそんなこと一言も言わなかったけどねと、物憂げに呟いた。
本当にそんな意図だったのか、それはわからないということだろう。

 しかし、その説明で私は納得がいってしまう。
なぜ指示に背いてまで、彼が呪法を使おうとしたのかその答えがそこにはあった。


 私は今回、彼らを預かるにあたって、彼についての資料を閲覧している。
それにはもちろん、彼の呪法についても記載されていた。

 彼の呪法は事例が二件しかない。
彼が最初に呪法を使った対象呪霊を祓った後に残った遺体。それには致命傷になったもの以外の、目立った外傷がなかった。
そしてもう一件純粋な呪霊に対しても、相手を傷つけるというより消滅のような現象だったと聞いている。

 そんな彼の呪法。あの人からも聞いていた、その見た目と特徴。
「呪法の形状こそ物騒だけど、その実態は空砲だよ」
つまり、何も傷つけない。傷つけずに相手に届く、響く音のような呪力術式。


 あのとき。彼がなぜ、呪法を使おうとしたのか刃を使わなかったのかその理由が理解できた。

その方法なら、一撃で終わらせられるから。

そのためだけに、彼は彼自身を危険に晒したのか。



「呪法を使えば2、3日ほど目覚めなくなるんでしたか、彼は」

確か資料ではそのはず
家入さんを見れば、彼女は頷きながら、使う対象にもよるようだけどと話し出す。

「今回は使っていないとはいえ呪力の消費によるものかもしれないから、彼はしばらく動けなくなるかもしれないな」

その言葉に、私はまた少し黙って考えこむ。

 彼は、気配自体は3級程度だった。
だが呪力で攻撃するとき、爆発的に呪力が引き出されていた。それは単純な3級では収まらない少なからず代償はあるだろう。
それを今から支払うのかそれともすでに支払っているのか。
そして、その代償を支払ってでも、彼はその選択をしたとそういうことなのか。


彼に、何が聞こえているんでしょう」

『声』が聞こえたから、相手が人だと気がついた。
しかもそれに混じる、呪詛師あるいは呪霊の指示する声まで聞き取ったという。
それは本当に声なのか。

「さぁね。相手を殺したり祓ったりすることに躊躇しなくなるくらいの、そんな世界が聞こえてるのかもな」

だから彼は、いや彼女は、その世界から逃げたのだろうか。
しかし、

「家入さん、それは違います」

いえ、聞こえているのはそうなんでしょう。
私がそう付け加えれば、では何が?と当然の疑問がくる。

「私の見立てだと、ですが……

 彼の攻撃は、呪力と打撃の誤差がほとんどなかった。それでも、その攻撃が黒い閃光を帯びなかったのはズレが生じたからだ。
虎杖くんの逕庭拳は、打撃が速く呪力が遅れる。それの逆で、打撃が一瞬遅れてしまったから、呪力との誤差が発生した。
彼は呪力を扱えている。だがそれは、呪力の制御が感情に左右されないというだけ。
呪力は乱れなくても、別のものが制御しきれていない。

「彼は躊躇しました」

でなければ、あの一撃は『黒閃』になっていた。




、魂の汗が滲み出ることがあるんだ。気にせず続けよう」

私が黙っているのを見て、呪霊はそんなことをベラベラと喋っていた。

「仕事に私情は持ち込みません」

そう言いながら、人が流している涙を拭う私は彼と変わらない。

相手は私の返事を聞いて、嗤い声を上げた。

「嘘が下手だね!魂が揺らいでるよ」

その言葉に思わず、眉をひそめる。
魂が揺らぐ……
確か相手の術式は、魂に触れて形を変えるそう言っていた。

「アナタ、何を視得ているんですか?」

「魂。俺にとって魂は目に視えるもので、特別なものじゃないんだ。君たちと違ってね」

もしかすれば。そんな可能性が過ぎる。
視えているモノが違う相手がいるのなら、それと同様に

視えるだけ、のようですね」

聞こえていればいや。やはり聞こえていようが、相手は呪霊……しかし彼も

「?まぁいいや。アンタ、何級?」

「1級

私は足場にしていた人から降り、身構えながら答えた。


似ていない。

軽薄さの、その奥にあるドス黒い強さ。それを持った、会話の成り立つ呪霊。
もしこの呪霊に、魂の声が聞こえていたとしても耳を傾けなければ、聞こえないのと同じことだ。