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ガイベル
2024-04-01 00:00:29
2163文字
Public
お話
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報いられる時がくる
おやすみなさい、さようなら。
1
2
目を開けると薄暗い道路の真ん中に立っていた。
見知ったような車道の中央に見える。ただ、車の気配は一つとして無い。今は深夜だったりするのだろうか。いや、それにしたって。
ともかく、いくら車通りがないとはいえ、いつまでもここで立ち尽くしているわけにもいかない。ゆっくりとひとけのない歩道の方へ足を運ぶ。
そのまま特に目的なく、なんとなく歩みを進めていくと、今まで薄暗かったのが嘘みたいに光の溢れる場所に辿り着く。
自分はここに来たことがある。
強烈な既視感を抱いたが、それがいつの事だったのかも思い出せない。
「サニーくん!?どうしてここにいるの?!」
不意に声をかけられた方に顔を向けると、信じられないものを見ているという表情を浮かべたバジルが立っていた。
──どうして、ここにいるか?問われた言葉を心の中で反芻する。
……
そんなことはよくわからない。
なにせ気がついたらここにいたのだ。もしかするとこれもまた夢か、と思うほどに現実感もない。
だから彼の問いかけにもふさわしい言葉が見つけられず、ただ首を傾げることしかできなかった。
しかし、それを言うなら彼もまた、どうしてここにいるのだろう。
「
……
そう
……
、そう。そっか。
……
」
バジルは1人でブツブツと言いながら、何かを納得したような雰囲気になったあと──嬉しそうな、悲しそうな、喜んでいるような、怒っているような、諦めたような、諦めきれないような──全てがないまぜになっている
……
なんとも言えない表情でこちらを見た。
「あのね。もしかしたらサニーくんは今の状況がわかっていないかもしれないけど
……
ぼくはこれからいかなきゃならないところがあるんだ」
あっちの方、と彼が指差す先には、より強い光が差しているような気がする。白い窓枠のようなドアのような門のような、やはりどこかで見たことがあるような形をしたもの。僕も来たことがある気がする場所。
それを見て、何かを言いたかった。彼に言葉を返すべきだと。しかしどうしても声が出てこなくて、黙って彼の言葉の続きを聞くことにした。
いつもの
………
、いつかの日々のように。
「そこには
……
1人でいかなきゃいけないんだって思ってた。君にも会うことなく、ぼく1人きりで
……
ひとりぼっちで。きっとね、そこは
……
おばあちゃんとか、
……
自分の会いたい人にも、会えないところだと思う」
彼がつとめて笑顔で穏やかに話す内容は、ひどく抽象的に感じる。いかなきゃいけない場所、会いたい人に会えない所。
特に返事をしない僕を気にしていない様子でバジルは続ける。
「それで、いま何故か君にまた会えて、ぼくもちょっとだけ考えてみたんだ。きっと本当は、これから君のことを引っ張ってでも殴ってでも、喧嘩になってでも、
戻さなきゃ
いけないんだと思う。
……
今までそういうのがずっと、ぼくの本当にしたかった事だから。もしかしたらそのために、ちょっとだけ長くここにいられたのかなとかも、考えた」
ふわふわとした言い回しは相変わらずで、彼の意図と確信を掴めない。
「でもね、じっさいのところ
……
ひとりでここまで来て、君を見送ってからまたひとりになるって思ったら
……
すごく
……
さみしくて
……
怖くなっちゃった」
僕の目をまっすぐに見ながら彼は続ける。
「だから、君がもしそこに一緒に来てくれるなら
……
。それは、ぼくは
……
すごく嬉しいなって、思うんだけど」
どうかな、とバジルは困ったように下がった眉で微笑みながらこちらに手を差し出した。
……
この手を取るべきなんだろうか。
いまだに、自分がなぜここにいるのかもわからないのに?
しかしそういえば昔、彼と一緒にいるという約束をしていた気がする。それを何故守れていなかったのか、守らなかったのかも、頭の中が霧がかっているようでよく思い出せない。
ああ、でも。だからこそ、彼と手を繋ぐというのは本当に久しぶりのような気がする。僕も1人は好きじゃない。
それに、本来ひとりで遠くのどこかへ行かなければならなかったのは、自分の方ではなかっただろうか。大切なみんなをあの街に残して。
そんな気さえしているのだ。
だからこの手を取ることに、今更何の
躊躇
ためら
いがあるだろう。
差し出された手をとって握り返す。
暖かくて柔らかい手に少しだけ安心して、小さく息を吐いた。
それを見て、バジルはまたかなしそうに笑った。
それにもし全てを思い出したとて、きっともう全てが遅いのだ。
……
もう家までの帰り道も、覚えていない。
『地獄の業火の中 密かに、密やかに天国を夢に見る』
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