mishiadd
2024-03-16 23:22:11
16405文字
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Taken

慶安神前試合術陣営~最後まで、の感想代わりの幻覚。伊吹ちゃんに「迎えにいく」といわれたので迎えを待っている宮本伊織と引き止めたいセイバーの話。


九、

なにやら新しいサーヴァントが召喚されたらしい、という噂話をヤマトタケルが聞いたのは、昼食時の食堂でのことだった。
特に誰が召喚されようとそれほど興味を抱く性質でもないのだが、例えば盈月の儀で縁故のあった人物であるならば嬉しい。――まあ、記憶がない可能性も高いが。
タルタルソースのかかったエビフライを頬張りながら、もごもごとタケルは横に座っている人物に話しかけた。

「たとえばランサーならば面白いなあ。
盈月の儀の記憶だけではなく、うまくいけば特異点の記憶もあるかもしれないし。それならばきみも話ができるだろう、イオリ」
「セイバー、そうすが衣装に垂れかけている」
「おっと」

器用にエビフライの向きを変えてタルタルソースをすくい上げながら、「でもなあ」と話を続ける。

「ここにはランサーのクラス違いがたくさんいるからなあ。ややこしくなるかも」
「『ひとりの人物が複数のサーヴァントとなってひとところに共存できる』。
――そう言の葉で説明されて、実例もいくつも見て、なんとなくわかったような、わからないような心持ちでいるが」
「まあ、真っ当な聖杯戦争ではまず起こらないことだろうからなあ。我らには実感としては理解できまいよ」

「サーヴァントとはそういうものか」といやに感嘆しながら伊織がひとりで頷いている。
茶碗に残った米を口に掻き込んで、タケルが伊織を促しながら席を立つ。

「まあその新入りにはそのあたりをうろついていればばったり遭うだろう。――なにやらイブキに縁があるらしいというようなことも聞いたのだ。
であれば、私の界剣とは多少関わりがある人物かもしれない」
「であるならばもう少し真面目に探した方が――あ、セイバー。すまんが先に行っててくれないか。用事を思い出した」
「わかった。すぐに追いかけてくるのだぞ」

伊織を置いてタケルがひとりで食堂を出る。ホールウェイを歩いていると、すぐに「セイバー?」と背後から声がした。
「なんだ、随分早い用事だったのだな」――そう嘯きながら振り向くと、声の主である伊織が立っている。――イオリが、立っている。

「え」

タケルの息が詰まる。後頭部を鈍器で殴られたような衝撃だった。

宮本伊織だった。どこからどう見ても、宮本伊織だ。だがわかる。――これは、クラス『セイバー』ではない。
ひどく見慣れた、懐かしい、落ち着いた笑みを浮かべた宮本伊織が、「セイバー!」と懐かしさと親しみを込めた声をあげる。

「驚いた。まさかおまえにまた逢えるとは。息災だったか」
「え? ――え? イオリ? え?」

タケルが目を白黒させていると、「ああ、そうか」と目の前の宮本伊織がはにかんだ。その顔すら懐かしい。懐かしくてくらくらする。

「今日、『かるであ』に召喚された。――俺は『バーサーカー』だそうだ。師匠と同じとは、少し面映ゆいな」
――えっ」

『ひとりの人物が複数のサーヴァントとなってひとところに共存できる』。確かにそう言った。――そう言ったが。

状況が飲み込めないまま、タケルが二の句を継げずに口をぱくぱくさせていると、「セイバー?」ともうひとつ背後で声がした。この場に、同じ声が、ふたつ。



――大変なことになった。