ツキシキ
2024-03-20 19:07:17
7724文字
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★ヴァイロンの塔まとめ

2作品。二次創作。ヴァイロン、クロウ、主人公がメイン。


四角関係Let'sバトル!


主人公にぼんやり記憶がある、喋る
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 決闘は一対一でなされるのが鉄則である。背信行為への警戒、魔力暴走、力場の揺らぎと崩壊。理由は様々にあるものの、本質からの“最強”を求める者たちにとっての最たる理由は、矜持だ。
 単純な話。
 複数人で単一の敵を屠る真似は、“最強”の魔法使いとして実に美しくない。



◇◇◇



 塔の地下、この場の創造主の気性を表すかのように苛烈な溶岩に包まれた最下層。
 クロウは今日も悪役然とした黒と赤の衣装に身を包み、“彼”を迎え入れる。もはや慣れ切った遊びの幕を待ち構える、歓喜の眼差し。しかし、クロウはその“彼”の両脇に控える二つの存在を目に止めた途端、あからさまに眉をしかめた。

「それはルール違反でしょー」

 それ。良き隣人、仕える者、クロウにとっては纏わりつく邪魔な何か。
 先にリアクションを起こしたのはハッシュのほうだった。なにせ主たるものからの全面否定、はや瞳にわなわなと涙が溜まる。
 もう一人、緑髪の少年もまた唇を噛み締めて俯く。クロウと少年による“彼”をめぐる因果の糸はあまりに太く、纏めて全員の首を絞めかねない。
 鉛を抱き込んだかのような空気。
 だからこそ“彼”は精霊達の頭をぽんぽんと撫でる。

「ルール通り、一対一さ。ただ、場を共有するだけで」

 精霊達に微笑む“彼”の表情は、渦中の割に和やかだった。ねー、と同意を示せば、緑髪の少年はことのほか深刻な表情で頷く。どうにもこの少年に思い詰めるきらいがあるのは、生まれた機縁によるものだろうか。
 “彼”の様子でクロウのほうも察しがついたらしい。三対一ではなく、一対一。それすなわちクロウ側に付きまとうものが一匹増えるということ。
 クロウが「うぇ」と言いかけるその前に、ハッシュが涙をぬぐって“彼”の元から羽ばたいた。後押しとばかりに“彼”が口を開く。
 
「僕とクロウ。この子とハッシュ。それぞれでデュエルだ。わかりやすいだろう?」
「俺様一人が良いんだけどー」

 二人が言う間もハッシュは蝙蝠羽を動かして主人の元へ懸命に近づき────直後、ぺいっと平手で横なぎにされた。弾んで再び起き上がる。泣き虫弱気も根性はある。

「う、うぅぅ……俺、邪魔にならないようにするから!」
「あーうるさいうるさい」

 クロウはシッシと虫をはらうように手を動かし、しょぼくれるハッシュには目もくれず“彼”と向き直る。

「いくら俺様が全盛期じゃないって言ってもさあ、こんだけ大人数で魔法ぶつけ合うのはどうなの。昔、俺様と楽しく荒野作りまくったの忘れちゃった?」

 何分その記憶は、“彼”の知識にあっても実感とはならない。“彼”はしょせん写し身にすぎないからだ。“彼”は苦笑し、受け流す。

「でも、クロウの塔なんだからそう簡単には壊れないだろう?」
……そういう言い方は俺様キライだなー」

 クロウはそう答えつつも、両手を岩窟めいた天井へと向けた。虚空を支えるような所作と同時、炎熱による息苦しさとは別の閉塞感が生まれる。魔力による防護壁だった。
 物言いに反してクロウは案外人の言うことを無下にはしない。逆手に取ることはあるが。

「他の階はちょっと強度落ちたけど、まあ俺様は平気だし? これだけガードつけてれば遠慮なく魔法もぶっ放せるでしょ。これで満足?」
「ああ。ありがとう」

 一瞬、二人は目を交わす。確かめずともよくわかる。それは同類、友の共鳴。遊びのためなら何だってする、戦闘狂 あそびたがりの熱がこもる。
 しかし、ふいに視線は断ち切られる。クロウの瞳が“彼”の傍らへ向いたためだ。眇めた眼が、少年を目に止めるも忌々しいと告げている。

「言っとくけど、」

 怜悧なトーンはヴァイロンだけを突き刺す。

「お前と戦ってる時にそいつのこと考えてやるつもりはないから。流れ弾で消滅しても文句言わないでよね」

 “彼”への言葉という皮を借りて、確かに緑髪の少年へと向けられる敵意。乾いた口調、無関心から嫌悪に振り切れるちょうど手前。
 少年に言葉はない。ただキッと相手を見据えるのみだ。“彼”はまさに我が子を見るようなまなざしで、これまた苦笑した。戦闘意欲という意味では上々だが、向ける相手が少々異なっている。
 “彼”はヴァイロンの肩に手をやると、身体ごとひょいと向きをずらしてやった。

「乱入なんてさせないさ。ほら、ヴァイロンの相手はあっち」

 あっち、の先には蝙蝠羽。集まる視線にハッシュが気づく。へたへたと萎れていた身体は懲りずにクロウの真横について、握り拳で宣言した。

「俺だって、役に立てるもんっ!」
……せめて勝利だけでも捧げてみせる」
「それじゃあ今日も、楽しく遊ぼう」
「俺様が勝ったら邪魔者 こいつら消してよねー」

 売り言葉に買い言葉、開戦の合図代わりの決意表明。誰だって力試しには血が躍る。盛りの記憶は遠く、互いに刻を過ぎた者同士であれど、“最強”を称したのならば、なおさらだ。
 魔力が重なりうねりを上げる。楔のように撃たれる雷と、場に圧と滅を与える支配者の姿。かつての“彼”を憧憬した終焉の刻が、急速に流れゆく時空に吸い込まれていく。
 過去と未来が行き来し、破壊と再生が流転する。

 数多が起こり得る、不能の不存在を錯覚できるほどの膨大な魔力。
 しかし、そんな中彼らはただひたすらに────
 ────戦い あそびの歓喜に満ちていた。





~END~