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夜明 奈央
2024-05-06 10:39:14
4093文字
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中太SS
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虎の嗅覚/聴覚
直接繋がってないけどなんとなく同じ世界線
1ページ目 嗅覚:うっかり知らない方がいいことに気づいてしまう敦くん
2ページ目 聴覚:後輩に聞かせる趣味はない太宰さん
2022年10月2日初出
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虎の聴覚
玄関扉の開閉音と同時に人の気配を感じてふわりと意識が浮上した。そのままその気配の持ち主を探るとすぐに見知った者であることがわかったので、警戒心を解いて上半身を起こした。
ひたひたと近づいてくる足音を聞きながら枕元にある時計を見ると夜明け前であった。寝直す程ではないかなと判断したのとほぼ同時に襖を開ける音がする。
「よお、起こしたか」
「まあね」
短い挨拶と共にずかずかと部屋に足を踏み入れるのは中也だ。帽子と外套を脱いで脇に避けるのは忘れない。
「何しに来たの?」
「んー、夜這い?」
悪びれた風もなく答え、まだ布団の中にいる太宰に覆いかぶさる。
そのまま太宰の返事も聞かずに太宰の首元に顔を寄せ、片手は腰を引き寄せるので、太宰は慌てて中也を押し返した。
「ちょっと、ここではシないよ」
中也が鬱陶しそうに眉を顰め、舌打ちを落とす。だが、大人しく顔を離したのでひとまず良しとする。待てのできる犬は嫌いじゃない。
「当たり前でしょ、ここ社員寮だよ。するならホテルか中也の家だ」
「えー、やだよめんどくせぇ。せっかくここまで来たのに」
「私は頼んでないよ。君が勝手に来たんでしょ」
中也が剣呑な顔で睨みつけながらも諦めて覆いかぶさっていた身体ごと身を引いた。
全く、世話が焼けるものだ。
「で?」
「じゃあホテル」
だろうなと思いながら布団から這い出る。中也の家よりは駅前のホテルに向かった方が近い。問題は空室があるかどうかだ。週末ぐらいしか満室になっているところを見たことがないのでおそらく大丈夫だろう。
「君、車?」
「徒歩」
車だったら薄着でも良かったのにな、と思いながら、寝巻きを脱いで外出できる格好を整える。中也がそれをねっとりとした視線で見つめてくるので些か居心地が悪い。
包帯だらけの身体を眺めて何が楽しいのだか。
手早く服を身につけていると、手持ち無沙汰の中也がどうでも良さそうに口を開いた。
「なんでそんなここですんの嫌がるわけ?」
「君、うちに虎化の異能者いるの知ってるでしょ」
「知ってっけど」
ここまで言ってわからないのか。芥川経由で敦の異能についてはかなり詳細にマフィアに伝わっているはずなのだが、幹部の癖に把握していないのか。それとも単に察しが悪くて結びついていないだけなのか。
「虎化すると嗅覚や聴覚も鋭敏になるんだよ」
「ふーん」
ご丁寧に解説まで加えてやったのにピンときていないような生返事に嫌気がさす。
流石にこれ以上教えてやる気にはならず、その会話を終了させる。
「ほら、準備できたから行くなら行こうよ」
まだ外套も帽子も身に付けずに座ったままの中也を急かして隣を通り過ぎる。
すぐに後ろを追いついてきた中也は太宰が靴を履く頃には来た時の格好に戻っていた。
狭い三和土は1人が降りるといっぱいになってしまうので、中也に場所を譲ろうと玄関扉に手を掛けると、中也が肩をぐいと引き寄せた。
段差があるにも関わらずまだ届かない太宰との身長差を僅かな背伸びで縮め、太宰の耳に唇を寄せる。そのままそっと囁きを落とした。
「俺は聞かせてやってもいいけど」
「悪趣味」
太宰は顔を顰めたが、中也はそれすら楽しくて仕方がないとばかりに笑みを溢した。
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