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ツキシキ
2024-05-07 15:48:08
4583文字
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★Persona The Raptureまとめ
2作品。二次創作。大河原×鷹取のみ。暗い。
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もう鷹取は変わってしまった話
何十何百と周回したコースはもはや俺の庭と言っても過言ではなかった。コーナーを超えて加速するタイミングも、落ちるアイテムを最短でキャッチするポイントも、髭面配管工が教えちゃくれないショートカットも、俺と走り続けたこの姫攫いの亀は悠々と走り抜けていく。手癖でコントローラーをがちゃがちゃ動かしつつ、ひょいと横を見て敵情視察。校内一の美人さんはコース内の草花を目で殺せそうな勢いで画面を睨みつけていた。
「鷹取、んな仏頂面でやってて楽しいかい?」
「
……
あいにくだけれど挑発には乗らないわ」
視線は画面に縫いついたまま、鷹取は肩を強張らせてコントローラーを握っている。画面先ではキノコがほっほーいと気楽な声をあげているが、操作主は戦にでも挑んでいるかのような雰囲気だった。
画面上にはついに道先案内人が現れ、ラリったキノコの行く末は闇だと看板で訴えかける。しかしそれでも直進を続ける鷹取は戦車か何かを背負ったつもりなんだろうか。
「道間違えてっけど? そこ左」
「情けをかけないで!」
おお怖え。
そのまま曲がれば蛇行するコースを短縮できたわけなんだが、鷹取サマのお気には召さなかったらしい。といっても曲がる車体に合わせて身体を揺らし、どうにかこうにか向きを逆転させるところまでは上等だった。ま、そのままアクセル吹かして全速力でコーナー外へ落ちていったんだが。
「おっとゴール」
「
……
」
落下するキノコが復帰すると同時、高らかなファンファーレが鳴り響いた。俺の亀が独走トップを決めたらしい。奴の活躍は見届けられなかったが一人でもやれると俺は信じていた。
再び鷹取のほうに向き直る。鷹取は悔し泣くキノコと、でかでか表示された最下位の文字を仇のように睨みつけながら、自分の力不足を噛み締めているらしかった。
「だぁらハンデでもつけてやるかって言ったのによ」
「だめよ。だって彼はあなたより強いんでしょう」
彼。
というのはもちろん奴、日野啓一のことである。
そりゃそうだ。“鷹取”が興味を示すのはあいつのことだけで、くだらないと見下しかねない俗なゲームをこうしてやっているのだって、
疑弟
おとうと
とそこそこ良好な時間を作るための話題作りにすぎないのである。いやはや弟想いのおねーちゃまとは泣けますな。ケッ。
「たまーに、たまーに負けるくらいだっての。普段は俺が勝ってらぁ」
「
……
ふぅん」
鷹取の考え違いを訂正しても反応はシビア。ランダムの中で常に最強のアイテムをもぎ取る底抜けグッドラック野郎に技術だけで勝つのがいかに難しいことか、鷹取には伝わらないらしかった。
画面上では盛り上がりの指笛と共にアンコールの意志確認が表示されている。鷹取はコントローラーを握り直していたが、その前に俺が主電源を容赦なく切った。仇敵が暗転しちまったもんだから、鷹取はこちらを睨みつけてくる。思わず肩をすくめた。
「やめやめ。どっちにしろ鷹取には向いてねーよ」
「どうして? まだ数試合やっただけよ。適性を決めつけるのは早すぎると思うのだけど」
鷹取は、クールな鉄面皮の中でも比較的熱の籠った顔で俺を見返してくる。
「おまえってわりと馬鹿だよなあ」
「
……
だから、どうして」
まだ続けたいと駄々をこねる子どもを叱るように、俺は鷹取の握りしめたコントローラーを無理やり取り上げた。
「楽しくもないこと無理にしたって、相手もつまんねーよ。鷹取自身が前から言ってんじゃねーか」
言いながら、しみじみと思う。
……
あの鷹取が。“ココロ”ではなく“鷹取”が。
ただ一緒にダベって飯食うだけでも時間の浪費だと嫌がった鷹取が、こうやって何かしらのとっかかりを掴もうとしてるのは、まあ一種の変化なんだろう。んでも俺にはそれが進化だか退化だか血の迷いだかわかんねーもんで、結局、鷹取のためがどうとか考えるのはやめることにした。やめて、俺がどう思うか考えた結果、答えは明白だった。
つまんねーことはやめたほうがいい。
啓一クンには一人寂しくNPCに勝利を自慢してもらうことにしようじゃねぇの。
「
……
そう」
俺の態度が変わらないことを早々に悟ったのか、鷹取はそれ以上ゲームを続けようとはしなかった。なんせ“鷹取”は、ゲームの電源の入れ方だって知らないのである。
賢司達とバカ騒ぎして過ごした日が、なんだかひどく懐かしく思えた。
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