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ぶたたけ(名もなきルビコニアン)
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無題
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多重ダムに到着後、我々は破壊された変電施設の上にヘリを止めてすぐさま野営の準備に入った。
若者達が変電施設内に物資を運び込んだり、野外に炊飯設備を設置して行く中、
私は野外で暖を取る為の火を起こしていた。
油を染み込ませたウエスの上で火打石で火花を散らす。
じっ、じっ、と数回。
擦り合わせて散らした火花がウエスの上に落ちる。
火がじわじわとウエスを焦がしていく。
焦がすウエスの火が薪に広がってゆくのを私はじっと見る。
「火、ちゃんと起こせてるかぁ?坊主。」
いつの間にか爺が横にいて、一緒に火を見つめていた。
「もう少しだ。今薪を焚べる所なんだ。」
私は薪を2、3本放り込み、火吹き棒を使って息を吹き入れる。
ふうと息を吹き込むと炎が火の粉を散らして舞い上がった。
「昔より早くなったなぁ、火起こし。」
「優秀な師匠がしこたま訓練してくれたからな。」
「そりゃあ良い師匠だ。」
当の師匠がカラカラと笑う。
私は気にせず火に息を吹き込んでいく。
「無視すんなよ。」
「私は仕事をしてるんだ。あんたも暇なら薪を焚べてくれ。」
「俺は暇じゃねえ。お前が仕事サボってないか監視する仕事があるんだ。あと、お前に吉報を寄越してやる仕事もある。ついさっきだけど、別の町の奴らもここに着いたようだぞ。お前が神隠しに遭ったって言ってた町の奴らだ。」
「本当か?」
私は目を見開く。
「本当だとも!俺がお前を付いたことがあっか?」
「ある。さっき『俺は暇じゃない』って言っただろ。」
そんなの嘘にも入らんとまた爺が笑う。
もう生きていないと思っていたが、皆私達より先に逃げていただけだったのか。
大事に至ってなくて良かった。
「もう生きていないと思ってたんだ。企業の連中に殺されてたと思ってた。」
「俺もだよ。お前の早とちりで良かったじゃねえか。」
「全くだ。」
新たに薪をいくつか焚べて、火が燃え移るのを待つ。
しばらくすると新しい薪にも火が移った。
もう放っておいても当分は火は消えないだろう。
「火起こし終わったか?」
「今終わった。」
「じゃあ、連中を出迎えに行こうじゃねえか。」
「ああ、もちろんだとも。」
衣服に着いた煤を払って歩きだそうとしていたその時、遠くから何者かが一人近づいてきた。
疲れているのか一歩足を踏み出す度に身体が左右にふらついている。
私は立ち上がって彼の身体を支えに行く。
距離が近づいてくると、顔の輪郭が明瞭になっていく。
石レンガのように四角くゴツゴツとした顔、鼻横には大きなコブのような黒子が付いている。
私はこの男を良く知って居る。
仕事仲間の『オーク』。
先日、私が探していた彼岸花の画像データを送ってくれた花屋だ。
「オーク、オークか!」
ふらつく彼の肩に腕を回す。
彼は疲れ果てたのか身体を弛緩させて私に寄りかかってきた。
これでは身動きが出来ない。
「爺、オークだ!疲れ切ってて、私では彼を支え切れん!手伝ってくれ!」
私は大声で爺を呼ぶ。
「わかってるって!年寄りを急かすんじゃねえ!」
年寄りとは思えない俊敏さで爺は私に駆け寄る。
爺は反対側の肩を持つ。
「力、抜くんじゃねえぞぉ」
支えるのがやっとだった肩の重みがすっと軽くなる。
年寄りと自分では言うものの、毎日酒樽を持ち上げては運んでいる身だ。
爺は私なんかより数倍は力がある。
力を抜くなと言った割には重さの殆どを自分で背負ってしまい、私はただオークの腕を肩に置いて移動するだけになってしまった。
オークを運び、焚き木の前に座らせる。
「オーク、大丈夫か?」
倒れないように背中を支えながら様子を見る。
目は虚で声掛けにも反応しない。
じっと空を見つめるだけだ。
「道中で企業の襲撃に遭ったのかも知れねえな。ショックで感情がどっかに飛んでるのかも知れねぇ。」
虚な目で虚空を見つめるオークを見て爺が言う。
「坊主、白湯を作ってやってくれ。とりあえずは身体を温めるのが先だ。」
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