kurotera
2024-05-27 10:24:32
4293文字
Public
 

【ラビリュカSS再録集サンプル】Même si ce n'est pas le destin.

東京流通センター(TRC)
TRCオンリーライブ2024 June.09
スペースNo.D23
サークル名:カノコソウ

【Même si ce n'est pas le destin. destiné aux adulte】
ラビ×リュカ
小説
文庫サイズ 214頁
800円(通販の場合+送料)/全年齢版とセット購入の場合は1500円
無印軸、エトステ軸、アニメ軸、イノブレ世界が一緒くたになっています

TwitterやWEBであげていたラビ×リュカのSSを再録した本です。
2024.6.9のラブアップ★チュウ21で頒布予定。
よろしくおねがいします:)


 

まなざし


「リズムパート特集ね」
 なんだか新鮮だ。とラビがプロデューサーに渡された資料を眺めながら、ぽつりと呟いた。その隣ではリュカも同じ物に目を通しているが、何も言わずにいる。バンド雑誌の特集、宛がわれるのはほんの一ページだがアイドルやモデルの仕事だけではなく自分たちの本業部分の仕事を持ってきたプロデューサーの仕事ぶりに流石だと内心舌を巻いた。
 メジャーシーンからインディーズまで、数組のバンド、そのベーシストとドラマーに視点をあてた企画に、アイドル養成所に通う自分たちが入り込むのはおそらく、異質だろう。――その異質さこそが、雑誌が求めているものかもしれないが。
 責任重大だ、とラビが笑みを作りながら資料から視線をあげ、向かいのソファに座るリュカを見た。
 表情は動かずやや眉間に皺を作りながら、真剣な眼差しを手元のそれに向けている。
…………
 おそらく、メンバー以外の人間が見れば彼は怒っているのかと勘違いしかねないような顔だ。けしてそういう訳ではなく、元々表情が動くような人間ではなく、それに加えて集中しだすと自然と眉間に皺が寄って、少し怒ったような顔になるのだ。本人はいたって無意識で、指摘されればぽかんとした顔をさせて、いや? と首を横に振るのだ。
 無言でリュカを眺める。
 カーマインの瞳が文字列を追えば時折、睫の影がおりる。唇は相変わらずへの字に結ばれているのが見えたし、資料のページを捲る指先の爪は切り揃えられて、彼の気質を示していた。
「おい」
 そうやってラビがぼんやりとしていると、視線に耐えかねたらしいリュカがついに声を上げた。
「ん?」
 深いコバルトブルーの目をぱちりと瞬かせて、視線を合わせれば困惑したような表情をさせたリュカがこちらをじっと見つめていた。
「なんだ」
「なにが?」
 どこか気まずそうに問いかけられた言葉の意味を汲み取れずにラビが首を傾げれば、赤い目が不機嫌そうに細まった。
「さっきからこちらを見ているから、落ち着かない」
「ああ、ごめんね」
 謝罪の言葉を口にしつつ、ラビが肩を揺らす。その態度にリュカは表情を崩さないまま、じっと目の前の男を見つめた。
「言いたいことがあるなら、言え」
「眺めていただけだよ。真剣な顔をしてるなって」
「本当にそれだけか?」
 む、とリュカが疑いの眼差しを向ければ、今度はラビの青い目が細められた。彼とは正反対に、どこか余裕を孕んだ笑みを浮かべたまま、頷く。
「本当にそれだけ」
……
 ならいい、とリュカが小さく息を吐き、ローテーブルに置いていたティーカップを持ち上げる。少し冷めたそれを一口飲んだ後、気を取り直して再び資料へと向き直る。その動作を静かに見届ければ、ややあってラビが口を開いた。
「ねえ、リュカ。オレの目に意味をつけていいなら、言うけど」
 ラビが発した低く穏やかな声に、再び文字を追っていたリュカの身体がぴくりと跳ねた。しかし視線を上げずにいる恋人に眼差しを向けて数秒。
「その顔好きだよ」
 返答の代わりに、大きなため息が部屋に響く。
 それでもラビはどこか意地の悪い笑みを浮かべたままで、リュカを真っ直ぐに見つめていた。目の前の男は呆れた声で何かを呟いたが、彼の故郷の言葉をラビは理解出来なかった。おそらく、褒め言葉ではないだろう。
「見惚れていた、ってやつ。リュカ」
「いい、もう、言わなくていい」
「ふふ」
 黙ってろ、と一言短く吐き捨てられ、分かったよと一度目を瞑る。くすくすと笑うのを抑えられないまま、ラビも資料に視線を落としたのだった。