MN*B
2024-06-20 01:41:23
11276文字
Public 蠱毒な夢術廻戦:pixivバックアップ
 

人生一年生、入寮する。

シリーズ中第12話になります。
注意書きは1ページ目、もしくはシリーズ概要の方にあります。
このシリーズの閲覧、ブックマーク、いいね…ありがとうございます。
今回、重めの話になります。
シリーズからして今さらじゃありますが…。
軽い内容だけでいいやって方は、2ページ目までで十分って感じです。
次回、お出かけ回です。
イェーイ!!
 いきなり青嶺の心が追えなくなった書き手です。書き手を置いてかないでほしい切実に。
今回の話を書くのが大変だったせいで、すべてが遅れたと言っても過言ではないです…。
 五条先生の行動を決めたら、なぜか勝手に笑いだして話し始める青嶺くんちょっと待ってくれ…どういうことなのか書いてる側にもわかんなくて書くのが大変でした。だから時間がかかりまくったとも言えます。
解釈をああでもないこうでもないって、書いたり消したりしてました。
プロトタイプというか、最初に書いた流れだとバッドエンド直行ルート行きかけて焦りましたし。いますなおにおしゃべりするとつむの…。
【青嶺衛の精神構造補足的なもの】
 解離障害という性質上、別人という精神的な認識と、それが間違いだと理解している理性によって、余計苦しんでる感じです。
だからそれの中間である、自分であることは変わらない。自分が自分であることは変わらない。という思考に落ち着けることで、平静を保ってるってイメージです。
もちろん、母親からの認識と戸籍という記録があるので、結局元の名前や姿から逃れらないのは理解しているわけです。ゆえに、使えるものは使ってやると開き直ってる部分もあります。
 釘崎が言う「自分であること」が『プラス思考』だとすれば、青嶺の言う「自分であること」は『マイナス思考』です。
青嶺は、自分であることを強いている、強いられているとも言えます。そう思っていないと、自分を保てない部分があるからです。
 …上手く表現できてなさそうだし、矛盾ありそうで頭こんがらがりますね。

#オリ主 #夢術廻戦 #五条悟
2021年2月19日 19:48



 まだまだ殺風景な部屋で、彼は腕を組んだまま突っ立っていた。
それに対して僕は、部屋にもともとあった備え付けの椅子に座っている。
いつもと違って、僕が彼を見上げるのは不思議な感じだった。

彼は不機嫌とも、いつも通りともいえる態度で話を切り出す。

で、聞くことはあるのか?」

いざ聞けるとなると何をどう聞けばいいか迷ってしまう。
結局、いつもの調子で世間話的に尋ねることにした。

「いや~聞きたいこと多すぎて困っちゃうな~。そういえば、今日寝不足?ワクワクしすぎてよく眠れなかった?」

馬鹿じゃねぇのって言いたげな顔をされた。
そんな風に口を歪めたあと、目を閉じて疲れたように話し出した。

「よく眠れてねぇのはいつものことだ。睡眠ってのは、記憶の整理をする時間って言えるだろ。俺の場合、その記憶が俺のものじゃないっつー話」

まぁ全部が全部そうだとは言わねぇけど。
そう付け加えた彼は目を開けて、その目の下を指でなぞった。

「俺がいなかった間の記憶が、寝ているときにも共有されるそれが今日は酷かっただけだ」

「キツい?」

僕の曖昧な質問に、彼は顔をふいと逸らして答えた。

「いつものことだ。俺らにも派閥みたいなのがあったんだよ。好き嫌いともいうが、今日のは俺にとっての外れに当たった」

そっぽを向いたまま、また大きくため息をついた彼。
いつもはこちらを見て話すのに、彼はあえて顔を背けるときがある。感情が顔に出るのが自分でもわかってるからか。

そんな風に顔をよそに向けたまま、強がりのようなことを言う彼。

「心配されるほどのことじゃない。扉一枚くらいじゃ小声でも聞こえてんだよ。指摘する余裕もなかったが」

「いや余裕なかったんじゃん」

僕の突っ込んだ物言いに、彼は思わずといった様子でこちらを振り返った。

「仕方ねぇだろ、記憶を整理してる途中でぶっちぎって起きたんだから半分寝ぼけてたようなもんだ」

その言葉に僕は、目隠しの下で眉をひそめた。
彼は目覚める前に呪いの気配がするが、同時に呪力が流れ術式が発動しているはず。
それと彼の今の話は、もしかして影響しているのか

「ぶっちぎってって無理矢理起きたってこと?よくできるね」

「気合い。自分が寝ていることを自覚できてるなら、起きるのはそう難しくない」

まず夢を見ているときにそれを自覚するのって難しくない?彼にとっては夢じゃない可能性があるか。
夢ではなく心の中術式が発動しているとき、内側で何が起こっていてもおかしくない。


 僕は彼のことを見上げて、ポツリと言葉を口にした。

なんで、話してくれる気になったの」

医務室で過ごしていた間、硝子とはそういった話は全然していないようだった。
自分のことを話すのが苦手な彼はなぜ今になって話してくれているのだろうか。

彼もこちらを見つめて、その口を開いた。

「馬鹿らしくなった。特にアンタ見てるとな」

ツンとした態度のまま答える彼。

「別に話すことでもないかと思ってたんだが、そこまで露骨に態度に出されると黙ってるほうがおかしいだろ」

「そんなにわかりやすかった?」

「わざとじゃねぇのか

彼は呆れたような、困ったようなそんな声を出した。

特殊すぎてどう接すればいいかわかんないんだもん、誰だって焦るよ
僕はそう思って、少しだけ不貞腐れた。


 そんな僕らの会話の合間で、またあの着信音が鳴った。
彼はどうするのか決めていたかのように、ためらわずにケータイを手に取って電話口に出た。

「もしもし……すんません、人違いです。さよなら」

時間にして約10秒くらいだろうか。あっさりと電話を終えてしまった。

「良かったの?」

思わず僕はそう尋ねていた。
人との縁を切るような、どこか投げやりにも見える行動だったから。

「いいんだよ、これで」

彼はそう言ってケータイをベッドの上に放り投げると、備え付けの勉強机の上に座った。
 いかにも行儀の悪い恰好のまま、話をしだす彼。

母さんはさ、俺に名前なんて渡すべきじゃなかった」

服のポケットに手を突っ込んで、人の顔を見ずに話すその姿。
独り言のように話すことで、抱えている不安を和らげようとしているかのようだった。

「俺は、名前も姿も性別も何もかもを変えちまった。それに、あいつらとは別人だって意識を持ってる。もはや別の人間だ」

自分は元の誰かとは違う、別の存在なのだと罪悪感を抱きながら、それでも頑なに否定する。
そんな彼の言葉に、僕は前から感じていたことを口にした。

「君は、自分が存在しちゃいけないものだと思ってる?」

彼は短く、笑い声とも疑問の声ともいえる一音を発してから、返事をした。

「そこまでは思ってねぇよ。存在しちまってるのはしょうがねぇだろ。それは誰が否定しようが変わらない」

そう言い切る彼の在り方は、まるで呪いのようだった。
呪いは一般人には見えないが、確かにそこに存在している。見えない人が信じなくても。

「ただまぁ別の存在を食い潰すようにして居座ってるような気がして、申し訳なくなる」

それが思い違いだということも、彼には自覚があるのだろう。
彼が一人の人間であること、それはずっと変わっていないのだから。
そのことは、彼の母親の態度が物語っている。

君のお母さんは、そんなこと思ってないよ」

「わかってる。どこまでもいい人なんだそれが人を苦しめることがあるってのも、わかるか?」

僕への質問のようで、それは彼のなかで確定している事実だった。

どんなに姿かたちが変わろうとも、どこまでも同一人物として受け入れられてしまう。
それは救いであり、彼にとっての楔でもある。それがある限り、彼が別の何者かになることはできない
彼は、母親の愛で呪われているのかもしれなかった。


 彼の横顔を見つめながら、僕は前にも別の誰かへ伝えた言葉を贈った。

「これは僕の一意見として聞いてほしいんだけど愛ほど歪んだ呪いってのはない。そう思ってるよ」

それを聞いた彼は、小さく息を吐いて、僕の方をみた。

「確かにな。それのせいで、それを産み出す人間のことが憎めねぇんだよ」

いっそ恨むことができたら楽だと言わんばかりに、彼は顔を歪めて下手くそに笑った。