【スズ東】スタジオ撮影は突然に

謎時空にてスズ東でバニーコス撮影するスズくんと東雲さん、衣装交換撮影するスズくんと東雲さんなお話二本立て。
これの続きのお話→ https://privatter.me/page/660a209beb36e

チェンジ




上層部のお偉いさんからの指示にて、東雲は自分自身着ない系統の服に身を包んで撮影に挑んでいた。
潤い光るタイツ、モコモコのスリッパ。スカート系を履かない東雲にとってニットミニワンピースそのものに落ち着けないのもそうだが、今回はスカートを履いている以上に気になる点があるため違う恥ずかしさにもじもじと太腿を擦り合わせていた。
「(これ、下……)」
上は慣れているからまだしも、と口元を波打たせ引き結ぶ。
それでも東雲は借り衣装のため無碍に扱えず、スカート裾を引っ張りたい気持ちを抑えに抑え込み撮影に挑んだ。
「はい、東雲薫さん撮影終了でーす。お疲れ様でーす」
……やっと終わった」
どっと溢れ出る疲労感。右に左に大きく揺れ動く体に合わせ歩いていたのが拙かった。碌に足元を見ず歩いていたお陰で、何本ものコードが絡まっているところに東雲自ら突っ込み──、豪快に前方へすっ転んだ。

「馬鹿がよぉ(馬鹿がよぉ)」

そんな東雲の後方から聞こえる呆れかえった声。
やおら振り返れば東雲が貸した服を着ているスズが冷ややかな目でその醜態を見ていた。



オフショルダーの上着、黒のタンクトップとホットパンツまでは分かるが、足元にあるサンダルの不釣り合いっぷりにスズは思いっきりこの服の持ち主のセンスを疑った。
トップスとインナー、ボトムスのセンスはまあまあいい。許せる範囲。ただ足元サンダルという点がナンセンス。お洒落を妥協するな。此処まで来たら足元を揃えてもいいだろうが。
苦々しく舌打ちするスズだったが、初コンタクト時のプリンパーカーよりマシかと自分自身を落ち着かせた。オーバーサイズの上着の袖を軽く引っ張り見下ろす。勝手に決めつけているのは確かではあるが、スズの中で”らしくない”服装に目を細める。
「(……誰かからの貰いもんか?)」
表情と思考を別々にすることは慣れている。何の滞りもなく撮影を終え、借りた服を着替えるべく更衣室に向かう。
「(そういやボクの服は神斬り様だっけか。で、神斬り様の服はツヅミ姉ぇと)」
撮影場所が違う所為で残念ながら二人が普段着ない恰好を見れないが、あとで撮影された写真を見せてもらえばいいか。そう虚空を見遣ったスズの眉間に浅い渓谷が刻まれる。
「(つか、姉さんも神斬り様もアイツに対して好感度馬鹿高いのマジで謎……)」
あんな奴言霊の力以外軒並み何の役に立たない上に周囲を引っ掻き回すだけ引っ掻き回す。その身勝手な行動ばかりする姿を思い出したスズは深く長い溜息を吐いた。
言霊の力以外認めるところなぞ何もない。言霊の力をボクが上手く利用してやることでやっと役に立つ。
「ったく意味わかんないぜ」
ぶつかることなくスズが乱雑に置かれた大道具を避け歩いていれば豪快な音を立て目の前ですっ転ぶ東雲を目撃してしまった。
「馬鹿がよぉ(馬鹿がよぉ)」
間抜けにも程があると云わんばかりに冷え切った視線でスズが東雲の失態を見つめる。
いっそ無様な姿だって馬鹿にしてやろうか。そう思った時──、スズは素早い動きでオフショルダーを脱ぎ去り東雲の剥き出しになってしまっている下半身を隠す勢いで投げつけた。
「っんとに馬鹿がよお!!」
「うわ!? びっくりした急に大声出すなよ」
大股で歩きつつ上着を脱ぎ半ば叩きつけてきたスズに東雲は肩をビクつかせ、何故か息を上げている相手を困惑した面持ちで見上げた。
黒色のタンクトップとホットパンツ姿になったスズは、投げつけたオフショルダーの上着を掴みズラそうとする東雲から上着を奪い取った挙句、半ばキレ気味に彼女の腰元に巻き付ける。
「お前、ほんとにいい加減にしろよ!?」
「え、なんで私キレられてんの」
「いいかっ、更衣室に入るまで”それ”絶対に解くなよ!?」
分かったか。強く指差してくるスズの勢いに負け東雲は素直に頷くしかなく、そんなご立腹な彼をぽつんと見送るしか出来なかった。腕を組み首を左右に数回傾け唸る。
「──思春期か?」
東雲が呟いたことは確かに当たっていた。
何故ならば彼女がすっ転んだ瞬間スズの視界に飛び込んでくる、あまりにも思春期の男子にとっては刺激が強すぎるものを目の当たりにした為、彼の心臓は早鐘を打ち続け頭の中からその記憶を消去するのに躍起になっていたからだ。
「クソクソクソッッッ!!」
サンダルを踏み鳴らし駆け足一歩手前の速度で歩いていたスズが立ち止まり八つ当たりの如く壁を叩いた。
「前回といい、今回といい──。最悪すぎんだろ……
壁に寄り掛かりズルズル落ちしゃがみ込む。無機質な廊下の床は掃除が行き届いているのか、俯いたスズの色々な感情が混ぜこぜになった顔を映し出している。
変に昂った感情が気持ち悪い。意識しないようにすればするほど居座る存在が忌々しい。そんなスズの脳裏を過る東雲の面影に彼の心臓がひと際五月蠅く高鳴った。
「あんな奴に、……がるわけ、ないだろ……

その日を境に日下部スズが東雲薫に対して変に意識し始めたのは言うまでもなく、あれだけ彼女に好感度を抱く者たちを不思議に思っていた感覚はものの見事に自分に降り掛かり始めたのだった。