【カミ東】春陽に”も”攫わせない

東雲さんのお相手が男性の場合季節絡みのお話と「元気が出る写真を送ってほしい」ネタの二本立て。🔪🍮編。 ※この二人付き合ってないでーす。


【カミ東】欲しいのはコレ




東雲に誘われマンション暮らしを始めた日からカミキリは沢山のことを学び知った。
まず、身の回りのことは自分でしないといけないこと。何もかも自分基準なので気軽でいい。
この姿ではアルコールの類を購入できないこと。自動販売機でも購入できるが駄目な気がして買っていない。
昔の大切な約束事を思い出せたのはいいが、以前感じたことのない何かが胸の奥で芽吹き始めたこと。それは東雲と二人きりの時に顕著に現れ手に負えず困惑しっぱなしだった。
他にも多々あるが其処は割愛。

そして、絶賛一通りやる事を済ませ自由時間が出来たものの、特にやる気が起きずちゃぶ台の上に置いた腕に顔を乗せているカミキリは意味もなく無機質な壁を眺めていた。
得も言われぬ無気力感。昼寝をしようにも眠気はお暇しているのか一向に来ない上に、テレビを流し見したところで結局電源を落としてしまっては意味がない。
気分転換に体を動かそうにも、動かす気分が見つからないので結局動かずだらけていた。
この状態に陥ってしまった原因はとんと思い当たらない。カミキリがぼんやりした頭で原因解明に緩く勤しむもやはり出て来なかった。
「なんデだろ……
甚兵の上着ポケットに入れていたスマホを取り出し眺める。パッと光る待ち受け画面の光が宵闇色の瞳に反射して青色を一段階明るくさせた。
表示される現在時刻並びに年月日、そして、クリスマスの時期に無理を言って撮影させてもらったサンタガールの衣装に身を包んでいる東雲の写真を無言で眺め──、随分慣れた指捌きでトトトっとカミキリは一番初めにアドレス帳に登録した大家にメッセージを送った。



ところ変わって404号室。
「なっはっは! 面白すぎんだろっ!」
テレビ画面に映るお笑い番組を膝を叩き笑う東雲は頗る上機嫌だった。
それもそのはず、膝を叩いている方とは逆の手にはキンキンに冷えた缶ビールを握りしめ、時折り喉を潤しているからだ。
「あんまり飲み過ぎないで下さいよ」
「わーってるって。だっはっはっは!」
ツヅミに軽く釘を刺されようとも、アルコールが入っているゆえ右から左に通り抜けていった。
東雲がビール缶に唇を寄せようとした時、ローテーブルに置いていたスマホが着信を知らせるべく存在感をアピールする。訝しげな視線を送りつつビールを啜り、膝を叩いていた手でスマホを掴み画面を覗き込んだ。
「んあ? カミキリさん?」
メッセージを送ってくる相手もさることながら、送られてきたメッセージに内容に東雲がビール缶の縁から唇を離す。テレビから聞こえるドっとした笑い声はもう東雲の耳には入っては来ない。
「”元気が出る写真送っテ”か」
何故このような内容のメッセージを送って来たのか。そんな疑問が浮かぶも手に持っていたビール缶をローテーブルに置いた東雲は小さく呟いた。
「んー、元気がでるねぇ……
少し考えた後、片手で持ったスマホを親指でスイスイ画面スワイプさせ目当てのものを見つけるなり送信ボタンを押した。

「──来た」
既読が付き暫く経ってから来た東雲の返信にカミキリは体を起こした。
左手でスマホを持ち右手人差し指で操作する。

──ほい
──これみて元気出せ

短いメッセージの後に表示された画像を見てカミキリは大いに眉根を顰めた。
あまり見かけない、でも少しだけ見たことのある馬券に唇を内側へ丸め込み引き結ぶ。

──前買った時に当たった万馬券

追加で来た東雲のメッセージ。
たまたま当たった記念に撮ったのであろうと推測するのは至極簡単だった。
ただし、これを見て元気になるのは東雲だけでありカミキリは全く元気になれず仕舞いだった。
何とも言えない気持ちを包み隠さずカミキリが素直に送れば即座に東雲から返信が来た。

──カミキリさんの元気が出るって具体的に何?

此処まで来たら行くところまで行っちゃえ。そうもう一人の自分が囁く声に導かれたカミキリは要望を綴り、一瞬躊躇ったものの送信ボタンをグッと人差し指で押した。



……は? あ? う~ん……
カミキリから送られてきたメッセージ内容を読んだ途端、東雲の眉間に皺が刻まれたが肩で大きく溜息を吐き渋々スマホのカメラ機能を起動させ小気味いいシャッター音を鳴らした。



程なくして東雲から一枚の写真のみカミキリのスマホに送られてきた。
やや俯瞰で撮影された東雲の自撮り写真。缶ビールを片手に持ち写真に収められている東雲の頬はアルコールのお陰かほんのり赤く、俯瞰のお陰もあってあまり見れられない角度の姿にカミキリはやんわり微笑みお礼のメッセージを送った。
有難く保存後改めて東雲の自撮り写真を満足げに見ていれば、たわんだ襟元から覗く浅い谷間に気付いてしまい……目出度くその日の夜もカミキリは一睡も出来ず悶々とした気分で夜を過ごす羽目になるのだった。