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ちょち
2024-03-10 18:43:05
1889文字
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狂聡
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狂聡連載10
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「岡ピー! こっちこっち」
午後は友人たちと大学近くのカフェレストランで待ち合わせになった。そろそろ履修登録の締め切りが近付いて来るので、学部の友人に時間割の打ち合わせをしようと誘われたのだ。
「おはよう」
あくびしながら言う聡実に丸山が呆れた声で言った。
「もう夕方だぞ」
荷物を下ろして丸山の隣に腰を下ろす。友人2人は遅めのランチを食べているところだった。
「岡ピこういうの一人で決める方かと思ってたから、来てくれてうれしー」
「まあ、少しでも仲良い友達おる方が休んだ時とかも助かるやん。 言い方あれやけど」
「わかるわかる。ねえ岡ピもなんか頼みなよ」
「僕は飲みもんだけでええわ」
そう言いつつ、隣の丸山が頼んでいるプレートのポテトを勝手につまみながら聡実がメニューを開く。
「あれ、なんか食べてきた?」
「いやー
……
軽い二日酔いというか。そこまでしんどいわけちゃうけどちょっと胃がもたれてて。すみませーん、アイスミルクティーひとつ」
「え、飲んだのかよ珍しい。てか、岡が飲むの初めて聞いたな」
丸山が驚いた顔をする。
「昨日誕生日やったし」
「あーそうだよな。えっ、酒解禁会って事!?えー誰と?森田さん?一人?なんだよお俺たちを誘えよー」
「ばっか、彼氏さんに決まってんでしょ」
「あ、ああ
……
!」
聡実が別にそんな
…
と口籠る。
「ハジメテを捧げたんだもんねー」
可愛らしく小首を傾げて言う彼女に、聡実が真っ赤になって言い返した。
「ばっ
……
、まだそんなんちゃうし!」
「まだ」
「まだ」
瞬時に明らかな誤解が発生したことを察して、3人ともなんだか赤くなって目を逸らす。
「てか、まだなんだね岡ピ。彼氏さんすごい年上って言ってなかった?」
「いやもうその話はええやろ!授業の話!」
ちょっと今は忘れておきたくて友達の呼び出しを二つ返事でOKしたのに、藪蛇で話題がぶり返してしまって必要以上に頬が熱い。
聡実はバッグから取り出したプリントの束でバサバサと顔を仰いで、2人のそれと付き合わせ始めた。
あけすけな女友達に悪気なく言われる「まだなんだね」も、少し前の聡実なら少なからず傷ついていたかもしれない。でも今はもう、大切にされていたことも知っているし、次の約束もそこにあるから。そうや、「まだ」やねん、と今なら余裕を持って受け止められる。
「あ、今のね、別に変な意味じゃなくて大事にされてるんだねーってことだから」
「わかってるよ」
ふふ、と聡実が笑った。彼女のこういうところが好きだなと思う。
「少し食えそうならポテトもっと食えよ」
「うん、丸山もありがと」
気の良い大好きな友人たちがいて、バイトに疲れたり試験に苦しんだり就職のことに思いを馳せてため息をついたりしつつもそれなりに楽しい学生生活を送り、やがて公務員だか一般企業に就職して、普通の大人になっていく。なんとなく、それが正しいことなのだと、ずっと思っていた。
もうすぐ、聡実はきっとその「普通」から道を外れる。聡実がどう思おうと、たとえ狂児が違うと言ってくれたとしても、狂児に抱かれた瞬間から肩書きとしては世間で言うところの『やくざの情人(イロ)』というやつになってしまうのだ。その事に全く抵抗がないわけじゃない。
それでも、絶対に手放したくないものを諦めてまで守り続けるのが「普通」なら、それは本当に誰もにとって正しい事なんだろうか、と今は思うから。
「あっそーだ岡ピこれ」
大きめの紙袋に細長い箱が二つ入ったものを渡される。
「私たちからの誕プレ〜」
「え、ありがとう」
「ちょっといいジョッキタンブラーな。アルコール解禁だし」
「あれ、ふたつある」
ふふん、と2人が目を合わせて笑う。
「2人で飲む時もあるでしょ」
あ、そういう配慮?と聡実が少し照れながら苦笑いを浮かべた。残念ながらあのアパートに住んでいる限りはもう狂児を呼ぶことはほぼないと思うし、たとえ呼んでもあの部屋で二人で酒を飲むことはないと思うのだが。でも歳上の同性の彼氏を一人暮らしの家に呼ぶというのをこの友人たちには当たり前のように想定されていることに、なんだか少し嬉しくなった。
「岡ピ?どしたの」
「
……
いや。ありがとう」
多分この友人たちなら、もし全てを知ったとしても聡実が幸せならそれでいいんじゃないのと言うんだろうな、と思う。
「あ、この火曜やけどこの組み方やと3限のこれ
……
」
「お待たせいたしました」
ようやく話の本線に戻ろうとしたところで、アイスミルクティーが運ばれてきた。
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