銀白色の悠久想花

MHRウ教×マイハン♀(リラ)。両片想い。
本編ネタバレあり。

狩猟中に花を見つけたリラと、集会所で狩猟に出た彼女を読書しながら待つウ教のお話。
ウ教の本から現れた古びた栞。彼はその栞には並々ならぬ想いと思い出があった。



「とても懐かしい品を愛用されていますね」

風もなく、穏やかな晴天に静かに響く、ミノトの声。

その声はカムラの里の集会所、茶屋の露台席で、さらさらと渓流の音を聞きながら座っているウツシに向けられたもの。
いや、正しくは、彼が買いたての洋装本を読もうと席につき、卓上に本を開いた際に姿を見せた、年季の入ったしおりに向けてと言うべきか。

古びながらも数輪、満開の桜の花。

碧色へきしょく組紐くみひもはくたびれて、四隅よすみはぼろぼろの和紙の栞。

通りがかったミノトの声にもしっかり顔を上げたウツシは、彼女に向けて「やあ!」と笑顔を向ける。

「ミノトさん、もしかして覚えてるのかい? この栞のこと!」
「ええ、もちろんです。その時のことは、とても印象深く……忘れられません」

ミノトが双眸に、星空のような小さな光を輝かせる。
忘れ得ぬ温かな記憶をでるような、とても優しい笑顔。

だが、すぐに夢から覚めたように、はっと小さく目を見開いた彼女は、「コホン!」と咳払いの後、よく見ればほんのり染まった表情を、普段の冷静さの中に隠してしまう。

「そ……そろそろ、その栞を作った方がお帰りになる頃でしょうか?」
「そうだね! それまで読書して待ってるつもりなんだ、もっともっと立派な教官になるためにね!」
「そ、それは素晴らしいですね。そのお邪魔は致しません。わ、私は、これにて」
「別に邪魔じゃないのに! ああ、でも、お仕事があるもんね! またねーミノトさん!」

屈託のない笑顔で手を振るウツシに一礼してから、ミノトは涼やかな表情で、静かに集会所の受付へ戻って行く。
その時の彼女の口元には先ほどのような、昔を懐かしむ、とても穏やかな月の微笑が浮かんでいた。

律儀に彼女を見送ってから、ウツシは栞を自分側に置いて頬杖をつき、暫しの間、本に没入する。

その間も、優しく吹き抜けていく桜の香風こうふう
いつしかその風向きは、少しずつ変わり始める。

@acadine