無窓居室
2024-05-16 00:24:12
4083文字
Public Pixv投稿企画
 

出会いと別れ(Pixiv執筆応援プロジェクト三月)

Pixiv執筆応援プロジェクト応募作。#出会い #別れ #新生活 で参加しました。
時間がなくて殴り書きになってしまったのですが、お題を見てアカネの青鬼ちゃんの新生活風景をどうしても文章にしたくなったので書きました。妄想だらけなので真面目に読まないで下さい。
アカネ→ブラックにアカネと父の関係を絡めて書くのが好きです。


 
 いくら人間界でのYouTuber活動が目標だとはいっても、生活の拠点は魔界に置くのが賢明だ。地獄と人間界の差異の大きさは魔界の比ではなく、アカネや青鬼ちゃんが適応できるか不透明なのはもちろん、下手に目立てば二つの世界を巻き込むような騒ぎになってしまう。短絡的なアカネにもそのくらいの分別はあった。

 そのための第一歩として、アカネは魔界の住宅街にある賃貸仲介業者のオフィスの一角で、借りて来た猫のように体を縮めていた。革張りのソファにぎこちなく座り、出されたジュースを遠慮がちに啜る。時おり伺うように上げる視線の先では、青鬼ちゃんが業者の従業員と熱い交渉を繰り広げていた。
 物件の見取り図や家賃の資料を見ながら青鬼ちゃんが入れる要望や疑問に、従業員はにこやかに、しかし素早く新しい資料を提示する。
 昔からこういった堅実な知識や手続きの面でアカネは青鬼ちゃんに頼りきりだ。人間界と違い魔界の賃貸物件は未成年だろうが後見人がいなかろうが払うものさえ払えば契約可能だが、それでも青鬼ちゃんが居てくれなければアカネは大変な苦労をしただろう。
 威勢良く実家を出てきたくせに情けない、とアカネは悟られないように溜息をつく。父親の下で働いていたときよりも、自分がずっと子どもになったような気がした。

 しかし賃貸契約と違って引越しの段になると、今度はアカネの独壇場だった。調達した机や椅子、資料を収める本棚や食器類など重い荷物をいとも簡単に担いでは軽々と新居へ運び込んでいく。配送を勧めた家具店の店員などは腰を抜かしてその様子を眺めていた。
 二人が借りた物件は広さのわりにキッチンが大きく、そのせいで居住空間が圧迫されているためなかなか借り手がつかなかった1Kで、青鬼ちゃんが小さいおかげで二人入居を認めてもらえたことを含めて有利な条件で契約ができたと言える。
 とはいえ駆け出しのYouTuberとその助手の新生活。費用は切り詰める必要があり、家具も一度に全ては揃えられない。まず買い揃えたのは動画制作に必要な機材やそれを扱うためのデスク周りで、食事用のテーブルや寛ぐためのソファ等は後回しだ。ただ、掛け布団とクッションは良いものを買った。掛け布団はアカネが気に入った柄のものをじっと見ていることに気づいた青鬼ちゃんが、クッションは体の丈夫なアカネと違い青鬼ちゃんには柔らかい寝床が必要だからとアカネが、すぐに購入しようと譲らなかった。

 スミレ色のクッションの上で寝息を立てる青鬼ちゃんの隣に、アカネは引越しで出た段ボールを潰して重ね横たわる。そして一枚しかない掛け布団を分け合って眠った。二人の暮らしの始まりはそんな風だった。