goya
2024-06-01 14:50:49
4872文字
Public ZKC
 

memento

[ヒノミヤ中心/CPなし/シリアス]
財団職員から見たヒノミヤとリミッターの話でアンリミ回顧録です



     fragment / ouverture


 父の形見であった懐中時計を無くしたのは、伊號達と出会った海だ。試作戦闘機との空中戦で激しい錐揉みに耐えられず、古くなっていた鎖が切れてしまった。
〈何にでもなれるし、どこにでも行ける〉と信じて疑わなかった、御伽噺の住人だった頃。
 今思えば、すでに帰り道は消えていた。

     ✧

 カタストロフィ号の図書室で拾ったリミッターを、千切れた鎖はそのままに、持ち主へ返してやった。
 前途あるキミには、改めて自分で選択する機会をあげようじゃないか。
 ボクはもう戻れないしね。

     ✧

 赤く光る水面 みなもが遠い。
 やがて夢から醒めるように引き上げられると、懐中時計は記憶という名の深海へ沈んでいった。

     ✧

 義姉からベッドの上に投げて寄越されたリミッター。憎悪で焼き切れそうな意識の片隅に落ちてきたそれは、いつの間にか千切れた鎖が修繕されていた。

 ──繋がっている。

 ただ、そう思ったことだけを覚えている。

     ✧

 ──僕は無くしたことが始まりだった。
 無くしたものは何ひとつ戻ってこなかったけれど、今のボクに悔いはない。

 だが、ヒノミヤ──キミは繋がることを始まりとしたのだろう。
 超能力者 エスパー普通人 ノーマルの間の半端者。即ち、両者に繋がる自己の在り方を認めてスタートラインから旅立ったキミは、果たしてどんな道を走り出すのか。
 
「お手並み拝見といこうじゃないか」
 
 
 
 やがて、その男は帰還する。
 空から現れた豪華客船と共に、たくさんの同胞を引き連れて────
 

            /memento・了