無題


私の上で爺が死んでいる。
背中が生暖かい液体でぐっしょりと濡れている。
見なくてもわかる。これは爺の血だ。

叫びたい。
吐き出したい。
胃を焼く程の恐怖が咽頭まで登ってくる。
私はそれを無理矢理押し込んで、息を潜める。
まだ、敵がそこに居る。

靴底が地面に擦れる音が聞こえる。
じり、じりと鳴る音が次第に近づいてくる。
恐怖が涙となって流れ出る。
目が強張って瞬きも出来ない。

足音が止まった。
ふと、背中が軽くなる。
私は見上げる。
額に硬いものが当たる。
私の目が視野に映る光景を認識する直前
タン、と音が鳴った。