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豆炭々炬燵
4616文字
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訳アリ心霊マンション
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【スズ東】スタジオ撮影は突然に
謎時空にてスズ東でバニーコス撮影するスズくんと東雲さん、衣装交換撮影するスズくんと東雲さんなお話二本立て。
これの続きのお話→
https://privatter.me/page/660a209beb36e
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跳ねろや跳ねろ
スポットライトを浴び艶めく漆黒の天鵞絨。細い手首を際立させる混じり気のない白色のカフス。
ボクの芸術的な体に合わせ仕立てられた衣装から伸びる四肢もまた一級品。汚らわしさの欠片もない玉の肌。ただでさえ魅力的だってのに、うさ耳カチューシャなんか付けちまったら可愛さが止めどもなく溢れちまう。
「似合い過ぎて困っちまうぜ」
罪作り過ぎるボク自身の可愛さにため息が出ちまう。右足に掛けていた重心を左足に傾けるのに合わせ、抜群のプロポーションを誇るくびれに手を添える自然な動き。意味ありげな秋波を送れば途端、シャッター音がスタジオ内に響き渡った。
忙しなく炊かれるフラッシュ。カメラマンの賛美と要望を聞き、欲しがっているポーズをくれてやる。
時に扇情的に、時に清楚に、時に悪戯っぽく。ボクの可愛さを十二分に感謝してカメラとその目に焼き付けるといい。
「はい、オッケーでーす」
気分よくポージングを決めていたらいつの間にかボクの撮影が終わったらしい。
照り付けるスポットライトの熱で色素の薄い肌に薄っすら汗が滲む。殊の外、動いた所為で喉も乾いた。小気味よくピンヒールをコツコツ鳴らし派手な撮影場所から、機材やスタッフがごった返す裏側に身を引っ込めた。
用意された椅子に座り人心地。何か拭く物と飲み物が欲しい。高い天井を見上げ胸中呟く前に、ボクの気持ちを汲み取ってかタオルと水のペットボトルが差し出された。
差し出してきた相手を確認せず「ありがとうございます」と礼を言い受け取る。白いタオルで滲んだ汗を吸わせ、水分を求めていた喉と体を潤した。
キュッとペットボトルの蓋を閉め、まだボクの傍からいなくならない気配に視線を投げかける。
「お疲れさん」
「げっ」
ボクとは若干違うバニーガール衣装に身を包んだ東雲薫が白い歯を覗かせ笑っていた。
隠さず顔を顰めたら、きょとんとして自信たっぷりにカッとピンヒールを鳴らしポーズを決める東雲薫。
「どうよ? これぞ大人のセクシーさってやつよ」
「(どこが
……
)」
自分のペースを乱す他者の勢いは嫌いだ。特にこっちの都合なんかお構いなし、理不尽なまでに乱す東雲薫はボクが苦手なタイプの筆頭だ。
視線を逸らし無視を決め込んだところで、執拗に視界に入り込んでは喧しく構う姿に苛立ちが募る。
「(これ無視するより適当なことを言った方がいいな)」
深い深い溜息を吐き、目線だけ向ければ何が嬉しいんだか東雲薫が仁王立ちした。
おい、せめてバニーガールらしい色っぽさはないのか。逞しさを前面に出してどうする。
突っ込みたい気持ちを抑えつけ、ボクは頭の天辺から爪先まで値踏みする。
「──スタイルはいいんじゃねえの」
「おっ」
「ボクには遥か及ばないけど」
「んだとっ!」
わなわな拳を震わせ袖を捲る動きをするバニーガールが何処にいる。此処にいたわ。
このバニーガール衣装は全て各モデルの体系に合わせ作られている。東雲薫のも例外ではなく、ぴったり体形に合わせた衣装はどんだけ暴れようがズレ落ちることはない。
贅沢な肉のない引き締まった体。程よく肉付きの良い太腿、馬鹿力ゆえ華奢と評したくない大人の女性らしい腕。スレンダーな体系を余すことなく引き立てる東雲薫の衣装はボクより布面積が──、大分狭くね。ハイグレの角度えげつすぎやしないか。もはやまろび出る寸前だろ。
「ん?」
もしやと思い、椅子から立ち上がり後方へ回る。なになに、と東雲薫が首だけでボクを追う。
ほら見たことか。ほぼケツ丸出しじゃねえか。おざなりに付けられた白い兎の尻尾が割れ目から窮屈そうにしてんぞ。その内取れるだろコレ。衣装考えた奴どんな思考してやがんだ。
──にしても。
「
……
叩きたくなる見た目してんな」
「? なんか言った?」
「(やっべ)」
無意識に出た言葉。今更ながら口元を抑える。
だけど、実際丸みを帯び垂れていない尻のかたちは卑しさを全く感じさせない。それに色気があるかないかといえば、獣染みた性欲の権化相手なら形振り構わず飛び付くんじゃねえの。
首を捻りボクを見ていた東雲薫と向かい合う。その飛びぬけに無邪気な瞳が、どうだったと物語っている。
コイツを褒めるのは絶対嫌だ。断固拒否の姿勢を崩さず、ボクは慎ましい胸元を見て鼻で笑った。
「ボクの方が大きいんじゃない?」
挑発するように腕で胸を寄せる仕草をすれば、分かり易いくらい相手の顔が見る見る赤くなっていった。
「てんめぇ!!」
同じ手は食わない。予想通り勢いに任せ伸びる東雲薫の腕の範囲から遠ざかるため後退る。
が、ボクの視界と体が勝手にぐらついた。何故そんなことが起こったのかすぐ理解した。まず、設置面積の狭いピンヒールの先でコードを踏んでしまったこと。次に履きなれた靴でないため咄嗟に体勢を立て直せなかったこと。それらが重なり転倒を引き起こす事態に発展した。
自分自身に悪態を吐き、せめて受け身だけでも取ろうとした体は如何いうわけか後方に倒れる勢いが前方に引っ張られる勢いに変わった。
緩慢な動きで回る視界の先。ボクを殴ろうとしていた東雲薫の拳が開き、そのままボクの二の腕を掴み東雲薫自身の方へ引っ張っていた。
「大丈夫か」
気遣う声が真上から落ちてくる。錆びついた時計の針よろしくぎこちない動きで見上げた。
東雲薫の顔が近い。顔だけじゃなく何もかも近くて、二の腕を掴む手と、埋めた場所から感じる柔らかさから逃げるように相手から飛び退いた。
引っ張られた瞬間、何かにぶつかった衝撃は然程痛くなくそれどころか包み込まれるような感触がじわりじわり時間差で明瞭になっていく。ぶつかった先が何なのか、考えること自体脳内が拒否をする。
「東雲薫さーん、準備お願いしまーす」
「はーい」
タイミングよくスタッフさんが撮影準備が整ったのか東雲薫を呼ぶ。
コツコツ、ピンヒールを鳴らし遠ざかっていく姿を横目で追うボクは再び熱を帯びた肌を冷やすべく残りのペットボトルの水を飲み干したのだった。
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