愛おし、ケの日

MHRウ教×ハ♀。相思相愛かつ夫婦関係。
微妙に本編ネタバレあり。

2023年の『いい夫婦』の日ネタ。
何気ない、何もない、ごくごく普通の幸せな日。

夜の柔らかく温かな布団の中は、安心する。
狩猟中は里の英雄『猛き炎』も、帰宅後は一人の男の妻。

今日も狩猟と家仕事を終え、小さな鏡台の前に並んだ小瓶の中身を顔に塗ってから、浴衣一枚で布団に潜る。

灯りも消えて、月明かりに満たされた畳の間。
先に隣の布団に入っていた夫であるウツシが、待ちわびたように微笑んだ。

「遅かったじゃないかぁ。……ごめんね、何か手伝えることあったんじゃない?」
「家事じゃないですよ、お肌のお手入れです」

幸せそうに微笑んで答えた娘が、隣の布団の中にいるウツシの方に体の向きを変え、片手で自分の頬をもちっと軽く揉み上げて見せた。

「最近カゲロウさんの雑貨屋さんで買った化粧品、私の肌に合って良い感じで。うるうるのもちもちになれるんです」
「そうだったんだ? へえ、少し触ってもいい?」
「ええっ? 全くもう。いいですよ、どうぞ」
「フフ、やったぁ。ありがとう」

嬉しそうにウツシが微笑み、娘の頬に片手を伸ばす。
鍛えられた硬い親指で、優しく柔らかな頬を撫でながら、彼は何か思いついたように不意に呟いた。

……ねえ、愛弟子。明日は夫婦水入らずで、一緒に家でゆっくりしない?」
「良いですね! 私は大丈夫ですし、嬉しいですけど……教官の方のお仕事は?」
「大丈夫、急ぎの任務もないし。ふふふ、じゃあ、決まり」

娘の頬を撫でていたウツシの手が、彼女の頭に滑っていく。
ゆったりと頭を撫で、さらりと髪を愛で、月明かりの部屋でも目立つ金色 こんじきの目を、穏やかに細める。

「おやすみ、ゆっくり休んでね。明日は久しぶりに一緒にのんびりしよう」
「楽しみです。ふふ、おやすみなさい」

温かなウツシの手に撫でられながら、心地良さそうに娘が目を閉じる。

互いの命の温もり、命の脈動は、子守歌よりも安堵できて、夢の世界へ躊躇 ためらいなく沈んでいくことができた。
二人はほぼ同時に睡魔に意識を ゆだね、眠りについた。

@acadine