【カミ東】縺ゅ↑縺溘r謾ォ縺�↓螟懊′譚・繧�

扉一枚隔たれた彼方側にいるのはだぁれ?カミ東🔪🍮編。








コップに満たされた不純物のない透明度の高い水。そこへ黒い雫を一滴垂らしたら最後、限りなく純粋に近いだけで不純物のなかった頃には戻れない。


──マンション賑やかにナル、嬉シい
──賑ヤかニなった、そのお陰デ大家サんの傍いつも誰かイる

──僕が傍に行けるコト少なくなっタ


垂れ落ちた黒い雫が水面に尾っぽを残してぼんやり漂う。それを見たくなくてコップの中身をかき混ぜた。あっという間に黒い雫が水に溶け込み姿かたちを消した。
コップの中身を横からのぞき込む。透明なガラスと水の向こう側がはっきり見えた。


──大家サん、僕に気付いテ声掛けてくレた
──心がポカポカする

──デモ、他ノ人に呼バれて行っちゃっタ


コップに満たされた限りなく純粋に近い水。その水面に波紋がいくつも出来て、黒い雫たちがコップの底へ落ちていく。等間隔で垂らされる黒い雫が水面を上昇させていった。


──遠のく大家サんの背中
──火照ってイた顔と耳の熱が引いていク

──手が甚兵ギュっと掴んだまま離セナい


黒い雫の痕跡を消すためかき混ぜる。濃くぼんやり残っていた黒い雫が全体に広がった。濁り果てあれだけ透き通っていた水の面影はもうない。
コップの中身を横からのぞき込む。透明なガラスに覆われた薄墨色の水越しに向こう側が微かに見えた。



──大家サんが頭撫でてクレた
──子供扱いさレて照れくサかった
──だけど、嬉しかっタ

──モットシテ欲しい



絶えず落ち続ける黒い雫。



──空いテた大家サんの手掴ンだ
──怪訝な顔が僕を見テパッと明ルくなった
──大きさの違う温もり、柔らカク掴み返してクれる

──離しタくナい



黒い雫が薄墨色の水を押し出してコップの縁から溢れ返る。



──後ろから大家サんに抱き着いタ
──驚いたミタいだけど、僕だって分かったラ笑ってくレた

──巻き付けタ手、強メる前に解かレた

──手ヲ解き僕カら離レて行っちゃう大家サん、僕ジャナイ相手に笑顔で笑ウ大家さン



──伸ばシ掴もウとした手、背中を掠めるのも出来ナカった指先越しに大家サんを見タ





透明なガラスの表面を濡らす黒い雫だったもの。
溢れ返った中身がコップを中心に黒い水たまりを広げていく。
澱み濁った宵闇が向こう側に何があったのか思い出せないくらいに塗り潰す。
真っ暗になったコップ。透き通っていた頃を懐かしむ気が起きず、重油に酷似する中身にもう興味はない。




「僕”だけの”大家サん」

酷く穢れた僕の神域で眠る大家さん。
僕の布団に一緒に入って眠る大家さん。
仄かな熱をたしかめたくて、すり寄り二人の間にあった隙間を無くす。女性らしい胸元に顔を埋め彼女の普段より近い匂いを鼻腔に焼き付ける。頭がクラクラする柔らかで温もりのある匂い。
腕と足を大家さんに絡ませ僕の身体を押し付け抱き締めた。薄い服越しに伝わる大家さんの程よく引き締まった丸みを帯びた身体つきはとても抱き心地がいい。

……むぅー

僕が動いた振動で大家さんの眉間に浅い谷ができ、瞼を震わせる事無く再び眠りの底に沈んでいった。
無許可で胸に飛び込んだ僕を自ら深く招き入れるだけに終わらず、穏やかな手付きでポンポン背中を擦って頭を撫で手櫛で僕の髪を梳く大家さんの手。
そろり鎌首を擡げる”自分以外の誰かと勘違いして寝惚けしている”思考を斬り落として踏みつける。

「赤い糸、僕と大家サんの小指にしっかり結ンだ」

以前彼女の小指に繋がっていた沢山の糸を断ち切って僕の小指に新しく結び直した赤い糸が暗闇に怪しく光る。
細かった赤い糸を太くして結び直した。今後二度と解けないよう切れないよう想いを込め固く結び直した。

「繋がり僕だけでイイ。他はイラナイ」

食べてしまいそうになっている大家さんの顔に掛かった髪をそっと耳に掛け、指の背でずっと触りたくなる触り心地のよい頬を撫でれば彼女の表情が緩んだ。
八重歯を覗かせもにょもにょする口許。とても幸せな夢でも見ているのか、嬉しそうに笑みを浮かべる姿に僕も目を細め笑みを深める。

「大家さン、これカらずっト僕と一緒で嬉しイ?」

僕も同じ。自己完結する僕の問い掛けに答えたのか定かではないけど、小さく「うん」と唸る大家さんに僕の部屋は噎せ返るくらい甘く澱み穢れが濃くなっていった。